【完全ガイド】ファクタリングと税務調査:仕組み・リスク・対応法を徹底解説

2025年6月30日

資金繰りに苦しむ企業や個人事業主にとって、売掛金を早期に現金化できるファクタリングは非常に有効な手段です。しかし、ファクタリングを導入した際に「税務調査で問題になるのでは?」という不安の声も少なくありません。

本記事では、「ファクタリングと税務調査」に焦点を当て、基本的な仕組みから税務上の扱い、よくある誤解、実際の税務調査で見られるポイントや注意点を解説します。

1. ファクタリングの基本構造をおさらい

まずは、ファクタリングがどのような取引かを再確認しておきましょう。

■ ファクタリングとは

ファクタリングは、企業が保有する「売掛金(請求書)」をファクタリング会社に売却し、早期に現金を得る手法です。主に以下の2種類があります。

・2社間ファクタリング:自社とファクタリング会社のみで契約。売掛先には通知されない。

・3社間ファクタリング:売掛先も契約に関与。売掛先がファクタリング会社に直接支払い。

このように、ファクタリングは借入ではなく「売掛金の譲渡」に該当します。帳簿上は債権の売却として処理されます。

2. ファクタリングは税務上どう扱われる?

ファクタリング自体は違法行為ではありませんが、税務上の誤処理や認識のズレがあると調査対象になりやすくなります。以下、税務処理の基本を解説します。

■ ファクタリングによる入金の仕訳

たとえば、100万円の売掛金をファクタリング会社に手数料10%(10万円)で譲渡し、90万円を入金してもらった場合の仕訳は以下の通りです。

(借方)現金 90万円
(借方)営業外費用(または手数料) 10万円
(貸方)売掛金 100万円
この処理で、借入金ではなく売掛金の消滅として扱うのがポイントです。

■ 消費税の扱い

売掛金の譲渡自体は消費税の課税対象外ですが、ファクタリング会社が請求する「手数料」は消費税が課税される取引です。

したがって、会計処理上も仕入税額控除の対象となります。

3. なぜ税務調査でファクタリングが注目されるのか?

税務署がファクタリング利用企業を重点的に調査対象とする理由は、以下のような要因があるからです。

■ 現金の動きと帳簿が一致しにくい

ファクタリングでは「売掛金が先に消えて現金が入る」ため、帳簿上のキャッシュフローと売上・売掛の関係が複雑になり、帳簿と実態に乖離が生じやすくなります。

■ 架空取引と見なされるリスク

不正なファクタリング(いわゆる「偽装ファクタリング」や「買取装った貸付」)を利用している場合、「売掛金の架空計上」や「債権を使った脱税スキーム」と疑われる可能性があります。

■ 貸付と混同される事例

ファクタリング契約の内容が曖昧だと、実質は貸付とみなされ、利息相当分の収入申告漏れや利息制限法違反とされるリスクもあります。

4. 税務調査でチェックされる具体的なポイント

税務署がファクタリング契約を調査する際、重点的に見られるのは以下のポイントです。

① 売掛債権の実在性

その売掛金は実際に発生しているのか?

架空の請求書を使っていないか?

→ 請求書・納品書・契約書・通帳などで検証されます。

② ファクタリング会社との契約の実態

契約書はあるか?

債権譲渡の通知・登記などが行われているか?

実際に売掛先からファクタリング会社へ支払いが行われているか?

→ 通常の商取引と整合性があるかが見られます。

③ 入金の処理が正しいか

売掛金の消滅処理がされているか?

ファクタリング会社からの入金を借入金扱いにしていないか?

手数料の消費税処理は正しいか?

5. 税務調査で指摘されやすいトラブル事例

ケース①:ファクタリングを借入と誤処理

【NG処理】
(借方)現金 90万円
(貸方)短期借入金 90万円

→ 実態は債権譲渡であるため、誤った処理として否認され、場合によっては重加算税の対象になることも。

ケース②:ファクタリング契約書がない

契約内容が不明確だと、税務署は「実態のない取引ではないか」と疑い、架空売上・脱税の可能性を調査する。

ケース③:反復利用による経常的なファクタリング

頻繁にファクタリングを利用している場合、「実質的には融資に近い」と判断され、利息の扱いや帳簿処理の整合性が求められるようになります。

6. ファクタリング利用時に税務調査リスクを避ける方法

ファクタリング自体が税務的に違法ではありませんが、適切な処理をしなければ調査対象となる可能性があります。以下の対策を講じることが重要です。

■ 対策①:契約書・通知書・登記などを完備する

ファクタリング契約書を保管する

売掛先への通知書や登記を行い、債権譲渡の証拠を残す(特に3社間)

■ 対策②:帳簿処理を正確に行う

売掛金の消滅処理

ファクタリング手数料の消費税処理

キャッシュフローとの整合性を意識した記帳

■ 対策③:利用履歴・理由を記録しておく
税務署に「なぜファクタリングを使ったのか」を問われた際に、明確な説明ができるよう、背景・資金使途・対応履歴を記録しておきましょう。

7. 税務調査が入った場合の対応方法

もし税務調査でファクタリング取引が注目された場合、冷静かつ正確に対応することが重要です。

調査時の心構え

・契約書・請求書・振込明細を用意しておく

・説明は事実に基づいて簡潔に行う

・必要に応じて税理士に同席してもらう

税務調査官は「脱税の意図があるか」「帳簿に不自然な点があるか」を見てきます。誠実に対応すれば大きな問題にはなりにくいですが、曖昧な説明や記録不足は調査を長引かせる要因になります。

まとめ

ファクタリングは、適切に利用すれば非常に有効な資金調達手段ですが、その取引の特殊性ゆえに税務調査で注目されやすいのも事実です。

ポイントは以下のとおりです:

・ファクタリングは「債権譲渡」であり「借入」ではない

・税務処理では、売掛金の消滅と手数料の課税処理が重要

・架空債権の譲渡や契約書なしの取引は調査対象となる

・税務調査では「実態・証拠・整合性」が問われる

ファクタリングを正しく利用し、帳簿や契約書を整備しておくことで、調査に対するリスクを最小限に抑えることが可能です。将来の資金繰りの選択肢としても安心して使えるよう、日頃から記録と処理の透明性を意識しましょう。