ファクタリングの二重譲渡とは?弁護士に相談できるのか?

2025年1月4日

この記事では、ファクタリングにおける債権の二重譲渡について、弁護士に相談する際の注意点について解説します。
ファクタリング利用の際、債権を二重譲渡する行為は犯罪です。

売掛債権は現物資産とは異なり、見えない財産であるため、すでに別のファクタリング会社に売却されている債権を新たな業者へ譲渡しても発覚しにくいといえます。

しかしファクタリング利用において二重譲渡が行われた場合、誰に債権の権利があるのかわからなくなります。

ファクタリングとは

「ファクタリング」とは、個人事業主や企業が所有している「売掛債権」を売却して現金化する資金の調達方法です。

「売掛債権」には受取手形と売掛金があり、どちらも商品やサービスを販売した代金を後払いする掛け取引で発生しますが、ファクタリングで「売掛金」を現金化します。

売掛金が発生する取引では、売掛先との間で合意した支払期日に販売代金を受け取りますが、ファクタリングでは「債権譲渡契約」を結びます。

保有する販売代金を受け取る権利をファクタリング会社へ売却することで、対価である買取代金を受け取る契約です。

利用者が保有していた債権を回収する「権利」は、利用者からファクタリング会社へ移転されることとなります。

二重譲渡とは

「二重譲渡」とは、同じものを複数に渡り譲渡することです。

売主が保有する1つの資産を、2人または複数の買主に別々に譲渡することであり、主に不動産業界で使われる用語といえます。

ファクタリングにおける二重譲渡の対象は売掛債権であり、誰が譲渡を受け、権利を保有するかが問題になります。

当事者の意思表示のみで譲渡の契約が成立すると、二重売却が可能となり、2人の買主が所有権を保有することになってしまいます。

当然、権利は共存できないため、たとえば債権譲渡登記を使い、先に権利を獲得していることを証明しなければなりません。

複数のファクタリング会社に売掛債権が譲渡されると、債権譲渡登記に遅れたファクタリング会社は当然権利を獲得できず、期日に売掛金の回収もできず損失を被ります。

すでに利用者に支払った売掛金の買取代金分、損失を被ったファクタリング会社は、損失回収に向けて損害賠償請求など法的措置を講じることになるでしょう。

ファクタリングにおける二重譲渡の手口

ファクタリングで売掛金が二重譲渡されやすいのは、そもそも売掛債権が目に見えない資産だからです。

ファクタリング会社もそのリスクを十分に理解しているため、二重譲渡については常に警戒しています。

被害に遭ったときには損害賠償請求するといった対応をしていますが、それでも回収できるとは限らないため、未然に防ぐことが一番だからといえるでしょう。

二重譲渡は「悪意」のある債権譲渡であり、次のようなケースが挙げられます。

・短期間で二重譲渡を繰り返し多くの資金をだまし取ろうとする
・資金繰りに困っているため後で埋め合わせするつもりで二重譲渡に踏み切る
ファクタリング会社にとって二重譲渡被害は避けなければならないことであるため、審査でもしっかりと確認されます。

ファクタリング利用時のトラブルについて弁護士に相談できる?

適正費用がわかりにくい

弁護士の力を借りる際は、弁護士費用が発生します。

離婚や相続など一般的な事案には大まかな相場がありますが、ファクタリングに関する事案はさほど一般的ではないため、適正費用がわかりにくいのが現状です。

トラブルを解決できても弁護士費用の支払いに苦しむとなると本末転倒なので、いくつかの弁護士事務所で見積りを出してもらい、自ら相場を調べてみるとよいでしょう。

悪質な弁護士にも注意

すべての弁護士が善良とは限らず、中には悪質な弁護士もいます。

具体的には、「ファクタリングに関する事案を得意と謳いながら実績はゼロ」「法整備が不十分なことを理由に解決を先延ばしにして弁護士費用を上乗せする」といった手口で騙そうとする弁護士が存在します。

このような弁護士に騙されないためにも、弁護士の実績や対応は細かくチェックしましょう。

債権譲渡通知が発送される場合がある

ファクタリング利用時のトラブルについて弁護士に相談することで、債権譲渡通知が発送される場合があります。

債権譲渡通知が行われると売掛先からの信用を失ったり、契約解除・取引停止につながったりする恐れがあります。

ファクタリング会社による債権譲渡通知を阻止できても、弁護士に発送されてしまっては意味がないので、その点についても事前に確認するようにしましょう。

公的機関の窓口への相談も選択肢のひとつ

ファクタリング利用時のトラブルについて弁護士に相談する場合は費用が発生しますが、中には「支出をなるべく抑えたい」という事業主様もいるでしょう。

その場合は、まず公的機関の窓口に相談するとよいでしょう。

まとめ

もし、ファクタリング利用中に違法な取り立て・脅迫を受けたり、実質的に貸金業であることが発覚したりした場合は、弁護士に相談するのがおすすめです。

自社とファクタリング会社の間に入ってもらうことで、問題を早期解決できる可能性があります。

ファクタリング会社ではこの二重譲渡の被害を防ぐため、契約を結ぶ際には債権譲渡登記を行うこともめずらしくなりません。

架空の売掛債権を買い取ってしまわないために、売掛先の信用力を重視した審査も行われます。

本来、ファクタリングは中小企業などがスムーズに資金を調達できるためにできたサービスです。

早い段階で弁護士に相談するなど、仕組みを利用し、悪用することは利用する側のモラルの問題であり、行ってはいけない行為です。

仮に二重譲渡や架空債権などで資金を調達できたとしても、その後、売掛金の回収段階には嘘が発覚します。

代金の支払いもできず、刑事告訴の対象となれば、一生消えることのない前科をつけて社会的な信用も失い、事業も継続できなくなるでしょう。

ファクタリングを利用するときには、罪に問われる不正行為を行わず、適正な方法で申し込むようにしてください。