ファクタリングの勘定科目について解説!仕訳の際の注意点も徹底解説

2024年2月15日

まずファクタリングとは、売掛債権を売却して現金を確保する資金調達方法です。資金調達という点では融資と同じですが、仕組みが異なるので注意してください。仕組みが異なるため、経理担当は「どのように仕訳をすればよいのだろうか」と悩んでいるのではないでしょうか。
今回は、その悩みを解消するために”ファクタリングを利用した際の仕訳方法”について説明します。使う勘定科目も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

ファクタリングの基礎知識

正しい仕訳のやり方は、利用するファクタリングの種類によって異なります。そのため、まずはここでファクタリングの基礎知識を押さえておきましょう。買取型と保証型の特徴はもちろん、さらに細分化して2社間契約と3社間契約についても説明しますね。

買取型ファクタリング

買取型ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらう方法です。ファクタリング利用者は、売掛金から手数料を引いた金額を受け取れます。売掛金の支払い期日よりも前に現金を確保できるため、急ぎで資金が必要な場合に役立ちますよ。

この買取型ファクタリングは、大きく2社間契約と3社間契約に分けられます。次の段落から、それぞれの特徴について説明しますね。

2社間ファクタリング

2社間ファクタリグとは、申込者とファクタリング会社の2社で行う契約形態です。手続きがスムーズに進むため、申し込みから入金までのサイクルが早いという特徴があります。取引先企業にサービスの利用を知られないのも2社間ファクタリングのメリットですよ。

注意点は、手数料が高めに設定されやすいことです。そのため、売掛金が大きい債権を買取に出したり相見積りをしたりして、手数料を安くする工夫をしましょう。

【契約の流れ】

・2社間ファクタリングの申し込みをする
・利用者と事業者の間で契約を締結する
・ファクタリング会社から買取金額が振り込まれる
・利用者は取引先から入金された売掛金をファクタリング会社に弁済する

3社間ファクタリング

3社間ファクタリングとは、申込者とファクタリング会社と売掛先企業の3社で行う契約形態です。安い手数料でファクタリングを利用できるという特徴があります。審査の難易度が下がるのも3社間ファクタリングのメリットでしょう。

注意点は、サービスの利用を売掛先企業に知られることです。説明がないままサービスを利用すると関係が悪化する恐れがあるので、十分注意してください。契約の流れは以下です。

・3社間ファクタリングの申し込みをする
・利用者と事業者と売掛先で契約を締結する
・ファクタリング会社から買取金額が振り込まれる
・取引先企業が売掛金をファクタリング会社に振り込む

保証型ファクタリング

保証型ファクタリングとは、代金の支払いをファクタリング会社に保証してもらう方法です。売掛金の回収不能リスクを減らしたい場合に役立ちます。保証料をファクタリング会社に支払えば、売掛先が倒産しても保証額を受け取れます。

貸し倒れによる損失を避けられるので、自社も倒産に追い込まれるといった事態を防げますよ。注意点は、売掛債権の現金化には時間を要するケースが多いことです。そのため、資金調達には向いていません。

資金調達を目的にファクタリングを利用するなら、買取型の方を利用しましょう。
保証型ファクタリングとは、代金の支払いをファクタリング会社に保証してもらう方法です。売掛金の回収不能リスクを減らしたい場合に役立ちます。保証料をファクタリング会社に支払えば、売掛先が倒産しても保証額を受け取れます。

貸し倒れによる損失を避けられるので、自社も倒産に追い込まれるといった事態を防げますよ。注意点は、売掛債権の現金化には時間を要するケースが多いことです。そのため、資金調達には向いていません。

資金調達を目的にファクタリングを利用するなら、買取型の方を利用しましょう。

【種類別】ファクタリングの勘定科目と仕訳方法

仕訳方法は、利用するファクタリングの種類によって若干異なります。「自分は買取型と保証型のどちらを利用しているのか」確認をして、仕訳方法を参考にしてください。あわせて、勘定科目も紹介します。

買取型ファクタリングの勘定科目・仕訳方法

買取型ファクタリングを利用する際は、以下のタイミングで会計処理をする必要があります。

・売掛金が発生したタイミング
・契約を結んだタイミング
・買取金額が入金されたタイミング
・取引先企業から売掛金が入金されたタイミング
・ファクタリング会社へ債権を弁済するタイミング
3社間で契約を結んだ際は、売掛金が取引先企業からファクタリング会社に直接振り込まれます。そのため、以下の工程は発生しません。

・取引先企業から売掛金が入金された際に行う仕訳
・ファクタリング会社へ債権を弁済するときの仕訳
これらを踏まえた上で、勘定科目と仕訳方法について説明します。

売掛金が発生した場合

売上が発生したら、取引先企業に請求書を作成したタイミングで仕分を行いましょう。仕訳方法は、通常の会計処理と同じです。例えば、200万円のファクタリングを利用したら、以下のように仕訳を行います。
借方 :売掛金 200万円
貸方:売上 200万円

契約を締結した場合

ファクタリングの契約を結んだら、一つ前の段落で記載した売掛金を削除しましょう。削除した部分に未収入金と記載してください。未収入金とは、資産の売却を行った際に売却金額が記入後に振り込まれるお金のことです。

これは、契約締結後、ファクタリング会社から買取金額が振り込まれるまでの期間に使う勘定科目です。例えば、200万円のファクタリングを利用したなら以下のように仕訳を行います。

借方 :未収入金 200万円
貸方 :売掛金 200万円

譲渡代金が入金された場合

ファクタリング会社から買取金額が振り込まれたら、仕分を行いましょう。例えば、200万円のファクタリングで10万円手数料として取られたら、以下のように仕訳を行います。
借方 :普通預金 190万円 、上債権売却損 10万円

貸方:未収入金 200万円
ファクタリング会社から振り込まれたお金は、借方欄の普通預金として仕訳を行います。なお、手数料はこのタイミングで売上債権売却損として計上してください。この方法で計上を行い、未収入金の合計がゼロになればOKです。

契約締結と入金が同じタイミングだった場合

ファクタリングでは、最短即日で買取金額が入金される場合もあります。この場合は、会計処理を”売上発生時”と”契約締結&譲渡代金入金時”の2つにまとめられます。やり方の詳細は、まず以下のように売掛金と売上を計上しましょう。

売掛金が存在して初めて取引が成立するからです。

借方 :売掛金 200万円
貸方:売上 200万円

即日入金された場合は、未収入金を勘定科目として記載する必要がなくなります。以下のように、売掛金に対して普通預金と売上債権売却損で計上しましょう。

借方 :普通預金 190万円 、売上債権売却損 10万円

貸方:未収入金 200万円

最後に未収入金の合計を確認して、ゼロになっていれば計上完了です。

取引先から売掛金が入金された場合

2社間で契約をした場合、売掛金は通常通り取引先企業から入金されます。売掛金の入金が確認できたら、以下のように仕訳をしましょう。

借方 :普通預金 200万円

貸方 : 預かり金 200万円

摘要:(企業名)から売掛金が入金

3社間で契約をした場合は、取引先企業からファクタリング会社に直接売掛金が支払われます。そのため、この経理処理はスキップしてください。

ファクタリング会社に弁済を行う場合

取引先企業から売掛金が入金されたら、最後にそれをファクタリング会社へ弁済します。弁済を行う際は、以下のやり方で仕訳をしてください。
借方 :預かり金 200万円

貸方:現金・預金 200万円

保証型ファクタリングの勘定科目・仕訳方法

保証型ファクタリングを利用する際は、以下のタイミングで会計処理をする必要があります。

・売掛金が発生したタイミング
・ファクタリングの契約を結んだタイミング
・売掛金が回収されなかったタイミング
・ファクタリング会社から保証金を受け取ったタイミング
これらを踏まえた上で、勘定科目と仕訳方法について説明します。

売掛金が発生した場合

売掛金が発生し、取引先企業に対して請求書を作成したら売掛金と売上の仕訳を行いましょう。今回は、130万円のファクタリングを利用すると仮定してやり方を紹介します。
借方 :売掛金 130万円

貸方:売上 130万円

契約を締結した場合

保証型ファクタリングを利用する際は、ファクタリング会社に保証料を支払います。例えば、2万円の保証料を支払ったら以下のように仕訳を行いましょう。
借方 :支払い手数料 2万円
貸方 :普通預金 2万円
摘要   :(企業名)に対してファクタリング契約に基づく保証料を支払う

売掛債権の回収ができない場合

期日を迎えても取引先企業から支払いがされない場合もあるでしょう。売掛金の回収が不可能と判断された場合には、売掛金がファクタリング会社から支払われます。この場合は、以下のように仕訳を行いましょう。
借方:貸倒損失 130万円
貸方:売掛債権 130万円

ファクタリング会社から保証金を受け取った場合

ファクタリング会社から保証金が入金された場合は、以下のように雑収入で処理を行います
借方:普通預金 130万円
貸方:雑収入 130万円

ファクタリングの仕訳をする際の注意点

ファクタリングの仕訳をする際、国際財務報告基準(IFRS)だと処理方法が少し異なるので注意しましょう。決算期末をまたいで入金される場合も注意してくださいね。ここでは、そのようなファクタリングの仕訳をする際の注意点について説明します。

契約書に債権譲渡を禁止する記載はないか確認する

ファクタリングを利用する前に、契約書を見て債権譲渡を禁止する記載はないか確認しましょう。債権譲渡を禁止する旨が記載されている場合は、そもそもファクタリングを利用できないからです。

発生主義と現金主義を理解しておく

適切に仕訳するためには、発生主義と現金主義を理解しておく必要があります。次の段落からそれぞれの概要について説明するので、参考にしてください。

発生主義とは

発生主義とは、発生ベースで処理をする方法です。現金の動きに関わらず、取引が発生したタイミングで帳簿に記録をします。例えば、掛けで商品を販売したとしましょう。

その場合、すぐに現金は入ってきませんが、取引自体は成立しているため売上として先に計上する必要があります。将来入金されるお金は売掛金として処理します。

現金主義とは

現金主義とは、現金ベースで処理をする方法です。現金が入金されたタイミングで帳簿に記録をします。現金主義の特徴は、処理が簡単なことです。仕訳の手間を一部省けるので、会計の知識があまりない人でも簡単に活用できるでしょう。

決算期末をまたいで入金される場合の注意点

基本的に帳簿は発生主義で処理をします。掛けで売上を得た場合、現金が入金されていなくても売上として計上しなければいけません。この場合、税金に注意してください。税金は帳簿上の売上に対してかかります。

現金が入金されていない状態でも売上に課税される税金は一旦支払わなければいけません。売上の入金がないまま決算期末をまたぐと、手元の現金が足りなくなる可能性が高いので注意してくださいね。

国際財務報告基準(IFRS)だと処理方法が異なる

ビジネス拠点を海外に置き、国際財務報告基準(IFRS)を適用する企業は日本とは違った方法で会計処理をする必要があります。まず、ファクタリング会社から入金があった際は以下の方法で仕訳を切ります。
借方 :
普通預金 145万円 、
売上債権売却損 5万円

貸方:借入金 150万円

国際財務報告基準でファクタリングは、借入に分類されます。そのため、貸方は借入金として計上しなければいけません。損失にあたるファクタリングの手数料は、売上債権売却損として仕訳を行います。

そして、売掛先企業から入金があったら以下のように仕訳を行いましょう。

借方 :
普通預金 150万円 、借入金 150万円
貸方:売掛金 150万円、 普通預金 150万円

取引先企業から売掛金が入金されたら、売掛金を削除してください。ファクタリング会社に売掛金の弁済を行ったら、借入金も削除します。

ファクタリングの仕訳で用いる売上債権売却損とは

ファクタリングの仕訳をする際は、高い確率で売上債権売却損という勘定科目を使います。重要な役割を果たす項目なので、使い方を間違えないように注意しましょう。ここでは、その売上債権売却損について説明します。

売上債権売却損とは

ファクタリングでは、手数料が発生します。手数料は、売掛債権を売却した際に発生する損失です。この損失を計上するために使うのが、売上債権売却損です。

雑損失・債権割引料などで入力してもよい

ファクタリングの手数料は、売上債権売却損で計上するのが基本です。しかし、使っている会計ソフトによっては売上債権売却損の勘定科目がありません。その場合は、営業取引以外で発生した損失と分かる項目で処理をしましょう。

例えば、雑損失や債権割引料、支払い手数料などが考えられます。ただし、売上債権売却損以外で計上する場合は以下のことをしっかり守ってください。

・項目の課税・非課税をしっかり明記する
・入金・売上に虚偽がないよう正しく処理する
上記を守っていれば、仮に税務調査が入っても問題になることはありませんよ。

割引料で入力するのはNG?

以前、掛取引では手形を用いるのが一般的でした。手形を利用した際に発生する手数料は、割引料で仕訳をしていた人が多いでしょう。実は、ファクタリングの手数料も割引料で計上できます。

ファクタリングの手数料は、売掛債権を割り引いて売却した割引分に相当すると考えられるからです。

ファクタリングの手数料に消費税はかかるのか?

ファクタリングを利用する際は、消費税についても理解しておきましょう。ここの知識が少ないと、悪徳業者に騙される可能性があるからです。それでは、ファクタリングの消費税について説明しますね。

ファクタリングの手数料は非課税

ファクタリング会社に支払う手数料に消費税はかかりません。ファクタリングの手数料は国税庁が定める非課税項目に該当するからです。具体的には、「有価証券等の譲渡においての金融債権などの譲渡」に該当します。

そのため、ファクタリングの手数料に消費税をかけてくる業者はほぼ確実に悪徳業者です。悪徳業者とは契約を結ばないようにしましょう。

掛取引は課税

ファクタリングの取引に消費税はかかりませんが、通常の掛取引には消費税がかかります。例えば、5万円の商品を納品して売掛金が発生したとしましょう。この場合は、売上の5万円に消費税がかかります。

売掛金として計上したものにも消費税がかかるので、決済期末をまたぐ際は注意してくださいね。

登記でかかる消費税について

業者によっては、ファクタリング契約を結ぶ際に債権譲渡登記を求められます。債権譲渡登記とは、債権が譲渡された事実を公にする手続きのことです。債権譲渡登記を行うためには、印紙代や司法書士報酬などの費用がかかります。

印紙代は非課税なのですが、司法書士報酬には消費税がかかるので注意しましょう。

やり方を覚えればファクタリングの仕訳は簡単

今回は、ファクタリングを利用した際に行う仕訳のやり方について説明しました。初めてだと難しく感じますが、手順を細分化して考えれば比較的簡単にできます。

パターン別に仕訳のやり方や使う勘定科目などをまとめたので、これから仕訳を行う人は参考にしてくださいね。なお、仕訳で分からないことが出た場合は以下の場所に相談をすれば、丁寧に教えてくれますよ。

・税務署
・税理士
・青色申告会・商工会議所・商工会
・会計ソフトの相談窓口