経営者なら絶対に知っておくべき借入金の基礎知識を徹底解説!

2023年4月26日

経営者なら誰しもが一度は資金に困ることがあるでしょう。

企業経営と密接な関わりのある借入金。

無借金経営が理想とは思っていても借入金なしで経営を続けるのは難しい面もあります。

現在借入を検討している、もしくは借入金がある経営者の方なら、以下のようなことを思われるのではないでしょうか。

・借入金の保証料について知りたい
・借入金とはそもそもどういうものか知りたい
・借入金の金利について知りたい
・借入金の返済に遅れた場合にどうなるのか知りたい
・借入の際の手数料について知りたい

こちらの記事では企業経営者なら必ず押さえておきたい以上のような情報をまとめて解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

借入金とは?

借入金は、外部から借り入れるお金のことを指します。

中小企業の場合は運転資金や設備資金の調達のために銀行などの金融機関からの借入れがメインとなるでしょう。

銀行から借り入れる場合「証書借入」「当座貸越」「手形借入」の形が基本です。当然ですが原則として借入金は返済義務があり、返済期限までに返済する必要があります。

会計の世界では借入金の返済期限によって「長期借入金」と「短期借入金」に分類します。具体的には「1年以内に返済期限がくる借入金」を短期借入金、「1年を超えて返済期限が来る借入金」を長期借入金としています。

一般的には「借金」にはネガティブな印象がつきまといます。しかし企業にとっては事業拡大や経営の安定のために、借入金が必要不可欠な場合も多いのです。

借入金の金利

実際に借入を検討する際に、特に気になるのは借入金の金利がどのくらいになるのかということでしょう。

金融機関から借入をする場合は、貸出ごとに個別に決定されます。これは相対取引(あいたいとりひき)と呼ばれるものです。

簡単に言えば「融資する相手によって金利は個別交渉」ということになります。

貸出金額でも企業によって借入れできる金額は変わります。金利についても借入する企業によって変わってくるということなのです。

たとえば、経営不振の企業の場合、貸したお金が回収できない可能性が出てきます。そのため銀行は貸し倒れになる可能性を金利に含めて貸す必要があります。そのため貸出金利は高い金利になるわけです。

これに対し経営が順調な企業であれば無事返済される可能性が高くなります。そのため銀行は低い金利で貸すことができます。

このように原則的に金利は相対取引で個別に決定されます。ただし、あらかじめ融資金利が固定されていることもあります。

市区町村などの自治体が実施している制度融資では、市場実勢金利よりもかなり低い金利で借入れできる場合もあるのです。

こうしたことから実際の借入金の金利は年1%以下になることもあれば、年10%を超えてしまうこともあります。

借入金の保証料とは?

金融機関から借入する際に「有担保借入」「無担保借入」の大きく2つに分けることができます。

「有担保借入」というのは文字どおり自宅の土地建物などを担保に入れて借入れをする方法です。

この場合、万が一返済不能となった場合、金融機関は抵当権を実行して担保物件を売却して融資金を回収することができます。

そのため担保価値の範囲内であれば銀行は安心して融資することができるのです。

これに対し「無担保借入」の場合、担保がありませんので企業の信用力が全てということになってしまいます。

銀行としても万が一返済不能になった場合は貸出金が回収できなくなってしまいます。そのため確実に返済が見込まれる金額しか融資することができません。

また不動産などを持っている場合でも、担保に入れるのには抵抗があるという場合もあるでしょう。

そのような場合、無担保でも比較的大きな借入をする方法が、保証会社を利用した借入です。

保証会社は万が一返済不能になった場合返済を肩代わりしてくれます。そのため銀行は保証会社が保証してくれれば安心して融資することができるのです。

ただし、保証会社はタダで保証してくれる訳ではありません。保証を受けるには保証料の支払いが必須となります。

保証料はどのくらいになるのか

保証料は基本的には企業の経営状況や商品に応じて保証料率が決定されます。

決定された保証料率に借入金額と借入期間をかけ合わせて保証料が計算されることになります。

ちなみに東京信用保証協会の一般保証料率は0.45~1.90%となっています。

保証料は借入と同時に一括前払いで支払うのが基本ですが、場合によっては分割支払が利用可能です。

また借入途中で一括返済した際は、規定により保証料の一部が払い戻されることがあります。

借入する際に手数料はかかる?

借入をする際に金利とは別に支払う手数料はあるのでしょうか。借入を検討されている経営者の方にはとても気になる点ではないでしょうか。

基本的に融資関連の手数料は各銀行で個別に設定され、金額もまちまちです。そのためこちらでは代表的な貸出金関連の手数料項目と、およその手数料の目安を紹介します。

<手数料の目安>
全額繰上返済手数料—5,000円~10,000円程度
一部繰上返済手数料—5,000円~10,000円程度
金融機関借入手形交付手数料—600円前後
融資条件変更手数料—10,000円~30,000円程度
不動産担保設定手数料—30,000円~50,000円程度

借入金の限度額はいくらまで?

もちろん借入金は好きなだけ借入れできるというものではありません。貸し手も貸したお金がきちんと返済される見込がなければお金を貸すわけにはいかないのです。

それでは実際にはどのくらいの金額まで借入することができるのでしょうか。結論から言えば借り手となる企業の返済能力によって変わるということになります。

極端な話で言えば世界的なグローバル企業であれば数千億円単位で借入れを行う場合があります。これに対し限りなく個人経営に近い企業で、年商も少なければ100万円の借入れすらできない場合もあるのです。

ビジネスローンのように商品としての借入上限金額が設定されているものもあります。しかしそれでも企業の経営内容によって限度額は個別に審査の上設定されるのです。

ちなみに優良企業だと銀行から「ぜひ借りてください」と頭を下げられることもあります。しかし基本的には借入するためには「返済能力」と、「なぜそのお金が必要なのかの理由」がしっかりしていなければ借入することはできません。

借入金の返済方法

銀行からの借入金を返済する方法は、法人の当座預金、もしくは普通預金からの引落しで行われるのが基本です。

「証書借入」の場合は毎月指定日に分割で利息を含めて返済することになります。また「手形借入」の場合は期日に一括で返済となります。

法人の証書借入の場合、返済方式は原則として「元金均等返済」が適用されます。これは毎月定額の元金と、別途利息を支払っていくという方法です。

元金が定額で返済されていくので支払利息をふくめた返済額は毎月少しずつ減っていきます。そのため返済開始直後が最も返済額が大きくなるのです。

法人で元金均等返済が適用されるのは、会計処理が簡単なためと言われています。毎月の元金の返済額が一定で変わらないので、帳簿へ記載するときも間違いが起こりにくいのです。

ちなみに住宅ローンなどでは「元利均等返済」が適用されます。

利息を含めた毎月返済額は変わらず、そのなかで元金と利息の割合が変わっていくという方式です。

口座から引き落とされる金額が変わらないので返済計画を立てやすいメリットがあります。しかし企業会計では帳簿の問題があるため法人融資にはあまり適用されません。

借入金の利息計算方法

法人の借入金の利息計算は、どれも非常にシンプルでわかりやすくなっています。

個人のキャッシングに適用されることが多い「残高スライドリボルビング方式」などですと非常に計算が複雑で、プロでも手計算では算出し難いものです。

銀行融資の主役である証書借入の場合、基本的には元金均等返済が適用となります。毎月一定の元金を返済するので計算しやすくなっています。

ただし1円単位の利息計算をするとさすがにややこしいかもしれません。そこでこちらでは簡易的な支払利息の目安の計算方法を紹介しておきましょう。

例えば1000万円を年率3%、返済期間10年で借入れした場合、1000万円×3%=30万円が概ねの1年目の支払利息になります。

2年目は元金が900万円に減っていますから、これに年利をかければ利息の目安はわかります。

ちなみに元金均等返済の返済シミュレーションは各銀行の公式サイトに準備されています。正確な数字を知りたい場合は返済シミュレーションを利用しましょう。

ちなみに融資実行時には「返済終了までの返済予定表」が交付されます。返済予定表には毎月の返済額や利息が全て記載されているので管理もしやすいでしょう。

万が一、返済に遅れた場合はどうなる?

返済日に遅れるのは、はっきりいって非常にまずいです。特に銀行は返済遅れに対して非常にシビアと言えます。

実際に借入証書には「一日でも返済に遅れたら全額一括で返済してもらうことがありますよ」といった意味合いの文言が必ず織り込まれているのです。

銀行では毎日返済に遅れがないかをチェックしており、返済が遅れている先は延滞先リストに記録されてしまいます。

返済に遅れた時、実際に銀行はどのように対応するのか?

実務上は数日の遅れで銀行が一括返済を要求してくるようなことはまずありません。基本的に銀行は電話や書面などで延滞先に督促を行うことになります。

ただし本来は1日でも延滞しない方が良いです。延滞の履歴があると銀行の心証は非常に悪くなり、次回の借入審査に影響することがあるのです。

返済が遅れたまま長期延滞になると、銀行としては非常に困ることになります。延滞債権として管理する必要が出てきてしまうのです。

銀行では全ての貸出先の査定を行っています。延滞が一定期間を超えたような先は「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」などに分類しなければなりません。

こうなるといわゆる「不良債権」として銀行は引当金を積む必要があります。不良債権の増加はなんとしても避けたいのが銀行の本音です。

過去には不良債権が増えすぎて、多くの銀行が消えた時代もありましたね。

有担保の場合は「抵当権実行」、保証付融資の場合は「代位弁済」に至ることも

有担保の借入を長期延滞すると、最悪の場合銀行が抵当権を実行して担保物件を売却されてしまうことがあります。銀行は売却代金と借入金を相殺することになります。

保証付きの融資を長期延滞した場合に規定の日数を超えて延滞すると、銀行は保証会社に「代位弁済」を請求することができます。

代位弁済というのは簡単に言えば保証会社が返済を肩代わりすることです。

基本的に抵当権実行や代位弁済が行われるということは、銀行がさじを投げてしまったことを意味します。しっかりと銀行とコミュニケーションを取っていれば、いきなり抵当権実行などに至ることはありません。

日頃から銀行と良好な関係を築いておけば、ピンチの際にも相談しやすくなります。

返済に遅れそうになったら極力早めに「条件変更」を依頼する

大切なのは返済に遅れてしまう前に銀行に素直に相談することです。延滞してしまう理由には「取引先の倒産」「売掛金の未回収」など様々な理由があることでしょう。

そうした事情を銀行に丁寧に説明して、支払期限の延長などの条件変更を交渉するのです。

正当な理由があると認められれば銀行も条件変更に応じてくれることでしょう。

ただし返済日間近になって銀行に掛け合うのはNGです。銀行の条件変更は担当者の判断ではできません。条件変更の稟議をあげて決済を取らなければならないからです。

条件変更の内容によっては支店長決済できずに本店決済が必要になることもあります。

銀行としても非常に手間がかかることですから、返済に遅れる可能性が出て来たらすぐに相談しなければなりません。

また相談にあたっては直近の資金繰り(キャッシュフロー)の状況をしっかり把握して、説明できるようにしておく必要があります。

まとめ

こちらの記事では経営者の方が知っておくべき借入金の基本について解説しました。最後にもう一度重要なポイントを振り返っておきましょう。

・借入金とは銀行など外部から借入れするお金のこと
・借入金の金利は相対取引の個別交渉で決まる
・保証料は、担保や保証人の代わりに保証会社に返済の保証をしてもらうための料金
・借入金関連で様々な手数料があるが、銀行ごとに金額は異なる
・銀行からの借入金の返済に遅れると代位弁済されてしまうことも
・返済が厳しくなりそうになったらなるべく早く条件変更を依頼する

借入金についてなんとなく疑問に感じていたことでお分かりいただけたところもあったのではないでしょうか。

この記事を参考にぜひ借入金との上手な付き合い方を考えてみてください。