ファクタリングは赤字決算でも利用できる?必要な条件や注意点を徹底解説

2024年7月17日

資金繰りの悩みから解放されたいけれど、赤字だからと諦めていませんか?売掛債権を現金化するファクタリングであれば、赤字決算の事業者でも資金調達は可能です。一般的な融資とファクタリングの審査基準は大きく異なるため、売掛先企業の信用力に問題がなければ利用できます。

この記事では赤字の事業者がファクタリングを利用するための条件や、メリットなどをわかりやすく解説します。実際にファクタリングを利用する際の注意点も紹介しますので、不安定な財務状況をどうにかしたいと考えている方にとって、必見の内容です。

ファクタリングは赤字の事業者でも利用可能!

ファクタリングは、融資を受けるのが難しい赤字の事業者でも利用できる可能性があります。

通常の融資における審査では、借入れ企業の収入や返済能力が重視されます。これは、返済が滞った場合に銀行が損害を被るリスクを最小限に抑えるためです。実際に貸金業法第13条において、返済能力の確認が義務付けられています。

一時的な赤字であれば、キャッシュフローが健全である限り融資を受けられることもありますが、恒常的に赤字が続いている場合は、返済が難しいと判断され、借りられない可能性が高いでしょう。

一方、ファクタリングの審査では売掛債権の信用力、つまり売掛先が支払い能力を持っているかどうかが重視されます。

ファクタリングは融資とは異なり売掛債権を買取代金を支払う取引であり、売掛金が未回収となった場合のリスクはファクタリング会社が負うことになっているためです。

ファクタリング会社はリスクを見極めるために、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの信用調査会社を用いて、売掛先の財務状況や業種、規模などを詳細に調査します。

ファクタリングは企業の財務状況が厳しい場合でも、売掛先が信用できると判断されれば、利用できる可能性があります。

赤字の事業者がファクタリングを利用できないケース

赤字の事業者でもファクタリングを利用することは可能ですが、利用者の信用力が一切考慮されないというわけではありません。また、売掛債権の種類によっては利用するのが難しいケースもあります。

赤字の事業者がファクタリングを利用できないケース

1.税金を滞納している
2.信用力が著しく低い
3.売掛債権の金額が大きい・支払いサイトが長い

税金を滞納している

ファクタリング会社によって対応は分かれていますが、税金を滞納している場合、利用できないケースがあります。これは、法人税や消費税などの国税を期限内に納付できない場合、財産を差し押さえられるリスクがあるからです。

国税徴収法によれば、売掛債権も差し押さえの対象になりうるとされています。債権が差し押さえられた場合、ファクタリング会社は資金を回収できなくなるため、税金を滞納している場合にはリスクが高いと判断する可能性が高いということです。

もちろん、未納状態になったからといってすぐに差し押さえが実行されるわけではなく、税務署に相談して換価の猶予や納税の猶予などを受けている場合は、一定期間差し押さえを防げます(出典:国税庁「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」)。

しかし、長期間滞納が続いており、国税庁からの督促を無視している場合は、差し押さえのリスクが高く、ファクタリングを利用できない場合があるので注意しましょう。

信用力が著しく低い

ファクタリングの審査では、申し込んだ企業の信用力についても調査が行われます。主に以下のような場合は、信用力が低い事業者とみなされる可能性があります。

・財務状況が大きく悪化しており倒産寸前である
・申し込んだファクタリング会社で過去にトラブルを起こしている
・事業内容が不明確である
・反社会的勢力の疑いがある
売掛債権の信用力が高くても、利用者の信用力が著しく低いと判断された場合は利用できないケースもあるので注意が必要です。

売掛債権の金額が大きい・支払いサイトが長い

売掛債権の金額が大きい場合、未回収となった場合にファクタリング会社が被る損害も大きくなるため、利用の可否については慎重に判断される傾向があります。

また、支払い期日が遠い売掛債権も、ファクタリング会社にとって未回収リスクが高くなりやすいため、利用を断られる場合があるでしょう。支払い期日を待っている間に、売掛先の経営が悪化して倒産する確率もゼロではないからです。

赤字企業がファクタリングを利用する際は、なるべく確実に資金調達できるよう、売掛債権の信用力についても注意を払いましょう。

赤字の事業者がファクタリングを利用するメリット

ファクタリングの効果は、単に資金調達を通じて資金繰りを改善するだけにとどまりません。赤字企業が利用することで得られるメリットもあります。

赤字の事業者がファクタリングを利用するメリット

1.最短即日で資金調達できる
2.売掛金の未回収を防げるため資金繰りが安定する
3.企業の負債を増やさずに済む

最短即日で資金調達できる

ファクタリングは、特に赤字の事業者にとって、早急に資金が必要な状況で非常に有効な選択肢です。

たとえば、新たなプロジェクトを受注した場合、事前に仕入れ費用や人件費が必要となるものの、売り上げが実際に入るのは数カ月後というケースも少なくありません。

このような状況で手元の資金が尽きれば、事業は存続の危機に陥ります。ファクタリングは、こうした短期間での資金需要に応えることができます。

売掛金の未回収を防げるため資金繰りが安定する

売掛金は基本的に後払いになるので、売掛先が倒産すると代金を受け取れなくなってしまいます。ファクタリングを利用すれば先に売掛金を受け取れるので代金が未回収になるのを防ぐことが可能です。

ファクタリング契約では、万が一売掛先が経営悪化などで支払いできなかった場合でも、通常はファクタリング会社に回収義務があるため、利用者に対してその金額が請求されることはありません。

しかし、償還請求権付きのファクタリング契約の場合、未回収となった売掛金の責任はファクタリングを利用した事業者に戻ってくるため、未回収分を事業者が負担する必要があります。

償還請求権とは債務者から金銭債権の支払いが行われない時に、本来その費用を負担すべき者に対して、支払った費用の返還を請求する権利のことです。

ただし、償還請求権付きのファクタリング契約は、通常、貸金業登録をしている銀行や貸金業者によって扱われます。もし貸金業登録をしていない業者がこのような契約を提案してきた場合は、その業者が違法である可能性が高いため、注意が必要です。

企業の負債を増やさずに済む

ファクタリングは、融資とは根本的に異なる財務手法です。融資が追加の負債を発生させるのに対し、ファクタリングでは売掛金を現金化することでバランスシート上の資産構成が変わるだけで、新たな負債は増えません。

具体的には、資産計上されている売掛金が減少し、その分だけ現金が増えます。さらに、増えた現金を用いて借入金を返済すると、負債が減少します。これはバランスシートのオフバランス化を促進し、企業の財務状態をスリム化する効果があります。

その結果、現金比率や自己資本比率が向上し、決算書の見栄えは良くなるでしょう。財務健全性が向上すれば、金融機関からの信用度も高まり、より良い条件での資金調達が可能になるかもしれません。

このようにファクタリングは、ただ現金を手に入れるだけでなく、企業の財務戦略においても重要な役割を担うことが可能です。

赤字の事業者がファクタリングを利用する際の注意点

ファクタリングは、根本的な財務状況や経営体質の改善につながるわけではありません。使い方を間違えるとかえって資金繰りを悪化させる可能性さえあります。利用する期間や金額、ファクタリング会社などについて慎重に検討を重ねた上で利用しましょう。

さらなる経営悪化を招く可能性がある

ファクタリングの利用が重なると、手数料がかさみ、経営状況が悪化するリスクがあることは理解しておきましょう。

ファクタリングの手数料は業者によって異なりますが、一般的には2%〜15%程度(出典:ファクタリング事業推進協会「第1部 ファクタリングのご利用を検討されている方や概略を知りたい方等の一般の皆様へ」)です。

手元のキャッシュを確保できる反面、粗利を超える手数料を支払うと、徐々に赤字が拡大していきます。特に、ファクタリングの手数料を支払うために再びファクタリングを利用するという循環に陥ると、企業の財政状況はかなり厳しくなるでしょう。

さらに、ファクタリングを利用している最中に売掛先が倒産するなどの不測の事態が発生した場合、急激に経営状況が悪化するリスクがあります。ファクタリングはあくまで一時的な資金繰りの手段として活用すべきです。

売上が大幅に減少している場合や、経営改善の見通しが立っていない状況では、ファクタリングだけに依存せず、経営コンサルタントや税理士などの専門家に相談して、根本的な経営改善策を模索することが望ましいでしょう。

利用が知られると取引関係に影響が出る場合も

3社間ファクタリングは、取引先の承諾を得た上で売掛債権とファクタリング会社が直接やり取りを行う方法です。

この方式は2社間ファクタリングに比べて手数料が安くなる傾向がありますが、ファクタリング自体がリスクの高い資金調達方法として認識されていることが多いため、取引先からは経営が悪化していると見られるリスクが伴います。

一方で、2社間ファクタリングでは、利用者とファクタリング会社の間でのみやり取りが行われ、取引先に通知はされません。

しかし、利用者が売掛金を使い込み、ファクタリング会社への支払いを怠った場合、取引先へ債権譲渡通知がされることもあり、これによって利用が知られる可能性があります。

どちらの形式であっても、取引先に知られるリスクがあることは理解しておきましょう。

悪質な業者を利用しない

貸金業登録を受けていない事業者がファクタリングを装い、実質的には貸付を行う事例が増えています(参照:金融庁「その資金調達大丈夫ですか?」)。このような場合、手数料が高額であることが多く、売掛債権の買取額が額面に対して著しく低いのが特徴です。

さらに、通常のファクタリングでは買主が債権回収のリスクを負いますが、この種の偽装ファクタリングでは、債権回収ができない場合に買戻しを行わせることがあります。

これらの偽装ファクタリングは実質的にはヤミ金の一種と見なされており、法外な条件で契約を結ばせることが目的です。経営が苦しい事業者は特にターゲットにされやすく、不当な契約を強いられる可能性が高まります。

とくに、以下の特徴が当てはまる場合は悪質な業者である可能性が高いため、利用しないようにしましょう。

売掛債権譲渡契約に償還請求権が付いている

・申込人の(売掛金振込予定の)通帳、銀行印、キャッシュカードを預かる
・金銭消費貸借契約を締結し、代表者や家族に保証人になることを求める
・小切手、手形を担保に入れさせる
・売掛金(現金)の受け取りが、銀行等からの送金ではなく手渡しでされる
・契約書の写し、領収書などの書類が渡されない

まとめ

売掛債権を現金化するファクタリングは、一般的な融資と異なり、売掛先の信用力が重視されます。そのため、赤字の状態であっても、売掛債権の信用力が高ければ利用可能です。

しかし、売掛先の信用力が低い、または税金の滞納がある場合は、利用が難しくなることもあります。加えて、手数料が経営状況をさらに悪化させるリスクも無視できません。