ファクタリングにおける債務不履行のリスクと法的影響
2025年6月5日
ファクタリングは、企業が売掛金を第三者に譲渡することで迅速に資金を調達する手段として広く利用されています。しかし、売掛先の債務不履行(支払い遅延や倒産など)が発生した場合、ファクタリング契約の内容や契約形態によって、企業にとって重大な法的リスクや経済的影響が生じる可能性があります。
1. ファクタリング契約の基本構造と債務不履行の影響
ファクタリング契約には主に「償還請求権あり(リコース)」と「償還請求権なし(ノンリコース)」の2種類があります。
・償還請求権あり(リコース):売掛先が支払いを行わない場合、譲渡企業がその債権を回収する責任を負います。
・償還請求権なし(ノンリコース):売掛先の支払い不履行があっても、譲渡企業に対して返済請求は行われません。
リコース契約の場合、売掛先の債務不履行が直接的な経済的負担となり、企業の資金繰りに深刻な影響を及ぼす可能性があります。
2. 債務不履行による法的リスク
売掛先の債務不履行が発生した場合、以下のような法的リスクが考えられます:
2.1 延滞損害金の支払い義務
契約書に基づき、支払い遅延が発生した場合、延滞損害金を支払う義務が生じます。ファクタリング契約は融資ではないため、延滞損害金に法定上限がなく、当事者間の自由な合意によって設定されます。これにより、予想以上の高額な損害金を支払わなければならないリスクがあります 。
2.2 民事上の損害賠償請求
延滞が続くと、ファクタリング会社から民事上の損害賠償請求を受ける可能性があります。これは、契約違反に対する法的措置であり、最終的には裁判所を通じて解決されることになります。
2.3 刑事責任の可能性
支払いを故意に遅延させたり、虚偽の情報を提供した場合、詐欺罪や私文書偽造罪などの刑事責任を問われる可能性があります。これらの罪は、最長で10年の懲役刑が科されることがあります 。
3. 債務不履行リスクを軽減するための対策
債務不履行によるリスクを軽減するためには、以下の対策が有効です:
3.1 ノンリコース契約の選択
ノンリコース契約を選択することで、売掛先の支払い不履行による返済義務を回避できます。これにより、企業の資金繰りの安定性が向上します 。
3.2 契約書の詳細な確認
契約書には、延滞損害金の率や支払い条件などが明記されています。契約前にこれらの内容を詳細に確認し、不明点があればファクタリング会社に問い合わせることが重要です。
3.3 信頼性の高いファクタリング会社の選定
過去の取引実績や口コミ評価などを参考に、信頼性の高いファクタリング会社を選定することで、トラブルの発生リスクを低減できます 。
4. まとめ
ファクタリングは、迅速な資金調達手段として有効ですが、売掛先の債務不履行が発生した場合、企業にとって重大な法的リスクや経済的影響が生じる可能性があります。契約形態の選択や契約内容の詳細な確認、信頼性の高いファクタリング会社の選定など、事前の対策を講じることで、これらのリスクを軽減することが可能です。
ファクタリングを利用する際は、これらのリスクと対策を十分に理解し、慎重に判断することが求められます。