信用保証協会に代位弁済されると?

2024年3月6日

中小企業が融資を受けるときに、担保が余り必要ない、信用保証協会の保証付きにすることが多いです。
しかし返済を滞納してしまうと、信用保証協会に代位返済を行われる可能性が高いです。
代位弁済が行われると、どのような問題があるのでしょうか。
また、返済不能となってしまったときの対応とともに、問題点を紹介します。

信用保証協会に代位弁済をされた後どうなるのか

事業資金の融資を受けるときには、中小企業ではプロパー融資では審査に通りにくいため、信用保証協会の保証を受けて銀行の承諾を受ける会社もあります。
信用保証協会の保証付き融資の場合、返済が滞ってしまい返済の見込みがないと判断されると、信用保証協会が代位弁済を行い融資の返済を立て替えます。
しかし返済を立て替えてもらったとしても、返済の義務がなくなるわけではなく、今度は信用保証協会から立て替えた金額が請求されます。
このようになったときに、信用保証協会にどのようにして返済していくのか、利息や損害金の支払いが必要かどうかなど合わせて解説していきます。

代位弁済をされると一括返済を請求される

信用保証協会の保証付き融資は、返済が数年から数十年にわたる長期間で分割して返済を行うことが多いです。
しかし、信用保証協会による代位弁済が行われてしまうと、立て替えてもらった金額の返済は、分割ではなく基本的に一括で要求されます。
当然返済に必要な、まとまったお金を用意できることは少ないため、一括返済ができないことは多いです。
このような場合は、信用保証協会も悪徳業者ではないため、分割の支払いに応じてくれたり、返済を遅らせてくれたりします。
ただし、一括返済を求める通知がきたにもかかわらず放置していると、担保を売却されるなど返済者に不利になってしまいます。
そのため、必ず早めに信用保証協会の交渉へと出向くようにしましょう。

代位弁済の金額は減額してもらえない?

代位弁済を行われたということは、融資を受けている企業の経営がうまくいかず、金銭的に困っていると分かってもらえそうです。
しかし、信用保証協会は幾ら金銭的に困っていたとしても、代位弁済額を減らすことはありません。
信用保証協会は信用保証協会法に基づいて運営を行っている公的機関です。
したがって、民間企業と比較すると、元金の金額を回収する傾向にあります。
返済能力がなく自己破産をするなど、回収が誰の目から見ても不可能な状況でもなければ、元金の回収が止まることはないです。
代位弁済が始まったとしても、債務整理のように借金が減って、融資の返済が楽になるということはないと思ってください。

年率14.6%の遅延損害金も支払う必要あり

信用保証協会の代位弁済は、支払いが一括返済になる以外にも、滞納期間に応じて遅延損害金を支払う義務が発生します。
遅延損害金は代位弁済が行われた日から、年率14.6%の利率で計算されていきます。
保証付き融資は利息が年率1~3%程度であることが多いため、14.6%の遅延損害金はかなりの高金利ですよね。
1,000万円の債務の代位弁済が行われていた場合は、毎月10万円の返済を行ったとしても、遅延損害金によっては返済が追い付かなくなります。
代位弁済の返済が遅れれば遅れるほど、支払いはより困難になってしまいます。
カードローンなど個人向けのローン商品では、遅延損害金の負担はそこまで大きくありませんでした。
しかし、法人や個人事業主の融資では遅延損害金の支払いが経営に大きく影響をあたえるのです。

担保は売却される

担保に物件や設備を入れている場合には、代位弁済の段階で処分を検討される可能性が高いです。
もちろん、信用保証協会と今後の返済方法などの交渉をすることで、担保を処分されずに済む可能性はあります。
しかし、完済の計画が具体的に立っていないと処分されずに済むことは厳しくなります。
最初は、担保の売却を借りている人にゆだねてくれますが、拒否を行い続けることで信用保証協会が強制的に担保物件などを競売にかけられることもありますので気を付けてください。
また、担保物件を所有している場合は、返済手段があると思われやすく、他の代位弁済者よりも積極的に交渉される傾向にあるようです。
融資を受けるときに不動産登記簿に抵当権を設定した場合には、代位弁済時に大きな影響をあたえるという点には注意が必要です。

法的手段を取られる可能性もありえる

代位弁済の返済が大変だからといっても、返済の連絡を取らなかったり、返済ができずに滞納し続けてしまったりしたら、信用保証協会から法的手段を取られる可能性があります。
状況にもよりますが裁判に持ちこまれて、強制的に財産が差し押さえられる強制執行の判決が下される可能性も高いです。
強制執行の前には、裁判所で差し押さえに対して異議申立てができます。
しかし、差し押さえの連絡がきてから2週間以内に行わなければ、異議申立ては受理されずに差し押さえに移るのです。
また、信用保証協会には弁護士など法律のプロがいるため、裁判や交渉になると返済側が不利となることが多いです。
異議申立ての裁判になったとしても、信用保証協会との関係性が崩壊していた場合には、強制執行を免れることは難しいと言えます。

代位弁済後に困らない対処法とは

代位弁済を行われると、保証付き融資の返済よりも返済が困難であることは理解していただけたと思います。
しかし、信用保証協会は公的機関であるため、闇金のような違法な取立てをされることはありません。
交渉の場につき返済計画を提示すれば、強制行使されずに済むことが多いです。
そこで、代位弁済後に取るべき対処法について紹介していきます。

利息の返済は大目に見てくれることも

これまでに紹介してきたように、代位弁済の元金を減額してもらうことは厳しく、信用保証協会も妥協なく回収を行ってきます。
しかし、利息に当たる遅延損害金は、元金の回収ができるようであれば、大目に見てくれるケースもあります。
信用保証協会は公的機関であるため、私企業と比べると収益を大切にしているわけではありません。
したがって、元金の回収と違い遅延損害金の請求はそこまで厳しく追及はされません。
代位弁済の元金返済ができるのであれば、遅延損害金の支払いについては交渉の余地があるため、返済条件と併せて話をしてみると良いでしょう。

信用保証協会は取立てが厳しいわけではない

信用保証協会は借金を肩代わりして、代わりに請求をするという性質上、個人融資における借金の取立て業者と同じように見られやすいです。
しかし、実際には取立て業者のように職場や住居にまで押しかけてきて、恐喝まがいの取立てを行うといったことはありません。
同じ債権者である消費者金融などと比較すると、社員や家族に迷惑をかけたくないため、職場や家には取立ての連絡を入れないでほしいと要望をすれば、受け入れてくれることもあります。
また、返済金額が少なかったとしても、計画を立ててその通りに返済をすすめていれば催促の連絡がくることも追加の連絡がくることもありません。
融資金の元金の返済がすすむのであれば、比較的柔軟に対応してもらえるので、代位弁済とはいえただちに生活や仕事に影響がでない可能性もあります。

代位返済を免除する条件もあるが

代位弁済の金額を免除することは厳しいと説明しましたが、免除の方法が全くないわけではありません。
信用保証協会は求償権の放棄という名目で、条件を満たした債務者の借金返済を免除することがあります。
ただし、求償権の放棄は幾つもの条件を満たす必要があるため、難易度は非常に高いです。
まず、代位返済の金額を返済すると経営が破綻するほど、運営が追い込まれている必要があります。
そして、返済に向けて前向きに取り組みを行い、必要な情報を信用保証協会に提示していることも必要です。
さらに、企業が地域に密着しており、地域産業においてかかすことのできない利益を生み出していることや、再生計画が綿密に組み込まれ銀行や従業員の協力を得られることなどの条件も必要となります。
これほど、幾つもの条件を満たさなければ、求償権の放棄を行ってもらえないため、代位返済を免除してもらうことは大変厳しいといえます。

代位弁済後には取りあえず連絡をする

信用保証協会は、遅延損害金や催促の方法など様々な面で要望に応じてもらえる可能性があります。
しかし、どの要望を交渉する上でも、まずは信用保証協会に連絡をすることが大切です。
信用保証協会に連絡を取らずに、代位弁済の返済を放置してしまうと、請求方法もエスカレートする可能性が増えます。
請求も会社に直接連絡がきたり、法的手段の行使に映る可能性も高まったりします。
先ほど紹介した差し押さえなどの強制執行につながる可能性も高まるため、連絡を早めに取り現状の説明を行うことが大切です。
現在の会社の経営状況や資産の現状をしっかり信用保証協会に提示して、返済に向けて前向きに交渉をするように連絡をすることが返済をすすめる上で重要です。

順調に返済できれば求償権消滅保証に挑戦も

順調に信用保証協会へ返済していたとしても、事業をしている限り再び融資を受けたいということもあるでしょう。
しかし信用保証協会への返済が終わらない場合、求償権はずっと信用保証協会にあります。
信用保証協会に求償権が残っていると、銀行など金融機関は警戒して今後融資を受けることが難しくなります。
そこで、利用できるのが「求償権消滅保証制度」です。
信用保証協会と連絡を取りつつ、返済に前向きに取り組んでいると返済の途中で求償権消滅保証に挑戦を行うことができます。
求償権消滅保証とは、現在残っている代位弁済の返済額を銀行から借入れができるように、信用保証協会が働きかけて、返済額分の融資を受けることができる仕組みです。
例えば、代位弁済の返済額が2,000万円残っているとすると、信用保証協会が銀行に対して「保証をするのでA社に2,000万円の融資を行ってください」と呼びかけをして、条件が合えば再び信用保証協会付き融資を受けることが可能となります。
条件として返済がすすんでいることが必要となるため、代位弁済の返済以外にも金融機関や税金などの支払いも順調にすすんでいる場合は、信用保証協会に確認してみましょう。

求償権消滅保証で代位返済を解消

求償権消滅保証の最大のメリットは、代位弁済を解消して正常な取引が可能になるところまで復活できることです。
代位弁済の返済中には、新しい融資を銀行に申請することやローンを組むことが難しくなります。
代位弁済を解消することで、代位弁済を行う前の正常な状況に戻すことが可能です。
求償権消滅保証を利用しなくても、代位弁済の返済を完了すれば正常な状態に戻すことができるので、諦めずに返済をすすめていきましょう。

信用保証協会に返済不能となってしまった場合

代位弁済を信用保証協会に行われたが、どうしても返済ができないという状況になる可能性があります。
会社の経営にも影響しますが、倒産や破産手続きなども視野に入れながら返済を検討する必要がありますが、返済不能になったときの対応について解説していきます。

まずは資産を売却する

代位弁済の返済ができなくなってしまった場合、まずは所有している不動産や売掛金などを精算して資金にすることが必要です。
小規模事業者の場合、経営に直結する資産で手放せないこともありますが、中小企業者の場合には経営に支障がでない程度の資産は生産してください。
資産を売却せずに保持し続けていたとしても、信用保証協会から売却を促される可能性が高いです。
また、売却を拒否し続けても競売にかけられてしまったり、破産手続きのときに処分されてしまったりされてしまいます。
資産を売却して返済資金にすることで、信用保証協会に返済の意思を示すことができ、後の手続をスムーズにすすませるきっかけにできます。
完全に返済不能と思われる場合でも、できる限りの誠意を示すためにも資産は売却しておきましょう。

破産手続きを行い再出発する

信用保証協会の代位返済ができなくなったときには、破産手続きを行うことで代位弁済や他の借入れなどを免除することが可能です。
ただし、会社の破産手続きは複雑に法律が絡み合っているため、個人での破産よりも手続きが煩雑であることが多くなります。
また、取引先の売掛金や買掛金の整理や従業員の賃金や雇用問題など、自己破産前に対応しなければいけない事柄や、逆に自己破産前には行ってはいけない行為もあるため下調べが必要です。
さらに、法人として保有している資産は全て処分対象になります。
個人での破産であれば最低限の資産を保有することはできますが、法人では全て資金に返還して手続費用に充てなければなりません。
なお、法人が所有している資産を第3者に譲渡してしまうと、資産を意図的に散財させてしまったということで、自己破産の手続を妨げる可能性があるので注意してください。

自己破産は行わなくてよいケースも

会社の破産手続きをすすめると、同時に法人の代表者も自己破産を行わなければならないイメージがありますが、実は代表者が自己破産を行わなくてよいケースもあります。
まず、会社の代表者に会社の借金の全額支払い義務が生じる場合は、代表者が法人の借金の連帯保証人になっている場合に限られます。
連帯保証人ではなく保証人であったり、そもそも保証人を立てなかったりしたときには、支払い義務が限られます。
代表者が連帯保証人ではなければ、支払い義務の程度が自己破産するまでもない金額であることが多く、一定の貯金や住居の処分で済むことも考えられます。
自己破産を行うと住居や車などの資産を処分しなければならないため、一緒に暮らしている家族にまで影響がでてしまいます。
本当に自己破産が必要かどうかも合わせて確認しましょう。

保証人などを立てている場合は注意

会社の債務に代表者以外に保証人を立てている場合には、保証人に破産の旨を伝えておきましょう。
保証人には破産手続きを行ったと同時に、法人に代わって債務や代位弁済の返済義務が移ります。
もしも、会社から連絡をしなければ、保証人は全く知らないうちにいきなり支払いの督促状が届くといったことが起こります。
早めに返済が厳しい旨を保証人に相談しておけば、代位弁済を手伝ってもらえる可能性もあります。
しかし、返済滞納を全く伝えていなければ信頼関係が崩れてしまい、借金返済を助けてもらえない可能性が高いです。
また、保証人との関係性にもトラブルが起こる可能性があるので、自己破産前に必ず相談を行いましょう。

完全に返済不可能な場合は早急に弁護士に相談

返済不可能になったときには、財産の処分や破産手続きを行うことをおすすめしてきましたが、どの手続きにも法律が関わってくるため最初に弁護士などの法律の専門家に相談をしましょう。
先ほども紹介しましたが、財産の処分などは法律を知らずに行ってしまうと、自己破産に悪影響をあたえてしまったり、損害賠償請求を受けたりする必要もでたりします。
法的トラブルに巻き込まれないためにも、返済不能になってしまったと思ったら、今後の身の振り方を決める上でも弁護士に相談を行ってください。