中小企業や個人事業主が資金繰りに困ったとき、素早く現金化できる手段として注目されている「ファクタリング」。特に売掛金を抱える業種では、融資に頼らない資金調達方法として活用されています。

しかし、近年ファクタリング市場の急成長に伴い、一部の業者間での「繋がり」や不透明な関係性が問題視されるケースも増えています。「この会社、実は別の業者と裏で繋がっていた」「紹介された会社もグループ企業だった」といった話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか？

本記事では、ファクタリング会社間の「繋がり」が意味するもの、そのリスク、安全な業者を見極めるためのポイントについて詳しく解説します。

そもそもファクタリングとは？

まずは基本を押さえておきましょう。ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却することで、期日前に資金化するサービスです。返済義務が発生しないため、借入とは異なり、信用力が低くても利用しやすい点が特徴です。

ファクタリングは主に以下の2つに分かれます。

・2社間ファクタリング：利用企業とファクタリング会社のみで契約。売掛先に通知なし。

・3社間ファクタリング：売掛先にも債権譲渡を通知し、関与させる形式。

急ぎの資金繰りに適しており、建設業、医療業、運送業など多くの業界で導入が進んでいます。

ファクタリング業界の「繋がり」とは？

「繋がり」という言葉は一見曖昧ですが、ファクタリング業界では以下のような関係性を指して使われることが多いです。

1. グループ企業・関連会社間のネットワーク

ファクタリング業者の中には、複数の関連会社を設立し、別会社を装って営業活動を行うケースがあります。これは「審査に落ちたら別会社を紹介」「手数料の高い方に誘導」など、顧客の囲い込みや営業効率を上げる目的で行われることが多いです。

2. 紹介業者・仲介会社との繋がり

ファクタリング専門の仲介業者（ブローカー）は、表向きには「多数の会社から最適な業者を紹介」と謳っていますが、実際は特定のファクタリング会社と提携し、手数料の高い取引を優先して紹介することもあります。このような紹介者と業者の利害関係は、利用者にとって不利益になる可能性があります。

3. 闇金業者との関係性

悪質なケースでは、実質的に闇金と繋がっているファクタリング会社も存在します。形式上は債権売買として契約を行いながら、実態は貸金と変わらない高利の取引が行われていることもあります。

ファクタリング業者の繋がりが引き起こすリスク

こうした「繋がり」がもたらす主なリスクは以下の通りです。

1. 手数料が不当に高くなる

紹介業者やグループ会社を経由することで、中間マージンが上乗せされ、実際の手数料が20～30％になるケースもあります。表面的には「手数料5％から」と記載していても、紹介された業者で実際に契約する段階で大幅に費用が増加することも珍しくありません。

2. 複数契約による混乱

1社で完結せず、複数の業者と契約が発生することで、契約内容の把握が困難になったり、債権管理が煩雑になったりするリスクがあります。

3. 強引な勧誘・情報漏洩

グループ会社間で顧客情報が共有されることで、複数の業者から営業連絡が続く場合があります。中には、断ってもしつこく連絡してくる悪質な勧誘もあるため注意が必要です。

4. 売掛先とのトラブル

2社間ファクタリングの場合でも、業者間で情報が漏洩し、売掛先に債権譲渡の事実が伝わってしまうことがあります。取引先との信頼関係に影響を与えるため、非常にデリケートな問題です。

ファクタリング業界における法的整備の現状

2025年現在、日本のファクタリング業界には明確な免許制度や業法は存在しておらず、金融庁や消費者庁による直接的な規制の対象外となっています。そのため、ファクタリング業者同士の繋がりや裏のネットワークに関しても、違法でなければ取り締まれないのが現状です。

ただし、明らかに悪質な勧誘や実態が貸金であるケースは、「出資法」や「貸金業法」「特定商取引法」などの違反となる場合があり、行政指導の対象となります。

安全なファクタリング会社の見極め方

繋がりや不透明な業者に巻き込まれないためには、以下の点をチェックして、安全なファクタリング会社を選ぶことが大切です。

1. 会社情報の透明性

公式サイトに代表者名・所在地・電話番号・設立年数などの情報が明記されているか確認しましょう。情報が曖昧な業者は避けるべきです。

2. 他社を過剰に紹介しないか

問い合わせの段階で「うちではなく別会社をご紹介します」といった対応をされた場合は、その繋がりを疑いましょう。中間業者を挟むことで手数料が上がるリスクがあります。

3. 契約書や説明の明確さ

契約前に十分な説明がなく、「まず契約を急ぎましょう」といった圧力をかけてくる業者は要注意です。契約書の内容を丁寧に説明する業者を選びましょう。

4. 実績や口コミの確認

Googleレビューや比較サイト、SNSなどで実際に利用した企業の声を確認することも大切です。悪質な業者は評判が悪く、名前を変えて営業している場合もあります。

ファクタリングを安全に利用するために

ファクタリングは正しく活用すれば、迅速な資金調達手段として大きな効果を発揮します。しかし、業者間の繋がりや実態の不透明さが問題になる場合もあり、利用者には一定のリテラシーが求められます。

繋がりがあるからといって、すべての業者が悪質というわけではありません。ただし、説明不足・手数料の不透明さ・強引な勧誘などが見られる場合は警戒しましょう。特に、資金に困っている状況では冷静な判断がしにくくなりがちです。だからこそ、事前の情報収集と信頼できる業者の選定が何より重要です。

まとめ

ファクタリング会社間の「繋がり」は、時として利用者にとって大きなリスクとなり得ます。紹介業者との癒着、グループ企業間の囲い込み、悪質な契約誘導など、不透明な関係性に巻き込まれないよう注意が必要です。

これからファクタリングの導入を検討している方は、「信頼性」「情報の開示」「契約内容の明確さ」の3点を重視し、納得のいく業者を選びましょう。