ファクタリングの売掛債権とは?未回収リスクや回避方法を解説
2024年6月2日
事業を営んでいく中で、売掛債権は頻出する重要な要素です。掛取引では売上が上がった時点でキャッシュが自社に入ってくるわけではないため、売掛債権をきちんと管理して確実に回収する必要があります。
今回は、売掛債権の基本的な考え方や未回収リスクについて解説します。売掛債権の未回収リスクを低減させるための対策にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
売掛債権とは会計上の資産のこと
売掛債権とは、商品やサービスの取引に伴って代金の支払を受ける権利のことを指します。
売掛債権は将来的に自社に金銭が入ってくることを意味しているため、会計上は資産とみなされます。そのため、銀行から借入をするといった場合には売掛債権を担保とすることも可能です。
一方で、売掛債権は半永久的に行使できる権利ではなく、時効があります。時効までの期間は、権利を行使することができることを知った時から5年、あるいは権利を行使することができる時から10年で、それ以降は権利を行使できなくなります。
売掛債権の種類
売掛債権には、「売掛金」「受取手形」「電子記録債権」の3種類があります。それぞれの特徴について見ていきましょう。
売掛金
売掛金とは、商品を販売したりサービスを提供したりした際に発生した売上を、将来的に金銭で受け取る権利のことです。売掛金の回収サイトは契約書で合意した条件が適用されます。実務上では請求書等にもとづいて金銭をやりとりするのが一般的です。取引する双方のあいだに信用がなければ成り立たない取引であることから、信用取引にあたります。卸売業や製造業、サービス業といった幅広い業種で見られる売掛債権です。
受取手形
受取手形は、商品を販売したりサービスを提供したりした際に発生した売上を将来的に受け取る権利という点では売掛金と共通していますが、約束の証として約束手形等を発行する点が異なります。
手形には支払日が設定されており、手形を受け取った側が支払日に現金化することが可能です。また、手形割引という形で、手数料を支払うことにより、手形に記載されている期日よりも早く現金化することもできます。
電子記録債権
電子記録債権とは、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録をその発生・譲渡等の要件とする、既存の指名債権・手形債権等とは異なる新たな金銭債権のことを言います(※)。
受取手形との大きな違いは、受取手形を現金化するには受け取った側が金融機関に出向く必要がありますが、電子記録債権は期日を迎えると金融機関が自動的に現金化する点です。また、電子記録債権には印紙税が課税されないほか、ペーパーレス化や業務効率化にもつながるというメリットがあります。
倒産による売掛債権の未回収リスク
売掛債権を回収する前に相手方が倒産した場合、その売掛債権は未回収となってしまいます。経済産業省が公表しているデータによれば、2022年の倒産件数は製造業で722件、非製造業で5,706件でした(※)。
国内の倒産件数は2014年から2021年まで微減が続いていたものの、2022年から増加に転じているのが実情です。毎年多くの企業が倒産している実態を鑑みると、売掛債権の未回収リスクは高まっていると考えられます。
売掛債権の未回収リスクを低減するには?
売掛債権の未回収リスクをゼロにすることはできないものの、様々な対策を講じることでリスクを低減させることは可能です。続いては、売掛債権の未回収リスクを低減させる方法について解説します。
ファクタリングを活用する
ファクタリングを活用することで、売掛債権の未回収リスクを回避できます。
ファクタリングには大きく分けて「買取型」と「保証型」の2種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
<買取型ファクタリング>
買取型ファクタリングは、ファクタリング会社に売掛債権を買い取ってもらうことで、回収期限前に売掛債権を現金化する仕組みです。買取型ファクタリングには、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
・2社間ファクタリング
2社間ファクタリングとは、利用者とファクタリング会社のあいだで取引されるファクタリングのことで、利用者は売掛債権をファクタリング会社に譲渡して現金化します。売掛債権を譲渡する旨を売掛先に通知する必要がない点や、すぐに現金化できる点が特徴です。一方で、売掛債権の回収は通常の掛取引と同様、利用者が行う必要があります。
・3社間ファクタリング
3社間ファクタリングとは、利用者・ファクタリング会社・売掛先がそれぞれ関与するファクタリングを指します。譲渡された売掛債権の回収は、ファクタリング会社が売掛先に直接行う点が2社間ファクタリングとの違いです。ファクタリング会社にとって2社間ファクタリングよりも売掛債権の未回収リスクを低減できることから、手数料は比較的低めに設定されている反面、現金化されるまでの時間は一般的に2社間ファクタリングと比べて長くなります。
<保証型ファクタリング(売掛債権保証)>
保証型ファクタリングは、ファクタリング会社に売掛債権の保証料を支払うことで、万が一売掛債権が回収できない状況に陥った場合も、売掛債権の支払を保証してもらえるサービスのことです。保証会社へ保証料を支払う必要があるものの、未回収リスクを低減させるための対策として活用できるサービスのひとつと言えます。
前述の買取型ファクタリングは入金予定日よりも前に売掛債権を現金化するサービスですが、売掛債権保証は入金がなかった場合に保証金が支払われるサービスです。売掛債権保証を利用する場合、売掛債権は自社で保有することになります。したがって、期日通りに売掛債権が回収できれば、取引の流れは通常の掛取引と同様です。
保証型ファクタリング(売掛債権保証)を利用するメリット・デメリット
売掛債権保証を利用することで、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。それぞれ詳しく見ていきましょう。
売掛債権保証を利用するメリット
売掛債権保証は、売掛債権の未回収リスク低減に有効です。そのほかのメリットも併せて、詳しくご紹介します。
・売掛債権の未回収リスクを低減
売掛債権保証を利用することで、売掛債権の未回収リスクを低減できます。万が一取引先が倒産するようなことがあったとしても、保証会社によって売掛債権の支払が保証されるからです。売掛債権をより確実に回収できる点は大きなメリットと言えます。
・与信管理を効率的に行える
売掛債権保証を利用するにあたって、保証会社による審査が行われます。審査とは、売掛先に関する与信審査のことです。保証会社が取引先の与信審査を代行していることになるため、与信管理の効率化につながるというメリットがあります。
・売掛先に知られずに利用できる
売掛債権保証を利用している事実が売掛先に知られることはありません。売掛債権保証は、あくまでも債権者である利用者が活用するサービスだからです。売掛先に懸念を抱かせることなく取引できる点が、売掛債権保証のメリットと言えます。
売掛債権保証を利用するデメリット
売掛債権保証には、デメリットとなりうる面もあります。ここでは、審査や入金について注意したい点をご紹介します。
・審査が通るとは限らない
保証会社が行う与信審査の結果次第では、売掛債権保証が利用できない場合もあります。取引先の信用度が低いと判断された場合、与信審査を通過しないこともありえるからです。
・保証金が入金されるまでに時間がかかる
売掛債権が回収不能となった場合、保証会社から保証金がすぐに振り込まれるわけではありません。保証会社に申請してから保証金が支払われるまでにはタイムラグがあります。2社間ファクタリングのように、即日入金というわけにはいかない点がデメリットです。