黒字倒産の原因とは一体?「資金不足」の解決方法について解説
2024年7月22日
企業の多くは運転資金を元手に商品を仕入れ、人を雇用し、サービスまたは商品を提供することで利益を得ています。
つまり企業は「借入や出資で集めた資金を使って、費用を支払う」「売上で回収する」というサイクルを繰り返しており、同サイクルを止めないためにも収入と支出をバランスよく・スムーズに循環させねばなりません。
今回は、どうして資金ショートが起こってしまうのか・資金繰りが悪くなるのか、その原因と対策をまとめました。
資金のショートを未然に防げるように、自社の経営を見直してみてください。
資金繰りのショートとは
資金のショートとは、簡単に言うと「同サイクルが回らなくなった状態」のことです。
手元の資金が不足している状態を表しており、運転資金が足りなくなり新たな仕入れや投資ができなくなる・従業員や取引先への支払いが滞る等の恐れがあります。
どれだけ売上・黒字がある状態であっても、支払いのためのキャッシュが無ければ企業は倒産してしまいます。
これを「黒字倒産」といい、気が付いたときには手遅れになっていることも珍しくありませんので、早めの対処が重要です。
資金ショートの原因を以下の通りご紹介してまいりますので、必ず事前かつ定期的にチェックするようにしましょう。
資金繰りの管理不足
資金繰りがショートする原因として多いのが、資金繰りの管理不足です。
そもそも「資金繰りを管理していない」という企業も多く、税金や経費支払い・借入金の返済など、予定されている支出に対する認識不足が資金繰りのショートを引き起こすケースが後を絶ちません。
どれだけ利益が出ていたとしても、入ってくるお金よりも出ていくお金が多ければ資金難になってしまいますし、資金調達はすぐにできるとは限りませんので、早い段階で資金の流れを把握しておくことが大切です。
管理・把握の方法としては「資金繰り表の作成」が最もベターかつスムーズです。
資金繰り表をつけておけば、どの段階で資金が足りなくなるのか前もって知ることができますし、事前にわかっていれば入金日や支払日をずらす等の対策も執れます。
会社のお金の出入りを時系列で管理し、残高を把握するようにしてください。
支出金額の認識不足
各支出金額の認識不足で資金繰りがショートするケースもあります。
例えば、消費税や保険料は赤字・黒字関係なく納めなければなりませんが、納付のための現金を残していなかった、各種税金の納付を失念若しくは金額を勘違いしていた等は予期せぬ資金ショートの代表例です。
また、借入金の返済計画に誤りがあった場合、資金計画が全て狂ってしまうため、専門家(税理士や資金コンサルタント、商工会議所など)に意見を仰ぐ・顧問してもらう等も検討しましょう。
さらに、短期間に支払いが集中することで資金難になるケースも珍しくなく、特に設備投資に積極的な企業に多く見られます。(高額な動産や設備は減価償却によって少しずつ経費計上をしますが、実際には大きな金額の現金が先に出ていくため)
設備投資だけではなく、小さな支出であっても件数が多く重なれば資金繰りに与える影響も大きくなりますので、定期的なスケジュールチェック・管理も心がけてください。
入出金の認識違い
売上の発生と実際の入金にはタイムラグがあり、入金を待っている数週間から数か月の間に資金がショートしてしまう可能性もゼロではありません。
さらに出金の金額・入金のタイミング等の認識違いが原因になることもあり、例えば「会計が発生基準なのに現金基準と勘違いしていた」といった事例でも資金がショートする可能性があります。(※発生主義は現金の支出にとらわれず費用や収益を一定期間内の事実で認識する考え方で、現金主義は費用や収益を現金の支出に基づいて認識する考え方です。)
また、取引先の倒産や業績悪化などが要因となり、予定していた現金が手元に入ってこないということもあります。
日本政策金融公庫では連鎖倒産防止のための中小企業向けの支援としてセーフティーネット貸付を提供していますので、先方都合の入金停止や遅延で資金難になった場合は相談してみると良いでしょう。
資金ショートの対策方法
実際に資金がショートしそうになった場合は「収入又は運転資金を増やすこと」「支出を減らすこと」を心がけましょう。
具体的な対処方法、対応策は以下の通りご紹介いたしますので、資金繰りにお悩みであれば是非お試しください。
金融機関からの融資
もっとも単純な解決方法は「不足分を外部から借り入れること」です。
借入先は銀行や消費者金融などが一般的ですが、融資を受けるには当然審査が必要であり、財務状況が芳しくない場合は利用できない可能性があります。
融資の審査を受ける際は、事業計画や返済計画を綿密に立てておかなければなりません。
また、審査を通過したとしても、決済(入金)までに時間がかかってしまうという点も融資のデメリットです。
緊急時の資金繰りであれば、ビジネスローンやファクタリングなど、スピード面を重視した方法を選ぶ必要があります。
支出のタイミングを改善
支払い予定の仕入費用や経費をできるだけ先に延ばし、入金される予定の売掛金や受取手形をできるだけ早く回収するのも対策の一つです。
販売先には売掛金の先払い依頼、仕入れ先には支払いの遅延交渉をするのが一般的で、支払いが遅れても事業継続に問題が無さそうな仕入先から交渉すると良いでしょう。
また、複数ある仕入先を一本化する、自社に有利な支払いサイトの仕入先に変更するという方法も資金ショートの防止に繋がります。
ただし、交渉すること・変更することで取引先との関係が悪化してしまうリスクも視野に入れておかねばなりません。
交渉時には、資金繰り表を作成して支払い計画をきちんと説明すると共に、万が一取引ができなくなったときのために別の取引先を探しておくようにしてください。
返済のリスケジュール
借入金の返済が滞りそうな場合は早めに貸主側に連絡・相談するようにしてください。
特に銀行は返済可能なスケジュールを再度立て直し、返済期間・返済額を変更してもらえることがあります。(所謂「リスケジュール」)
もちろん銀行にとって支払いが遅れることは好ましくありませんが、企業運営ができなくなれば返済そのものが不可能になりますので、回収の可能性を少しでも上げるために交渉に応じてくれるケースがあるのです。
返済スケジュールを立て直すときには「いくらの支払いなら可能なのか」「リスケジュールすることによって、資金繰りがどう変わるのか」を把握しなければなりません。
リスケジュールによって返済期間が長くなったとしても、毎月の返済額が少なくなれば資金繰りは楽になりますので、資金不足に陥る前にしておくことをおすすめいたします。
コストを見直す
資金繰りの改善にはコストの見直しも欠かせません。
コストには「売上に応じて変動する変動費」と「売上に関係なく一定で発生する固定費」に大きく分けられ、十分な売上があるのに慢性的に資金不足に陥ってしまうというケースであれば、固定費が多すぎる可能性があります。
事務所の移転、インターネット・電話回線や水道光熱費の契約を見直す、人件費を減らすためにスタッフを一部アルバイトに変える、保険料を減らすためにアウトソーシング(外注化)を活用する等の措置を検討してみてください。
なお、変動費と固定費のバランスは業種によって大きく異なります(例えば製造業や小売業は原材料費や仕入れ等の変動費が多い)ので、事業の内容や状況を見ながら慎重に決めていく必要があります。
遊休資産を見直す
稼働が終わった設備や資産、大型機械・器具などのことを「遊休資産」といいます。
効率が悪く稼働していない、故障したため使わなくなった等であれば、売却や処分によって管理費や各種税金(固定資産税や車両税など)を節約できるかもしれません。
また、重機・農機具、工場設備等であれば故障していても売却できる可能性があり、資金調達としての側面も期待できます。
ただし、上場株式や投資信託といったようにすぐに現金化できるものもあれば、不動産のように時価がわかりにくく、現金化までに時間を要するものもあります。
時間が掛かりそうなもので利益にならないような資産(投資用不動産やゴルフ会員権、リゾート会員権など)は資金に余裕があるうちに現金化を検討しましょう。
ファクタリングを利用する
切迫した状況であれば「ファクタリングの利用」も一つの手です。
銀行融資は決済までに1か月前後を要しますし、スピードに優れたビジネスローンであっても審査には数日を要します。
ファクタリングは最短即日で決済され、数千万円から数億円の大規模な調達も可能です。
さらに、個人事業主や小規模法人、非営利団体(社団法人やNPO法人)といったように事業形態を問わず利用することができます。
また、譲渡した債権が万が一不履行となっても、ファクタリングを利用した企業は責任を負わないため、代金の回収リスクを軽減できるというメリットもあります。
すぐに資金を用意しないとショートしてしまう・倒産してしまうなど、緊急性が高いシチュエーションであれば検討してみても良いでしょう。