ファクタリングして納税か税金滞納どちらが損?
2024年1月13日
ファクタリングしてまで納税を優先するべきか?
納税に関しては様々な考えがあると存じますが、このページでは「納税延滞によるリスク」と「ファクタリングによる資金調達コスト」を比較した場合、どちらがより少ない損失で済むかの観点でご説明いたします。
ファクタリング手数料との比較
次に「ファクタリングをしてでも納税するべきか」という点について考察してまいります。
まず源泉所得税の場合、先程の計算では184,700円の損失が発生することになりますが、本税300万円に対する割合は6%程度です。
つまりファクタリング利用により納税を行う場合、手数料6%以下の条件でなければ有利になることはありません。
法人税・消費税・固定資産税・自動車税・社会保険料などの場合は、延滞したとしても不納付加算税は発生せず、300万円を3か月滞納しても損失は34,700円であり、割合で見れば1%程度です。
現実的に、300万円規模で手数料1%以下でのファクタリングはまずありえませんので、延滞税を支払った方が損失が少ないという結論になります。
差し押さえのリスクについて
税金を滞納すると、現金預金や不動産、価値のある動産が差し押えられる恐れがあります。
しかしながら、滞納発生から差押え実行までは「督促状の発送(滞納から30~60日程度経過後)」「催告」「最終催告」「差押え実行」というフローを経るため、滞納直後に財産が差し押さえられる訳ではありません。
また、差押え実行までには何度も税務署から連絡があるため、それらを無視せずに「納税の意思がある旨」を伝えていれば2、3か月で差し押さえを強行してくることはまず無いでしょう。
納税猶予制度の活用
「納税の猶予」と呼ばれる制度を活用することにより、税金を分割支払いすることが可能です。(最長で1年間・猶予期間中の延滞税の全部又は一部が免除)
なお、猶予を受けるには
・財産について、災害を受けたり盗難にあった
・納税者や家族が病気にかかったり負傷した
・事業を廃業したり休業した
・事業について著しい損失を受けた
・上記の(1)から(4)に類する事実があった
・本来の期限から1年以上経過した後に、修正申告などにより納付すべき税額が確定した
のいずれかに該当する必要があります。
「事業で大きな損失を被った」「それに類する状況」とあるように、経営的な理由であれば柔軟に猶予期間を設けてくれる可能性があります。
納税のためにファクタリングを検討しようとしているなら、まず税務署へ猶予や分割払いの相談を行うことを強くお勧めします。
税金滞納によるペナルティ
まず、税金を滞納するとどのようなペナルティ(附帯税)が発生するのかについて確認してまいりましょう。
・法人税
支払期日:決算後2か月
支払期日:延滞税
延滞金割合:〜2か月…2.6%以降…8.9%
・消費税
支払期日:決算後2か月
支払期日:延滞税
延滞金割合:〜2か月…2.6%以降…8.9%
・源泉徴収税
支払期日:毎月10日(要件を満たす場合は6か月毎)
支払期日:延滞税+不納付加算税(不納付加算税は自主申告で5%、税務署指摘で10%)
延滞金割合:〜2か月…2.6%以降…8.9%
・固定資産税
支払期日:年4回
支払期日:延滞税
延滞金割合:〜2か月…2.6%以降…8.9%
・自動車税
支払期日:5月末
支払期日:延滞税
延滞金割合:〜1か月…2.6%以降…8.9%
・社会保険料
支払期日:毎月末
支払期日:延滞金
延滞金割合:〜3か月…2.6%以降…8.9%
ご覧の通り、原則として期日から2か月以内の延滞(自動車税は1か月、社会保険料は3か月)で年2.6%、それ以降は年8.9%の割合で延滞税が発生します。
例えば、税額300万円を3か月間延滞した場合、2か月目までが「(3,000,000円×2.6%×60日)÷365日=12,821円」、それ以降で「(3,000,000円×8.9%×30日)÷365日=21,945円」の合計34,700円の延滞税が加算される計算です。(100円未満は切り捨て)
なお、上記の中でも源泉所得税は特にペナルティが重くなっています。
源泉徴収とは従業員や外注に支払った金額の一部を予め税金として預かっておく制度で、預かった金銭は毎月(要件を満たせば6か月に1回)税務署に納めなければなりません。
万が一徴収した所得税の納付が遅れると、延滞税だけでなく、自己申告の場合は5%・税務署からの指摘で不納付が発覚した場合は10%の「不納付加算税」が付加されてしまいますので特に注意が必要です。
仮に300万円の源泉所得税を3か月滞納した場合は、延滞税が「34,700円(計算式は上記参考)」、不納付加算税で「3,000,000円×5%=150,000円(自己申告)」の合計184,700円を追加納付する必要があります。
過少・無申告はさらに重いペナルティ
通常の延滞であれば年間数%の割合ですし、仮に源泉所得税を滞納してしまったとしても10%の加算税なので、倒産とまではいかないケースがほとんどではないでしょうか。
一方で「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」はさらに重いペナルティが設定されていますので、絶対に避けてください。
まず、過少申告加算税とは税務調査により過少申告を指摘され、申告税額の更正を受ける場合に加算される税金のことです。
税額は、新たに納めることとなった税額の10%ですが、当初申告税額または50万円を超える部分については15%となります。
無申告加算税は、読んで字のごとく確定申告が行われていないことに対する税金です。
50万円までは納付するべき税額の15%、50万円を超える部分は20%の加算税が発生します。
重加算税は、事実の隠蔽、仮装により納税額を過少に申告した場合に課せられます。
新たに納めることとなった税額の35〜40%と非常に重いペナルティです。
「正直に税務申告していたが、経営状況が悪化して延滞してしまった」のと「税を逃れるために虚偽の申告をした」のでは、全く意味が異なります。
急な経営状況悪化により、納税が困難な場合…というケースでは先に解説したように年利10%以下の延滞税ですから、そこまで怯える必要はないでしょう。
ファクタリングは最終手段
「税金は、何があっても期日通りに支払わなくてはいけない」とお考えの方は多いのではないでしょうか。
もちろん期日通りに支払うことが原則ですが、「延滞税を支払う」「期限を伸ばしてもらう」「分割で納付する」という選択肢もあり、ファクタリングをしてまで無理に期日に間に合わせる必要はありません。
ただし、期日に間に合わない場合は、事前に税務署にその旨を相談又は連絡しておくようにしてください。
要件を満たせば納税猶予制度を利用できる可能性があります。
なお、ファクタリング会社の中には「一刻も早く納税しないと、とんでもない額の延滞税がのしかかってくる」などと脅迫めいた営業をする悪徳業者も存在します。
前述した通り、延滞税よりもファクタリング手数料の方が安くなる可能性は非常に低いため、このような脅しには屈せず落ち着いて納付の計画を立てましょう。
勇み足でファクタリングに手を出すのではなく、まずは税務署・顧問税理士と相談することが大切です。