ファクタリング契約では約款は重要になる!

2024年3月4日

ファクタリングは売掛債権の売買契約になります。契約をする上で、その取り決め条項=約款(やっかん)の内容が重要になります。
適当に約款を読んだ気になって署名捺印してしまうと、約款の内容に同意し、契約に法的効力が生じてしまいます。
つまり、みなさんにとって不利な約款の内容も当事者が合意したとみなされてしまいます。今回はファクタリング契約において注意したい約款の内容について考えます。

約款とは何?当事者が問題なければ有効なのか?

そもそも「約款」(やっかん)とはどのようなものをいうのでしょうか?また、約款は当事者が合意すればどのような内容でも許されるのでしょうか?

約款とは何?

約款(やっかん)とは、企業などが不特定多数の利用者との契約を定型的に処理するためにあらかじめ作成した契約条項を言います。

通常の契約書は当事者の話し合いの中で内容が修正されることもあり、要は相手次第で内容が変わるものです。しかし、約款は定型的なフォーマットで「これに同意して!」と一方的に契約希望の利用者に示すものです。

2020年の改正民法で「定型約款」という制度が正式に規定され、その中で特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引の際に締結する契約で、つまり、相手方の個性に着目しない取引であるとされました。

つまり、ファクタリング会社と利用者が個別に話し合ってファクタリングの契約内容を詰めていくのではなく、「当社のファクタリングはこれで行きます。同意してください」とほぼ一方的にファクタリング会社が利用者に求め、利用者はそれに同意するかどうかのみ判断することになります。

ファクタリングに限らず、携帯電話の契約などの際に、あの膨大な約款を渡され、同意してくださいと聞かれますが、内容について話し合うことはないですよね。

約款の内容について個別交渉を持ちかけることは難しく、したがって約款を渡されたときに重要なポイントのみをチェックし、同意=契約するに値するファクタリングなのか判断しなければなりません。

約款のチェックポイントについて詳しくないと、考える間もなく自分に不利な契約に同意してしまいかねません。

どのような契約でも問題ないのか?

ファクタリングは融資と違います。融資の場合は銀行法や貸金業法によって、その契約内容についても厳格な規定、規制がありそれを超える契約は無効になります。

特別法(銀行法、貸金業法、利息制限法など)は一般法(民法、商法)に優越するのが法の原則です。

しかし、ファクタリングには「ファクタリング規制法」のような法律がありません。したがって、通常の民法の契約についての一般条項が適用されます。

民法の規定で、契約後、無効、取消にできるのは

公序良俗違反(無効)
心裡留保(無効)
錯誤(取消)
詐欺、脅迫(取消)
未成年の契約(取消)
などに限られます。

明らかに公序良俗違反などは「売掛金の7割を手数料で支払う」ようなケースです。
実際には手数料10%取られるのに「1%です」とウソをついたり(詐欺)、無理やり威圧的にサインさせたり(強迫)、未成年にファクタリング契約させるなど、明らかに「おかしい」というファクタリング契約のみが無効、取消にでき、それ以外の内容の約款であれば基本的に合法です。

金利換算して200%になるようなファクタリング契約も、融資(利息制限法)ならば違法ですが、民法上は違法になりません。

したがって、約款の内容について、利用者保護がない中で契約するので、特別法によって守られる融資契約以上に危険であることを意識してください。

注意したいファクタリングの約款内容8選

それでは具体的にファクタリング契約する際の約款でどのような条項に注意すればよいのでしょうか?簡単にポイントを絞って解説していきます。

債権譲渡登記の有無

債権譲渡した(ファクタリングした)旨を登記するかどうかです。登記すれば第三者への対抗要件になり、売掛債権の債権者が変わったことを証明できます。債権譲渡登記はファクタリングに絶対に必要なものではありません。

ファクタリングの事実を安定させるために、登記はプラスになりますが、登記費用や時間がかかります。即時現金化を求めている場合、債権譲渡登記不要のファクタリング契約の方が良いでしょう。

少額ファクタリングの場合も、登記費用を請求されると全然必要な資金に足りないことも予想されます。約款に債権譲渡登記があるのかないのか、確認をお願いします。

また、債権譲渡登記をするには費用がかかります。

手数料や債権譲渡登記にかかる費用、取引先にファクタリングを知られてしまうリスクなどを総合的に考え、複数のファクタリング業者を比較する必要があるでしょう。

債権譲渡通知の有無

3社間ファクタリングの場合、債権者が申込人からファクタリング会社に移ったことを売掛先に連絡しなければなりません。

3社間ファクタリングで債権譲渡通知ありの約款は普通ですが、2社間ファクタリングで債権譲渡通知ありは要注意です。

2社間ファクタリングは売掛先にバレずにできるのがメリットなのに、債権譲渡通知ありだと、ファクタリング会社が売掛先にファクタリングの事実を伝えてしまう可能性があります。これでは2社間ファクタリングのメリットがなくなります。

ファクタリングの手数料

手数料が著しく高いことが約款でわかる場合、ファクタリング契約は避けましょう。

手数料の目安は、2社間ファクタリングが10%~20%、3社間ファクタリングが1桁%前半です。

2社間ファクタリングで30%以上、3社間ファクタリングで10%以上の場合、明らかに手数料が高く、これを約款で確認できた場合、契約しない方がいいでしょう。

担保設定の有無

ファクタリングは融資ではないので担保を求めること自体が間違っています。もし担保設定について約款に記載があれば、それはファクタリングではなく「融資のような何か」です。それをファクタリングとして契約させようとしているのは明らかにおかしいと気付いてください。

償還請求権の有無

ファクタリングは償還請求権なしの「ノンリコース」が原則です。償還請求権ありの約款だと、ファクタリング後売掛先から売掛金の回収ができなかった場合、自分に請求が来ます。

売掛先の経営が不安で。リスクヘッジのためにファクタリングしても、償還請求権ありだと貸し倒れリスクを自分が被ってしまいます。

ファクタリング会社がリスクを引き受けない契約であり、ファクタリングとしては悪質です。償還請求権ありの約款の場合、契約してはいけません。

損害賠償、違約金

約款上の義務を果たさなかった場合のペナルティについても確認します。例えば2社間ファクタリングを行ったのに、売掛金入金日にファクタリング会社に支払いがない場合や売掛金額に虚偽があった場合などです。

場合損害賠償や違約金の支払い自体は、債務不履行のペナルティなので合法ですが、そのペナルティが明らかにきつすぎる場合、契約をやめた方がいいかもしれません。

ファクタリングの契約期間と解約方法

ファクタリングは通常単発契約ですが、継続利用で自動更新できる契約もあります。逆に勝手に自動更新される約款を提示されるかもしれません。

しっかり確認しないと、手数料を搾取される契約を結ばされるかもしれません。スマホアプリで課金すると、難しい解約手続きをとらないと自動継続されてしまうことのファクタリングバージョンにならないように約款をチェックしてください。

ファクタリング契約の解除事項

契約期間中に重大な契約違反があった場合にはファクタリングの契約は解除されます。契約解除した場合、ファクタリングによって調達した資金は返還義務があります。

「重大な契約違反」が何を意味するのか約款で確認してください。それほど重大でないうっかりミスと故意の重大行為を同列視しているかもしれません。

どのようなケースが本当の「重大な契約違反」に該当するのか確認しておきましょう。

まとめ

約款の記載事項をうっかり見過ごしてしまうと、取り返しのつかない契約になってしまうかもしれません。ファクタリングは融資のように特別法で守られません。自助で不当な契約から身を守る必要があります。