買掛金支払いに有効なファクタリング
2024年1月17日
事業を推進していくためには、自社だけでなく、他企業との取引が必要になります。
たとえば商品を製造するためには材料を仕入れる必要があります。
その仕入れ代金は、買掛金という会社の債務となります。
買掛金の支払いは、企業における代表的、かつ重要な支出項目のひとつであるといえます。買掛金は決まった期日に支払わなければなりません。
しかし、経営はつねに「晴れ」であるとはかぎりません。
ときには売上が低迷したり、あてにしていた取引が中断されたりして、予定していた入金がないという月が訪れるかもしれません。
事業を健康に維持していくためには、たとえ十分な預金残高がない場合でも、買掛金の支払いは確実に済ませる必要があります。
つまり、資金を調達しなければならなくなるわけです。
こうしたときに、経営者として、どんな資金調達方法が有効なのかということに頭を悩ませたり、社外から調達した資金をどのように仕訳したらいいのか悩む経理担当者もいることと思います。
まず、こうした場合に有効な資金調達方法に、ファクタリングがあります。
そして、ファクタリングを利用した場合の仕訳は、決して難しいものではありません。
本記事では、買掛金の支払いを目的とする資金調達にファクタリングがなぜ有効なのか、そしてその場合の仕訳の入力方法について詳しく説明していきます。
買掛金の資金調達には、ファクタリングが有効
買掛金の支払いのために資金を調達する方法は、いくつかあります。
最もよく知られている方法としては、金融機関からの融資してもらうこと、というのがあげられます。
金融機関からの融資といえば、まずは審査に通らなければなりません。
この審査の対象となるのは、お金を借りる側、つまり御社の返済能力です。
申し込んだからといって必ずお金を貸してもらえるとはかぎりません。
もし審査担当者が、あなたの会社の決算書を見て、減益や赤字、はたまた大きな負債を抱えているといった状況を認めてしまったら、経営状況が悪化している企業と判断して、融資の審査を通してくれない可能性が高まります。
いつもひいきにしている銀行だからといって、追加融資となれば経営状況が厳しくチェックされるのは当たり前のことです。
マル経融資のような、日本政策金融公庫などの政府系の金融機関による融資もあります。
たしかに、そこでは経営が悪化している企業向けの融資も扱っています。
しかし、ここでももちろん審査がないわけではありません。
つまり、すべての企業が融資を受けられるというわけではありません。
また、融資を甘くみていると、あとで痛い目にあいます。
当たり前のことですが、融資を受けたら、貸してもらったお金を月々返済していかなければなりません。
しかも利子がつくのですから、借りるお金の額が大きくなるほど、返済していく期間も長くなり、その分の利子もどんどんかさんでいきます。
経営も圧迫することになりますし、経理担当者にとっては、返済に関わる仕訳を月々入力する手間が増えてしまうことになります。
この点はデメリットです。
銀行融資以外の資金調達手段としてファクタリングを利用するのが有効になります。
ファクタリングというのは、自社が保有する売掛金をファクタリング会社に売却することによって、資金調達をする方法です。
やはり審査がありますが、これは会社の経営状態を審査するわけではなく、売掛金そのものについての審査です。
確実に支払われるとわかっている売掛金があれば、会社の経営状態に関わらず審査に通るというのが、ファクタリングの大きな特徴です。
もうひとつのメリットは、ファクタリングというのは借金ではないということです。
ファクタリングによって資金調達を行っても、そのお金をファクタリング会社に返済する必要はありません。
このため、ファクタリング取引の仕訳は、ファクタリングを利用した際のみ記入すればよいことになります。
これは経理担当者にとっても大きなメリットといえるでしょう。
買掛金の支払い期日を延ばすことは難しい
この記事をご覧の方は、まさに今、資金繰りに苦労しているという経営者の方もいらっしゃると思います。
支払い期日が迫っている買掛金がある。でも、手元には十分な現金預金がない。
できれば、お金ができるまで買掛金の支払いを延ばしたい。
そんな本音をもっている方もいらっしゃるかもしれません。
買掛金の支払いを待ってもらえるなら、それがいちばん良いように思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。
実際にはなかなかそう簡単なこととは言いきれません。
そもそも、買掛金の支払日は、企業間の約束ごとで決められたものです。
「支払いが苦しいので、買掛金の支払いを待ってほしい」
恥を忍んで、誠意をもってそんな説明をすれば、もしかすると、なかには期日の延伸を受け入れてくれる企業もあるかもしれません。
しかし、そんな取引先がかりにあったとしても、あなたの会社の信用はどのようになるでしょうか。
支払いが苦しい会社=経営がうまくいっていない=じきに倒産するかもしれない会社、というレッテルを貼られて、次回からの取引に大きな悪影響を及ぼす可能性もあります。
「いや大丈夫、買掛先の会社はこちらの会社よりも小規模だから、頼めばいやとは言えないはずだ。今後も取引してもらいたいのは、お互い様だ」
そんなふうに考えるのも、非常に問題があります。
下請け先から納品を受けてから60日以内に代金を全額支払わないと、下請法に抵触するおそれがあるのです。
現実的には、買掛金の支払い期日をむやみに延ばしてしまうことは、あなたの会社の信頼を大きく損なうことにつながるのです。
だから、指定された期日までに資金を調達し、買掛金をきちんと支払うことを考えたほうが建設的であり、現実的であると言えるでしょう。
仕訳や勘定科目はどうなる?ファクタリングを利用した場合
それでは、ファクタリングを使って資金を調達した場合、具体的に、どのような勘定科目を使って仕訳を入力すればいいのか、ということについて説明しましょう。
ファクタリングならではの勘定科目としては、以下のものがあげられます。
●未収入金
●売掛債権譲渡損
未収入金
未収入金は、ファクタリング会社と売掛金の譲渡契約を結んだ際に使用するものです。
この時点では、近日中に売掛金が現金化することは決まっていますが、まだ入金されていないという状態です。
そのため、契約した当日には、借方に「未収入金」、貸方に「売掛金」の勘定科目を使うことになります。
売掛債権譲渡損
売掛債権譲渡損は、ファクタリング会社から買取額が入金された際に使用するものです。
ファクタリング会社は、契約した際に定めた手数料額を差し引いた後、御社に入金してきます。
そこで、その手数料額を「売掛債権譲渡損」の科目で借方に計上するわけです。
ちなみに、実際に入金された金額は、「現金」や「普通預金」といった勘定科目で、借方に計上していきます。
またこの際、貸方には勘定科目「未収入金」を用います。
ファクタリングの具体的な仕訳の記入例
それでは、ファクタリングを利用した場合の仕訳をどのように記入すればよいか、実際に確認していきます。
例として、ここでは100万円の売上が2023年6月30日に計上されている売掛金を取り上げます。
まず売上が発生した時点で、記載されていることと思います。
その後、ファクタリングで資金調達することに決め、2023年7月11日に売掛金をファクタリング会社へ譲渡することになったとします。
この「2023年7月11日」は譲渡の契約を結んだ日付です。
ファクタリングによる買取額は、契約を結んだ当日、つまり即日に入金される場合もあります。
ですが、ここでは話をわかりやすくするために、契約の翌日に入金されたというケースとして考えてみます。
この場合の実際の仕訳は、使用する勘定科目は、先ほど説明したように「未収入金」です。
なおファクタリングの手数料は、仮に5%としています。
手数料が差し引かれ、実際に受け取ることになる金額は、売掛金の95%にあたる95万円となります。
差額はファクタリング会社の手数料として差し引かれますから、先ほど説明したように、この金額を「売掛債権譲渡損」という勘定科目を用いて、借方に記載します。
この現金から、買掛金の支払いを行う仕訳は、通常の経理処理になります。