ビットコインを保有して法人化するメリットやデメリットを解説

2024年10月23日

近年、仮想通貨投資が大きな注目を集める中、多くの投資家が税金問題に頭を悩ませています。特に、利益が出た場合の税負担を軽減するために、法人化による節税メリットに関心が高まっています。しかし、法人化にはメリットだけでなく、デメリットもあることを理解しておく必要があります。

本記事では、個人の仮想通貨投資に関する税制の概要を解説した上で、法人化のメリットとデメリットを詳しく比較します。さらに、法人化による節税効果の試算例を示し、法人化の手順と注意点についても触れます。本記事を通じて、読者の皆様が自身の投資スタイルや規模に合わせた賢明な選択を行えるようサポートします。

個人の仮想通貨投資に関する税制の概要

個人が仮想通貨投資で得た利益は、原則として「雑所得」として扱われます。雑所得の税率は、所得金額に応じて5%から45%の7段階に分かれており、他の所得と合算して総合課税の対象となります。さらに、住民税がおおよそ10%程度かかることとなります。結果として仮想通貨の税率は最大税率55%となっています。

仮想通貨投資で損失が出た場合、雑所得ないでの損益通算は可能ですが、給与所得など他の所得との損益通算はできません。また、損失の繰越控除は認められていません。そのために、仮想通貨の実質的な税率はさらに高いと言えるでしょう。

利益が出た場合は、確定申告が必要です。仮想通貨の売却価格から取得価格と経費を差し引いた金額を雑所得として申告します。取引所から発行される取引報告書などを活用し、正確な申告を心がけましょう。

法人化のメリット

仮想通貨投資で得た利益に対する税負担を軽減するために、法人化を検討する投資家が増えています。法人化には以下のようなメリットがあります。

①法人税率

まず、法人税率が個人の税率よりも低いことが挙げられます。法人税率は、年間所得に応じて15%から23.2%の2段階に分かれています。実際には法人税のみならず、法人住民税や法人事業税等がかかりますが、全体の法人税等の税率はおおよそ25~35%程度でしょう。

個人の最高税率が55%であることを考えると、法人化による節税効果は大きいと言えるでしょう。

②経費の範囲

法人化することで、経費の範囲が広がります。仮想通貨投資に関連する設備投資や人件費、交際費などの事業で活用している費用を経費として計上できるため、節税効果が高まります。

個人の場合は、経費の範囲が現医的となっています。具体的には取引手数料や仮想通貨投資のために利用したPCの代金、電気代などです。仮想通貨投資に直接関連するものだけが計上できることとなっていますが、法人の場合は、法人の事業に関するものが経費として計上可能になっているために、相対的に経費の範囲が広まることとなります。

③損失の繰り越し控除

法人化すれば、損失の繰越控除が可能になります。事業年度内で損失が出た場合、その損失を翌年度以降に繰り越して、将来の利益と相殺することができます。これにより、中長期的な節税効果が期待できます。

法人の場合は、損失繰越が10年間認められているために、市況によっては赤字になりやすい仮想通貨投資と損失繰越の相性は非常に良いことでしょう。

④その他のメリット

その他のメリットとして、福利厚生の充実や信用力の向上などが挙げられます。法人化により、従業員への福利厚生を拡充したり、取引先からの信頼を高めたりすることが可能です。

法人化のデメリット

法人化による節税メリットは大きい一方で、デメリットについても理解しておく必要があります。

①設立・維持コストがかかる

まず、法人の設立および維持にかかるコストが高いことが挙げられます。法人設立には登記費用や印鑑証明書の取得費用などがかかります。おおよそですが、株式会社だと30万円、合同会社だと10万円程度の設立コストがかかります。

また、毎年の税務申告や決算報告にも一定のコストが発生し、税理士等への報酬もかかることとなります。オフィスの賃料、電話回線などの代金もかかってくるでしょう。

②時価評価の必要性

また、法人で仮想通貨を運用している場合、期末時点での時価評価が必要となります。

この時価評価は含み損益が法人税の対象となります。そのため、例えばビットコインを保有しているだけでも含み益が生じていれば法人税が発生してしまいます。

結果として、長期的に仮想通貨を保有する場合、含み損益が法人の利益もしくは損失としてカウントされるために、毎年の法人税が大きく増減する可能性があります。

③事務処理の煩雑化

さらに、事務処理が煩雑になることも留意点です。法人化により、経理業務や税務処理が複雑化します。取引の記録や帳簿の管理、税務申告など、個人事業主の場合に比べて手間が増えることは避けられません。

④社会保険の負担

また、法人化により、社会保険の負担が増加します。従業員を雇用する場合、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料の事業主負担分が発生します。この負担は、法人の収益性に影響を与える可能性があります。

⑤税務調査の可能性

さらに、法人化すると、税務調査を受ける可能性が高くなります。個人事業主と比べて、法人は税務調査の対象になりやすい傾向があります。適切な会計処理と税務申告を行うことが重要ですが、税務調査への備えも必要です。

法人化の手順と注意点

法人化を進める際は、適切な手順を踏むことが重要です。まず、法人の種類を選択します。株式会社や合同会社などの選択肢がありますが、それぞれの特徴を理解した上で、自身の事業内容に合ったものを選びましょう。

次に、定款の作成や設立登記など、法人設立の手続きを進めます。必要書類の準備や登記申請には専門的な知識が求められるため、税理士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

法人化後は、適切な会計処理と税務申告が求められます。仮想通貨取引の記録を正確に管理し、税務申告に必要な書類を整えておく必要があります。会計ソフトの活用や、税理士への依頼など、効率的な方法を検討しましょう。

また、法人化後も、仮想通貨投資のリスク管理を怠らないことが重要です。価格変動リスクや流動性リスクに加え、法改正などの制度変更にも注意が必要です。

まとめ

仮想通貨投資で得た利益に対する税負担を軽減するために、法人化を検討する投資家が増えています。法人化には、法人税率の低さや経費の範囲の広さ、損失の繰越控除などのメリットがある一方で、設立・維持コストの高さや事務処理の煩雑化、社会保険の負担増加などのデメリットもあります。

個人と法人の税制の違いを正しく理解し、自身の投資スタイルや規模に合わせて、適切な選択を行うことが重要です。法人化による節税効果は、投資規模や収益性によって異なるため、シミュレーションを行い、慎重に判断することをおすすめします。