ファクタリングにおける「エビデンスなし」とは?契約リスクと正しい対応を徹底解説
2025年10月3日
資金繰りを改善する手段として注目されている「ファクタリング」。
銀行融資のように担保や保証人が不要で、売掛金を現金化できる便利な資金調達方法として、多くの中小企業や個人事業主が利用しています。
しかし近年、「エビデンスなしのファクタリング」という言葉が問題視されるケースが増えています。
一見すると手軽に利用できそうに見えますが、「エビデンスなし」の取引は、法的にも経営的にも大きなリスクを伴います。
本記事では、ファクタリングにおける「エビデンスなし」とは何か、その危険性、そして正しい対応策までをわかりやすく解説します。
■ ファクタリングの基本構造をおさらい
まず、「エビデンスなし」がなぜ問題になるのかを理解するために、ファクタリングの基本的な仕組みを確認しておきましょう。
ファクタリングとは、企業が保有する「売掛金(取引先からまだ受け取っていない代金)」をファクタリング会社に売却し、早期に現金化する仕組みです。
本来、取引先からの入金を待つ必要がある売掛金を、ファクタリング会社が一定の手数料を差し引いて買い取ることで、資金を即時に確保できます。
ファクタリングには大きく分けて「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。
・2社間ファクタリング:ファクタリング会社と利用者の2社間で契約。取引先には通知されません。
・3社間ファクタリング:取引先にも通知され、債権譲渡を承認したうえで契約します。
2社間は手軽ですが、売掛金の存在を裏付ける「エビデンス」がより重要視されます。
■ 「エビデンスなし」とは何を意味するのか
ファクタリングにおける「エビデンス」とは、売掛金が実際に存在していることを証明する書類を指します。
具体的には次のような書類です。
・請求書・納品書・契約書・発注書
・取引先とのメール・メッセージ履歴
・取引先の入金実績が確認できる通帳明細
・受発注システムや会計ソフトの記録
これらは、ファクタリング会社が「その売掛債権が実在し、虚偽ではないか」を判断するための根拠資料です。
したがって「エビデンスなし」とは、これらの取引を証明する資料がない、または提出できない状態を意味します。
たとえば、次のようなケースが該当します。
・納品や請求が口頭で行われており、書面の記録がない
・取引先との関係を証明する契約書が存在しない
・売上計上はしているが、証憑類を保存していない
・実際には取引が行われていない「架空債権」である
こうした状況では、ファクタリング会社は債権の実在性を確認できず、契約リスクが非常に高くなります。
■ エビデンスなしのファクタリングが危険な理由
「エビデンスなしでも契約可能」とうたう業者も存在しますが、これは極めて危険です。
なぜなら、債権の実在性が確認できない取引は、法律上はファクタリングではなく、実質的に“貸金”とみなされる可能性があるためです。
以下に、エビデンスなしで契約する際の主なリスクを整理します。
1. 架空債権による違法契約のリスク
債権が実際に存在しないのにファクタリング契約を結んだ場合、法的には「金銭の貸付」と判断されます。
この場合、貸金業登録を持たない業者であれば、貸金業法違反に該当し、刑事罰の対象になることもあります。
利用者側も「架空取引に関与した」として責任を問われる可能性があります。
2. ファクタリング会社の倒産・トラブルリスク
エビデンスを確認せずに契約する業者は、適切な審査体制を持たない悪質業者であることが多いです。
そのため、入金遅延・高額な手数料・契約内容の不透明化などのトラブルが頻発します。
場合によっては、売掛金を譲渡したにもかかわらず入金されないといった詐欺被害も起こりえます。
3. 税務・会計上の問題
取引証拠のない売掛金は、会計上も不正計上とみなされるおそれがあります。
税務調査の際に架空債権と判断されれば、追徴課税や修正申告が求められるケースもあります。
4. 信用情報への悪影響
悪質な「エビデンスなしファクタリング業者」を利用すると、将来的に他社からのファクタリングや融資が受けにくくなる可能性があります。
金融機関は契約履歴を重視するため、一度でも不透明な資金取引が確認されると信用が大きく損なわれます。
■ 「エビデンスなしでも契約可能」と宣伝する業者の実態
インターネット広告などで「エビデンス不要」「書類なし」「審査なしですぐ入金」などと宣伝するファクタリング業者を見かけることがあります。
しかし、その多くは正規のファクタリング会社ではなく、実態はヤミ金に近い業者です。
こうした業者は「売掛金の買取」と称して高額な手数料を請求し、実際には短期貸付を行っています。
手数料率が50〜80%に達することも珍しくなく、実質的には違法金利です。
また、契約書を交わさずLINEやメールだけで取引するなど、法的保護を受けられない状態で契約を結ばせるケースもあります。
「すぐ入金」「書類なし」「誰でもOK」といった誘い文句には、必ず裏があります。
正規のファクタリング会社であれば、必ず売掛金の裏付け資料を確認し、取引の正当性を重視します。
■ 正しいファクタリング会社を選ぶためのポイント
ファクタリングは本来、健全な資金調達方法です。
ただし、信頼できる業者を選ばなければ、そのメリットを享受できません。
以下のポイントを押さえて、正しい業者選びを行いましょう。
・契約前にエビデンスを求める業者を選ぶ
売掛金の実在性を確認するために請求書や納品書を要求する会社は、審査がしっかりしている証拠です。
「書類不要」とうたう業者は避けるべきです。
・契約内容が明確であるかを確認する
買取金額・手数料・入金日・債権譲渡登記の有無などが明確に書面で提示されているかをチェックしましょう。
曖昧な説明しかされない場合は危険信号です。
・実績と口コミを確認する
金融庁登録の有無、過去の取引実績、利用者の評判を確認しましょう。
ウェブサイトが簡素で住所が記載されていない場合なども注意が必要です。
・複数社に見積もりを取る
1社だけで即決せず、必ず複数のファクタリング会社から見積もりを取り、手数料や対応を比較します。
信頼できる会社は、急がせず丁寧に説明をしてくれます。
■ エビデンスがない場合の正しい対応方法
実際のところ、中小企業や個人事業主の中には、取引書類を完備していないケースも少なくありません。
では、エビデンスが不十分な場合、どうすればよいのでしょうか。
・可能な範囲で証拠を整備する
取引先とのメールやメッセージ履歴、請求書データ、通帳の入出金記録などを整理しておきましょう。
完全ではなくても、実際に取引が行われていることが分かる資料があれば審査に通る場合があります。
・会計ソフトを導入して記録を残す
クラウド会計ソフトや請求書発行サービスを利用すれば、データとして取引履歴が残ります。
これが将来的にファクタリングのエビデンスとして利用できます。
・3社間ファクタリングを検討する
取引先の承諾が得られる場合は、3社間ファクタリングを利用することで信頼性を高められます。
取引先の確認がある分、エビデンスが不十分でも契約が成立しやすくなります。
・ファクタリング以外の資金調達手段を検討する
どうしてもエビデンスが用意できない場合は、ビジネスローンやクラウドファンディングなど、他の資金調達方法を検討するのも一案です。
■ まとめ:エビデンスなしのファクタリングは「危険信号」
「エビデンスなし」で契約を進めようとするファクタリングは、ほぼ確実にリスクの高い取引です。
正規の業者であれば、必ず売掛金の実在を確認し、書類をもとに契約を結びます。
一方、エビデンスを要求しない業者は、法的な裏付けを無視している可能性があり、
結果的に高額手数料・違法契約・詐欺被害といった深刻なトラブルに発展しかねません。
ファクタリングを安全に利用するためには、
「取引を証明できる資料を日頃から整備しておくこと」
そして「エビデンスなしでも契約できる」という甘い言葉に惑わされないことが何より重要です。
正しい理解と準備をもって活用すれば、ファクタリングは資金繰り改善の強力な味方となります。
しかし、手続きを軽視した瞬間、それは一転して危険な落とし穴にもなり得るのです。
