直接金融とは何?間接金融との違いやメリットを解説

2023年8月21日

「直接金融」という言葉を知っていますか?中小企業においては銀行からの借入など「間接金融」が、資金調達の中心となっているケースが多いでしょう。しかし、市場から資金を調達する「直接金融」を取り入れれば、資金調達の自由度は大きく高まることになります。

この記事では、直接金融と間接金融の違いやメリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。

直接金融とは?

直接金融とは資金を提供する投資家と、その資金を必要とする企業などが直接結びつく金融システムのことです。投資家は企業などに対して、投資や貸付などを直接行うことになります。

<直接金融の例>
直接金融の例として挙げられるのは株式や債券だ。株式を購入すれば、投資家はその企業に対して出資することになり、配当が得られます。債券を購入すれば、投資家はその企業や国などに対して貸付をすることになり、利息が得られます。

直接金融において投資家と、企業や国とを結びつける仲介役を果たすのは証券会社です。株式や債券の購入者を企業自身が探すのは簡単ではないために、証券会社がそれら株式・債券を仲介して販売する。仲介の見返りとして証券会社は手数料を受け取るわけです。

間接金融とは?

間接金融とは資金提供する投資家と、その資金を必要とする企業などとのあいだに金融機関が入る金融システムのことです。金融機関が集めたお金は、その金融機関から企業に対して提供されます。この、投資家と企業などのあいだに金融機関が入るか否かが、直接金融と間接金融の違いとなります。

<間接金融の例>
間接金融の例として挙げられるのは、銀行や信用金庫などの預金です。預金者から集めたお金を銀行は、自らの判断で個人や会社などに貸し出します。貸し出した相手からは利息が得られ、その一部は預金者に支払われます。貸し出した相手から得られた利息と、預金者に支払った利息の差額(利ざや)が銀行の利益となるのです。

直接金融・間接金融のメリット・デメリット

直接金融・間接金融のメリット・デメリットを見ていきましょう。メリット・デメリットは、出資者・預金者および資金調達する企業の双方で異なるものとしてあります。

出資者・預金者にとってのメリット・デメリット

出資者・預金者にとっての直接金融・間接金融のメリット・デメリットは以下のとおりです。

直接金融のメリット

直接金融の出資者にとってのメリットは、出資によって得られるリターンが、間接金融と比較してはるかに大きいことがあげられます。超低金利時代の近年は、銀行などの間接金融への預金では、リターンはほとんど見込めません。それに対して直接金融の投資なら、元本を何倍にも増やすことも往々にしてあり得るわけです。

直接金融のデメリット

直接金融の出資者にとってのデメリットは、メリットとは裏腹に、元本割れのリスクがあることです。直接金融は自己責任であり、投資にあたってのリスクは投資家自身が負わなければなりません。したがって、100万円の元本が数ヵ月後には50万円になってしまうことも、元本が何倍にもなることと同様に往々にしてあり得るわけです。

間接金融のメリット

間接金融の預金者にとってのメリットは、直接金融とは異なり元本割れリスクが低いことです。銀行がお金を貸した企業が倒産し、そのお金を返せなくなるという事態は、もちろんしばしば発生します。しかし、その場合の損失はあくまでも銀行が負うのであり、預金者の預金は原則として、銀行の損失には無関係に守られます。この元本割れリスクが低いことは、預金者にとっての間接金融の大きなメリットだといえるでしょう。

間接金融のデメリット

間接金融の預金者にとってのデメリットは、直接金融と比較してリターンが低いことだといえます。超低金利時代の近年、銀行預金の金利は定期預金でも、高いものでも0.1%~0.2%程度です。これだけ金利が低くなると「銀行預金でお金を増やす」ことは全く考えられないことになります。

資金調達する企業にとってのメリット・デメリット

資金調達する企業にとっての、直接金融・間接金融のメリット・デメリットは以下のとおりです。

直接金融のメリット

直接金融の企業にとってのメリットは、第一に資金調達コストが低いことがあげられます。直接金融ではあいだに銀行を挟みません。出資者に直接借りることになるため、銀行への手数料支払いが不要となるからです。信用力が高い企業なら、直接金融により低コストでの資金調達が可能になります。

また、金融機関からの融資が難しいケースでも、将来性や安定性が見込めると投資家が独自に判断すれば資金が得られる場合があることも、直接金融のメリットといえるでしょう。

直接金融のデメリット

直接金融の企業にとってのデメリットとなるのは、株主の存在です。出資者である株主に対しては、配当の支払いが必要になります。また、株主は持ち株比率に応じた発言権を持つために、経営に対する一定の関与もあります。場合によっては敵対的買収などのリスクもあることは、直接金融の大きなデメリットだといえるでしょう。

間接金融のメリット

間接金融の企業にとってのメリットは、一定の審査基準を満たせば誰でも事業資金を借りられることだといえます。投資家からの出資が期待できない場合でも、資金調達が可能となるわけです。特に、スタートして間もないため株主がまだいない中小企業などの場合は、公的融資などによる方法以外に、資金調達法が現実的に存在しないことも多いでしょう。

また、銀行などから事業資金を借りた場合は、経営についてのアドバイスを銀行から受けられます。このことも、間接金融のメリットといえるでしょう。

間接金融のデメリット

間接金融の企業にとってのデメリットは、銀行への手数料である利子の支払いが必要なため、資金調達コストが高いことです。ただし、利子は企業の信用力によって変わるため、間接金融でも信用力を高めることで、この資金調達コストを抑えることは可能となります。

個人金融分野で日本の直接金融へのシフトが遅れている背景

個人金融分野で日本の直接金融へのシフトが大幅に遅れている背景として「投資教育の不足」があげられるといわれています。

直接金融が間接金融とならぶ金融の主役に台頭してきたのは、米国が先頭に立って各国を牽引した金融自由化にくわえ、東西の冷戦終結により金融の制度やルールが各国で統一化されたことが大きいです。さらにくわえて、コンピュータや通信技術が発達することにより金融取引が自動化され、国境を越えた資金の移動が容易になったことも大きな要因となっています。

日本においては、元本割れリスクのある投資を「怖いもの」と考える風潮がまだまだあります。投資にはもちろんリスクがあります。しかし、リスクについての理解や、経済や市場についての知識を深めることにより、リスクをコントロールしながら行うのが投資です。したがって、投資教育をいかに推進していくかは、これからの日本の大きな課題となっていきます。

日本政府も、「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げて経済政策を進めています。経済の活性化には家計資産の市場への呼び込みが欠かせません。立ち遅れている個人金融分野の直接金融へのシフトも、これから着実に進んでいくことは間違いないと見込めるでしょう。

直接金融へのシフトが時代のトレンド

前述のとおり中小企業などの場合は、銀行などからの借入による間接金融が、資金調達の中心となっているケースが多いでしょう。しかし、直接金融へのシフトは時代のトレンドといえるものです。実際に、「貯蓄から投資へ」の経済政策、およびネットやパソコン、スマートフォンなどの普及により、投資を行う個人は増えています。

ただし、間接金融の役割が終わったわけでは決してありません。金融機関でも、融資判断を一律の基準のみで行わず、技術力や将来性も加味して行い中小企業を支援しようという「貸す工夫」の強化が進められています。これからは、直接金融と間接金融とを、それぞれのメリットを活かしながら使い分けていく時代になっていくといえるでしょう。

直接金融をバランスよく取り入れよう

直接金融と間接金融には、資金提供をする投資者・預金者にとっても、また資金を受け入れる企業にとっても、それぞれにメリットとデメリットがあります。日本においては大きく立ち遅れている個人金融分野の直接金融へのシフトも、これからは進んでいくと見込まれます。中小企業においても直接金融を、そのメリットを活かしながら取り入れていきましょう。