ファクタリングの仕訳方法について解説

2024年3月8日

ファクタリングを資金調達の方法として活用する企業が増えてきましたが、気になるのは実際に利用したときの仕訳の起こし方や会計処理でしょう。
どの勘定科目を使い、どのような仕訳で処理すればよいのかわからず、ファクタリングの利用を迷うケースもあるかもしれません。
そこで、ファクタリングを利用したときの仕訳の起こし方や、用いる勘定科目と会計処理の方法について徹底解説していきます。

ファクタリングのタイプで異なる2つの会計処理

ファクタリングでは必ず「売掛債権」が必要となります。
ただ、この売掛債権を現金化するのか、それとも未回収となったときの保証をしてもらうのかによって次の2つに種類がわかれます。
●買取型ファクタリング
●保証型ファクタリング
「買取型ファクタリング」とは、保有する売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、手数料分を差し引いた残りを現金として受け取るサービスです。
さらに利用者とファクタリング会社のみで契約する「2社間ファクタリング」と、売掛先にも協力してもうら「3社間ファクタリング」に分かれますが、いずれにしても売掛債権がファクタリング会社に会計上移転されたか判別しながら会計処理を行わなければなりません。
「保証型ファクタリング」とは、保有する売掛債権が万一回収できなくなった場合、保証限度額内で保証してもらうサービスです。
損害保険の性質と似ているため、会計処理の流れも損害保険に即した内容となります。
ファクタリングの会計処理は、買取型と保証型のどちらを利用したかによって異なるため注意してください。

保証型ファクタリングで契約を結んだ場合の仕訳

保証型ファクタリングでは、ファクタリング契約締結時点で仕訳を立てることはなく、保証条件に該当した場合に起こします。
そのため次の仕訳の立て方を理解しておくようにしましょう。
売掛債権が回収不能と確定した場合の仕訳
詳しく説明していきます。

売掛債権が回収不能と確定した場合の仕訳

保証型ファクタリングで売掛債権100万円が回収不能となり、保証として100万円を受け取ったときには、まず売掛債権が回収できず貸し倒れになった仕訳処理を行います。
借  方:貸倒損失 100万円
貸  方:売掛債権 100万円
次にファクタリング契約により保証として受け取った金額について、「雑収入」の勘定科目で仕訳を立てます。
借  方:現金・預金 100万円
貸  方:雑収入 100万円

買取型ファクタリングの種類と仕訳の起こし方の違い

買取型ファクタリングでは、売掛債権の売買によりすぐに資金を調達できるため、仕入れ代金や固定費の支払いに悩む企業などが活用しやすいといえます。
しかし比較的に新しい資金調達の方法であることと、2社間ファクタリングと3社間ファクタリングなど種類もあるため、仕訳の立て方や会計処理がわからない経理担当者も少なくありません。
どちらの場合でも、売掛債権がファクタリング会社に会計上移転されたか判別した上で会計処理を行うことが必要ですが、2社間ファクタリングでは3社間にはない売掛債権回収を代行する手続も発生します。
そのため3社間ファクタリングよりも仕訳を起こす数が多く、会計処理もより注意が必要となると認識しておいてください。

3社間ファクタリング利用時の仕訳

3社間ファクタリングを利用した場合でも、2社間ファクタリングの仕訳の立て方と大きな違いはありません。
ただ、3社間ファクタリングでは売掛先からファクタリング会社に直接売掛金が振り込まれるため、次の2つの仕訳は必要ありません。
●売掛先から売掛債権が入金されたときの仕訳
●ファクタリング会社に回収した売掛債権を支払ったときの仕訳
3社間ファクタリングでは次の2つの仕訳で処理することになります。
①ファクタリング契約を締結した場合の仕訳
②買取代金がファクタリング会社から入金された場合の仕訳
2社間ファクタリングとの勘定科目の違いに注意しながら確認していきましょう。

ファクタリング契約を締結した場合の仕訳

売掛債権を譲渡する契約を結んだときは、2社間ファクタリングと同じようにファクタリング会社から代金が入金されるまで「未収入金」で処理します。
借  方:未収入金 100万円
貸  方:売掛金 100万円

買取代金がファクタリング会社から入金された場合の仕訳

ファクタリング契約後、売掛金を売った代金がファクタリング会社から入金されたときも、2社間ファクタリングと同じく手数料を「売掛債権売却損」で計上しましょう。
100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡したときの手数料が5万円だった場合には、次のような仕訳となります。
借  方:現金・預金  95万円/売掛債権売却損  5万円
貸  方:未収入金  100万円
なお、ファクタリング契約締結と入金が同時だった場合の仕訳は、2社間ファクタリングのときと同じ立て方です。

2社間ファクタリング利用時の仕訳

ファクタリング利用の有無に関係なく、商品やサービスを販売したことにより「売上」が発生すれば、通常の会計処理と同じく請求書を起こした段階で次の仕訳を立てます。
借  方:売掛金 100万円
貸  方:売上 100万円
その後、売掛金を現金化するために2社間ファクタリングを利用したときには、主に次4つの仕訳で会計処理を行うことが必要です。
①ファクタリング契約を締結した場合の仕訳
②買取代金がファクタリング会社から入金された場合の仕訳
③売掛先から売掛債権が入金された場合の仕訳
④ファクタリング会社に回収した売掛債権を支払った場合の仕訳
それぞれの仕訳について説明していきます。

ファクタリング契約を締結した場合の仕訳

売掛債権を譲渡する契約を結んだときには売掛金を消すことになりますが、相手の勘定科目は「未収入金」を使います。
「未収入金」とは資産を売却した代金が後で入金されるときに用いる勘定科目です。
売掛金はファクタリング会社に譲渡したものの、まだその代金を受け取っていない契約締結段階では、入金されるまで未収入金で処理しましょう。
借  方:未収入金 100万円
貸  方:売掛金 100万円

買取代金がファクタリング会社から入金された場合の仕訳

ファクタリング契約を締結した後にファクタリング会社から代金を受け取りますが、支払う手数料は「売掛債権売却損」の勘定科目で処理します
100万円の売掛金をファクタリング会社に譲渡したときの手数料が5万円だった場合には、次のような仕訳となります。
借  方:現金・預金  95万円/売掛債権売却損  5万円
貸  方:未収入金  100万円

ファクタリング契約締結と入金が同時に行われた場合の仕訳

2社間ファクタリングの場合、売掛先に売掛債権を譲渡することを通知したり承認を得たりという手続はありません。
そのため契約締結後に即日、その代金がファクタリング会社から入金されることもありますが、その場合には「ファクタリング契約を締結した場合の仕訳」と「買取代金がファクタリング会社から入金された場合の仕訳」をまとめて処理できます。
「未収入金」で一旦計上する必要がなくなるため、「売掛金」に対し「普通預金」と「売掛債権売却損」を相手科目として処理します。
借  方:普通預金  95万円/売掛債権売却損  5万円
貸  方:売掛金 100万円

売掛先から売掛債権が入金された場合の仕訳

2社間ファクタリングでは、売掛先にはファクタリングを利用する事実は伝えずに売掛債権を現金化します。
そのため、本来の売掛先からの入金期日に売掛金を回収するのは利用者です。
利用者はファクタリング会社の代行として売掛金を回収することになるため、売掛先から売掛金の入金があったときには「預り金」の勘定科目を使い次の仕訳を起こします。
借  方:現金・預金 100万円
貸  方:預り金 100万円

ファクタリング会社に回収した売掛債権を支払った場合の仕訳

売掛先から売掛金が入金されたお金はファクタリング会社から預かったお金のため、すみやかに支払うことが必要となりますが、そのときの仕訳は以下のとおりです。
借  方:預り金 100万円
貸  方:現金・預金 100万円

ファクタリング契約における仕訳の注意

ファクタリングを初めて資金調達で活用したときには、どのような仕訳を起こせばよいか迷ってしまうものですが、ファクタリング契約後の仕訳では次の3つに注意するようにしてください。
①手数料の勘定科目は「売掛債権売却損」
②ファクタリングで消費税はかからない
③決算期末をまたぐ際の売上は課税対象
それぞれ何に注意すればよいか説明していきます。

1.手数料の勘定科目は「売掛債権売却損」

ファクタリングの取引の流れは、たとえば商品券などを金券ショップに売ってお金に換える取引に似ています。
1000円の商品券を金券ショップが900円で買い取るときには10%の手数料が差し引かれますが、本来の金額よりも100円損をすることになります。
売掛債権の売却でも、ファクタリング会社に手数料を支払うことになりますが、損失分は「売掛債権売却損」で処理しましょう。

2.ファクタリングで消費税はかからない

ファクタリングによる資金調達で、売掛金をファクタリング会社に売却することは、「金銭債権」などを譲渡することを意味します。

そのため消費税は課税されない非課税取引に含まれるため、もしもファクタリング会社から請求された手数料に消費税が上乗せされているときには、悪徳業者と判断し取引を注意しましょう。

ただし、債権譲渡登記が必要な契約で司法書士に報酬を支払う場合には、報酬に対する消費税は発生します。

3.決算期末をまたぐ際の売上は課税対象

ファクタリング契約を結んだタイミングから、手元にその代金が入金されるまで決算期末をまたぐときには、未入金の場合でもその売上には税金が課税されます。
そのため売上が現金化されるよりも前に、売上を基準として計算した法人税や消費税を納めることが必要です。

まとめ

ファクタリングは融資を受けて資金調達するわけでないため、仕訳の起こし方や会計処理に悩むこともめずらしくありません。
通常の仕訳や会計処理と異なり、使ったことのない勘定科目なども出てくる場合があります。
ただ、事前に仕訳の立て方や用いる勘定科目を知っておけば迷うことはなくなるため、安心してファクタリングで資金調達するためにも会計処理の方法を正しく理解しておきましょう。