事業承継補助金は中小企業だけでなく、個人事業主も補助金を受けられる?について解説
2024年9月27日
近年、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症などの影響で、廃業の危機にさらされている企業が増えています。
一方、M&Aなどによって事業承継を行い、事業を成長させている企業が存在するのも事実です。
「事業承継・引継ぎ補助金」はこのような事業承継を応援し、国の経済発展を促進するための制度です。補助金を受けられるのは中小企業だけでなく、個人事業主も含まれます。
経済産業省は、事業承継・引継ぎ補助金制度を2024年も継続すると発表しています。事業承継やM&A、グループ化後の設備投資・販路開拓や、M&A時の専門家活用費用などを支援する方針です。
本記事では、2022年の内容をもとに事業承継・引継ぎ補助金について概要や要件などを解説します。
過去の事例では交付決定率が高いうえ、人件費も対象経費になるため、事業承継を進めるにあたって把握しておきたい補助金制度ですので、ぜひご覧ください。
M&Aに活用できる「事業承継・引継ぎ補助金」とは?
事業承継・引継ぎ補助金は、M&Aや事業承継などに活用できる国の補助金制度です。
M&Aにかかる費用や、引き継いだ事業をさらに発展させるための費用も制度の対象としています。
補助の対象となる経費は、次の要件を全て満たす必要があります。
・補助対象事業の遂行に必要な経費であることが明確にわかる
・補助対象事業期間内に契約・発注から支払いまで行っている
・事業期間終了後に提出する書類によって金額・支払いの有無が確認できる
事業承継・引継ぎ補助金制度の対象は、国内の中小企業や小規模事業者です。
個人事業主の場合、補助金制度の利用には青色申告の申請が必要です。また、補助金の種類によっても申請要件が異なるため、利用したい制度の詳細をしっかり確認しておきましょう。
補助対象外となるのは、一般社団法人、社会福祉法人、医療法人などの法人格です。ただし、次に解説する事業承継・引継ぎ補助金の種類のうち「経営革新事業」では、NPO法人のみ条件を満たせば対象となります。
事業承継・引継ぎ補助金の種類
事業承継・引継ぎ補助金は、3種類に分かれています。
3つの補助金について、詳しく解説します。
経営革新事業
経営革新事業とは、事業承継やM&Aをきっかけとして設備投資・販路開拓などにチャレンジするケースです。経営革新事業では、例えば次の経費が補助対象とされています。
・設備費
・原材料費
・店舗などの借入費
・外注費 など
補助上限額は600万円です。ただし、補助対象事業期間に一定幅での賃上げを行った場合、上限額が800万円になります。補助率は基本的に2分の1以内、特定の要件を満たしている場合は3分の2です。
経営革新事業は、さらに3つの型に分けられます。
・創業支援型(Ⅰ類)
・経営者交代型(Ⅱ類)
・M&A型(Ⅲ類)
専門家活用事業
専門家活用事業は、M&Aの実施にかかる費用を補助するものです。
M&Aによる事業買収、または事業売却を進めている中小企業・小規模事業者を対象としています。
そのため、専門家活用事業には次の2つの型があります。
・買い手支援型(Ⅰ型)
・売り手支援型(Ⅱ型)
補助上限額は600万円ですが、廃業費が発生した場合150万円が上乗せされます。補助率は、2つの型で次のように異なります。
・買い手支援型:一律3分の2以内
・売り手支援型:原則2分の1以内、条件によって3分の2以内まで引き上げ
M&Aにかかる費用のうち、FA・仲介業者への手数料やデューデリジェンス、セカンドオピニオンにかかる費用などが補助対象経費です。
廃業・再チャレンジ事業
廃業・再チャレンジ事業では、事業承継や事業再編の際、廃業によって発生する経費の一部を補助します。
補助率は3分の2以内、補助上限額は150万円です。廃業支援費や在庫廃棄費、解体費などが補助対象とされます。
廃業・再チャレンジ事業は、次の2つに分かれています。
・併用申請型
・再チャレンジ申請型
事業承継・引継ぎ補助金の申請から交付までの流れ
事業承継・引継ぎ補助金の申請には、経済産業省の電子申請システム「jGrants」を使用します。
jGrantsへの登録から補助金交付までの流れを解説します。
1. アカウント作成・jGrantsへの登録
2. 交付申請
3. 補助対象事業の実施・報告
1 アカウント作成・jGrantsへの登録
jGrantsから補助金を申請するには、gBizIDプライムアカウントの作成が必要です。
「gBizID」は、1つのID・パスワードで複数の行政サービスにログインできる法人・個人事業主向けの認証システムです。アカウントは「gBizIDプライム」「gBizIDエントリー」に加え、従業員用の「gBizIDメンバー」の3種類があります。事業承継・引継ぎ補助金の申請には、使える行政サービスに制限がない「gBizIDプライム」を作成しましょう。
gBizIDプライムアカウントは、現在2つの方法で作成できます。書類郵送申請ではアカウント発行まで1~2週間ほどかかりますが、オンライン申請だと最短で即日発行も可能です。
gBizIDプライムアカウントを作成したら、jGrantsに登録します。登録に必要なのは次の4つです。
・印鑑証明書(法務局または地方公共団体が発行)
・登録印鑑を押した申請書
・メールアドレス
・SMS受信可能な携帯番号
gBizIDの発行を待つ間に準備しておきましょう。
2 交付申請
jGrantsに登録後、必要な書類を揃えて補助金を申請します。補助金の種類によって必要書類が異なるため、事業承継・引継ぎ補助金の公式ホームページにある公募要領などをきちんと読み込んでおきましょう。
また、後述する加点事由に当てはまる場合、該当を証明する書類も準備します。経営革新事業または廃業・再チャレンジ事業に申請する場合は、事前に認定経営革新等支援機関に相談しておくと安心です。
申請の採否結果はjGrants上で通知され、交付が決定した企業は中小企業庁や事業承継・引継ぎ補助金事務局の公式ホームページで公表されます。
3 補助対象事業の実施・報告
補助金交付が決定したら、対象事業の実施が可能になります。補助事業期間外に契約・支払いをしてしまうと、補助対象経費として認められないため注意が必要です。
実施後は、所定の手続きに従って実績報告を提出します。報告内容に基づいて補助額が確定し、交付されます。
事業承継・引継ぎ補助金の加点事由
事業承継・引継ぎ補助金の審査では、以下で紹介するポイントに当てはまる場合、加点を受けられます。申請の必須要件ではありませんが、交付や補助額の決定に関わるぜひ押さえておきたいポイントです。
以下それぞれの事業の加点事由を紹介します。
・経営革新事業
・専門家活用事業
・廃業・再チャレンジ事業
事業承継・引継ぎ補助金の交付決定率
令和5年度(9次公募)の交付決定率は次のとおりです。
・経営革新枠:233/388件(約60%)
・専門家活用枠:275/440件(62.5%)
・廃業・再チャレンジ枠:14/25件(56%)
申請した事業者の半分以上に補助金が下りています。交付決定率は高めですが、申請すれば必ず交付されるわけではありません。事前準備や書類の手配を確実に行えば、補助金が下りる可能性を少しでも上げられるでしょう。
まとめ
本記事では、事業承継・引継ぎ補助金の概要や申請要件、交付の流れや加点事由を解説しました。
事業承継・引継ぎ補助金は、後継者問題を解決して国の経済発展を促進する重要な制度です。
うまく活用できれば、新規事業や起業に役立てられる可能性もあります。事業承継やM&Aを検討している方は、ぜひチェックしてみてください。