合同会社で融資を受けたい!保証人がいなくても資金調達できる手段を交えて解説
2024年8月3日
「合同会社は資金調達できるのだろうか?社会的な信用が低いから、どうなのだろう?」
2006年5月より始まった「新会社法」によって新しく設けられた合同会社は、株式会社と比べると歴史が浅く社会的認知度も低いため、資金調達が難しいと耳にしたことがある方もいるでしょう。
しかし実は、合同会社でも、株式会社と比べると規模が小さく選択肢が限られるものの、資金調達はできます。次の7つが、合同会社でも利用できる資金調達方法です。
①日本政策金融公庫の新創業融資制度: 個人事業主やフリーランス、起業家、中小企業への融資を行っている政府系金融機関の融資制度:
②制度融資: 地方自治体と金融機関、信用保証組合が連携して提供する融資制度
③信用保証協会保証付融資: 信用保証協会が保証人となる、小規模事業者や中小企業向けの金融機関の融資制度
④少人数私募債: 特定の少人数の投資家から資金を集める社債
⑤地域創造的起業補助金: 起業のときに必要な資金の一部を補助してくれる、経済産業省が主催している補助金制度
⑥小規模事業者持続化補助金: 小規模事業者向けに、販路開拓にかかる経費を国が補助する制度
⑦キャリアアップ助成金: 非正規労働者のキャリアアップを促進することを目的とした、厚生労働省が主催する助成金制度
限られた資金調達方法の中で自社に合う方法を選ぶには、それぞれの資金調達方法の特徴やメリット・デメリットを理解し、資金調達の目的を明確にすることが大切です。
また、資金調達の申し込みをしたからといって、必ず資金を受け取れるわけではありません。審査に通って初めて、資金を得られることになります。
そこでこの記事では、
・合同会社の資金調達の実状
・合同会社が使える資金調達方法とそのメリット・デメリット
・ケース別おすすめの資金調達方法
・合同会社が資金調達の審査に通りやすくなるポイント
を解説していきます。
この記事を読めば、合同会社が使える資金調達の特徴を理解でき、どの方法が自社に合うかを判断できるようになります。
合同会社を経営する方が、資金調達を検討する際の参考になれば幸いです。
1. 合同会社で資金調達はできる?
冒頭でも説明した通り、合同会社は2006年5月に始まった「新会社法」で新しく加わった会社形態の1つです。株式会社と比べると歴史が浅いため、現状では社会的認知と信用度は高くありません。
では、資金調達の面での実状はどうなのでしょうか?ここで説明しましょう。
1-1. 合同会社の資金調達の実状
合同会社の資金調達は選択肢が限られ、大規模な資金を調達することは難しいのが実状です。その理由は、合同会社の性質と社会的知名度や信用度の低さにあります。
合同会社は、社員が出資した資金で事業を立ち上げて運営する会社です。株式の増資による資金調達は行えないため、後述しますが、合同会社が使える資金調達は融資や社債の発行、もしくは国が提供する助成金・補助金に限られます。
また、企業が使える資金調達方法には、大きく分けて「返済の義務があるもの」と「返済しなければならないもの」の2つがあります。返済しなければならない資金調達方法に関しては、お金を貸す側からすると、知名度と信用度が低い合同会社は「本当にお金を返してくれるのだろうか?」という印象を持たれてしまうのです。
1-2. 株式会社・合名会社・合資会社との資金調達の違い
合同会社はの資金調達は選択肢が限られ、大規模な資金を調達することは難しいのが実状ですが、他の会社形態では、どのように資金調達をしているのでしょうか?
株式会社は株式を発行できるため、投資家や投資会社から大規模な資金を集めることが可能になります。また、社債を発行したり、金融機関などから借り入れたりすることもできるため、資金調達の選択肢は広いです。
合同会社と同じく、社員の出資によって資金調達するのが一般的なのが合名会社と合資会社です。
合名会社と合資会社は「持分会社」と呼ばれ、会社の債務に対して無限の責任を負う社員で構成されます。設立・運営資金は、社員の出資によって調達されるケースがほとんどです。
1-3. 大規模な資金調達が必要なら株式会社への変更が必要
合同会社は限られた選択肢から資金調達することになりますが、得られる資金の規模は株式会社と比べると小さくなります。このため、事業の拡大のために大規模な資金を必要とするときは、合同会社では調達が難しいでしょう。
しかし、会社の形態を合同会社から株式会社へ変更すれば、株式を発行できるようになるため、投資家や投資会社から大規模な資金を調達できる可能性が高まります。
また、株式会社に変更することで、利用できる資金調達の手段に民間金融機関なども加わり、資金調達の選択肢も広がります。
実際、合同会社が事業を拡大するとき、株式会社への変更が行われるケースも多いです。株式会社は知名度と社会的信用度も高いため、資金調達を行う面でいえば有利になるのです。
2. 合同会社が使えるおすすめの資金調達方法7選
株式会社と比べると大規模な資金調達が難しいといわれる合同会社ですが、全く資金を調達できないわけではありません。選択肢は限られますが、合同会社でも使える資金調達方法はあります。次の7つが合同会社が使える資金調達方法です。
1. 日本政策金融公庫の新創業融資制度
2. 制度融資
3. 信用保証協会保証付融資
4. 少人数私募債
5. 地域創造的起業補助金
6. 小規模事業者持続化補助金
7. キャリアアップ助成金
3. 【ケース別】合同会社が使える資金調達方法
ここまで合同会社が使える資金調達方法を7つご紹介してきましたが、自社に合う資金調達はどれなのか、判断がつかないという方もいるでしょう。
そこでここでは、合同会社が使える資金調達方法を6つのケースに分けて説明していきます。
3-1. 起業時に必要な資金を調達したい
合同会社は、創立費として登録免許税6万円と収入印紙代4万円の計10万円あれば設立可能です。
しかし、起業時には、営業を開始するまでにかかる「開業費」や事業を起こすための「資本金」など、創立費以外にも資金が必要でしょう。中には、創立費を含めた資金を調達したい方もいるかもしれませんね。
起業時に必要な資金を調達したいときにおすすめなのが、日本政策金融公庫の新創業融資制度と地域創造的起業補助金です。
日本政策金融公庫(新創業融資制度)は起業家を支援する目的があるため、起業に必要な資金を調達したい人にとって有利な資金調達制度といえます。低金利で借り入れでき、条件を満たせば無担保・無保証で融資を受けられる場合もあるため、資金が十分でない起業時に助かる資金調達手段でしょう。
地域創造的起業補助金は、起業のときに必要な資金の一部を補助してくれます。返済の義務がないため、資金が十分でない起業時には嬉しいメリットといえます。
3-2. 自社の運営資金にゆとりを持たせたい
自社の運営資金にゆとりを持たせたいときは、少人数私募債がおすすめです。
社債(少人数私募債)は、償還期間を自由に設定できます。設定した期間においては毎月利息のみの返済で良く、期間中は安定した資金を確保できます。
元金は償還日に一括返済しなければなりませんが、償還期間に業績を上げて返済金額を確保しておけば、少人数私募債は長期的な資金繰りをすることも可能になります。
3-3. 販路を拡大する資金を調達したい
新しく会社を立ち上げるときに直面するのが、集客や新規顧客開拓でしょう。
しかし、創業間もない頃では、自社の商品やサービスを多くの人に知ってもらうことは難しく、宣伝をしなければなりません。宣伝は、使用ツールによってコストがかかるもの・かからないものがありますが、費用は発生してしまうものです。
そんなときに利用したいのが、小規模事業者持続化補助金です。
小規模事業者持続化補助金であれば、ホームページ作成やチラシ印刷といった手軽に取り組める宣伝手段に対する経費が対象となるため、申し込みのハードルが低いといえます。認知度が浅い合同会社とっては、自社の商品・サービスを広く知ってもらうためにも有効な資金調達手段です。
3-4. 優秀な人材を育成・確保していきたい
優秀な人材を育成・確保に力を入れたい場合は、キャリアアップ助成金の活用がおすすめです。
キャリアアップ助成金は、非正規労働者を正社員として雇用したり、正社員と共通の職務に応じた賃金に改定したりなど、非正規労働者の処遇改善の取り組みに対して助成されます。
非正規労働者の処遇改善の取り組みをすることで従業員は安定して働くことが可能になり、企業にとっても、
・生産性が上がる
・即戦力を確保できる
・正社員の採用活動コストを削減できる
というように事業を大きくさせるためのメリットもあります。非正規労働者のモチベーションアップと事業の成長を期待できるでしょう。
3-5. 設立が浅く売り上げが少ない/経営状況が厳しいけど事業を継続させたい
「設立が浅く、売り上げが少ない…」というときにおすすめなのが、制度融資です。制度融資は小規模事業者や中小企業の資金調達をサポートする目的があり、将来回復や成長が見込めると判断されたら融資を実行してくれる傾向にあります。
また、低金利、かつ融資メニューによっては長期間借り入れすることもできるため、「経営状況が厳しいけど、事業を継続させたい」というときにも制度融資はおすすめです。
地方自治体によって融資メニューが異なり、その融資メニューの数も多く複雑なこともありますが、自社に合った制度融資を選べれば心強い資金となるでしょう。
3-6. 資金調達をしたいけど返済できなくなったときに不安…
事業に必要な資金調達をしたいけど、万が一返済できなくなったときに不安な場合は、信用保証協会保証付融資と地域創造的起業補助金を利用するのがおすすめです。
信用保証協会保証付融資(保証付融資)では、信用保証協会が保証人となってくれます。返済できなくなった場合は、金額の80%ではありますが肩代わりしてくれます。20%は自己負担となりますが、大半を弁済してくれるのは心強い融資制度といえます。
地域創造的起業補助金に関しては、返済が不要です。外部資金調達がない場合は50万円以上100万円以内、外部資金調達がある場合は50万円以上200万円以内と補助金額に上限がありますが、必要な資金の一部を賄えるところは、企業にとって大きいメリットといえるでしょう。
6. まとめ
合同会社は、株式会社と比べると社会的認知度・信用度が引くため、資金調達が難しい実状があります。
しかし、合同会社でも、選択肢は限られますが、次のように使える資金調達手段はあります。
1. 日本政策金融公庫の新創業融資制度
2. 制度融資
3. 信用保証協会保証付融資
4. 少人数私募債
5. 地域創造的起業補助金
6. 小規模事業者持続化補助金
7. キャリアアップ助成金
上記の資金調達手段にはメリット・デメリットがあり、それを踏まえた上で自社に合う資金調達方法を選ぶことが大切です。ケースによって最適な資金調達手段から、必要な資金を調達するのも良い方法です。