経営改善計画とは|目的・作り方・成功のポイントを徹底解説

2025年11月5日

企業経営を続けていく中で、業績悪化や資金繰りの悪化といった経営上の課題に直面することは少なくありません。特に中小企業においては、外部環境の変化や一時的な売上減少によって資金面での危機に陥るケースもあります。こうしたとき、企業が立て直しを図るための重要な指針となるのが「経営改善計画」です。
本記事では、経営改善計画の目的や具体的な作り方、そして成功へ導くための実践的なポイントを解説します。

経営改善計画とは

経営改善計画とは、経営状態が悪化した企業が、現状を分析し、問題点を明確にしたうえで、収益力の回復や財務体質の健全化を図るために策定する再建計画のことです。
単にコスト削減を行うだけでなく、事業の強みを再確認し、経営戦略の再構築や資金繰り改善を総合的に行う点が特徴です。

特に中小企業の場合、金融機関との関係維持や新たな融資を受ける際に、経営改善計画書の提出が求められることがあります。日本政策金融公庫や商工会議所、信用保証協会などが連携して支援を行う「経営改善支援(405事業)」もその代表例です。

経営改善計画を作成する目的

経営改善計画には主に次の3つの目的があります。

① 経営の現状を客観的に把握するため

経営悪化の要因は、売上減少、原価高騰、人件費増加などさまざまです。計画を作る過程で、財務諸表や経営データを分析し、どこに問題があるのかを明確にすることができます。

② 具体的な再建方針を示すため

金融機関や取引先からの信用を維持・回復するには、再建の方向性を明確にする必要があります。経営改善計画は、**「どのような手段で、いつまでに、どの程度の回復を目指すのか」**を具体的に示す指針となります。

③ 資金支援を受けるための交渉材料として

資金繰りが厳しい企業にとって、金融機関の理解と支援は不可欠です。計画書があることで、返済計画や資金需要の根拠を明確に伝えることができ、リスケジュール(返済猶予)や追加融資を受けやすくなります。

経営改善計画の基本構成

経営改善計画書には一定の構成があります。主な項目は以下のとおりです。

1.企業概要
 事業内容、設立年、従業員数、主要取引先、所在地などの基本情報を記載します。

2.現状分析
 財務分析(損益計算書・貸借対照表の比較)、市場動向、競合状況、経営課題などを整理します。

3.課題の抽出
 売上減少の要因、コスト構造の問題、商品力の低下、組織体制の課題など、具体的な改善が必要な点を明記します。

4.改善方針・具体策
 ・売上向上策(新規顧客開拓、販路拡大など)
 ・コスト削減策(仕入れ先の見直し、業務効率化)
 ・人員配置の最適化
 ・経営体制強化(後継者育成やガバナンス整備)

5.数値計画(損益・資金繰り)
 3〜5年先を目安に、売上高、利益、キャッシュフローの改善見通しを数値で示します。
 資金繰り表やキャッシュフロー計画も合わせて作成すると説得力が高まります。

6.実行スケジュール
 各施策をいつから実施し、どの段階で成果を確認するのかを時系列で整理します。

7.モニタリング体制
 経営改善の進捗を定期的にチェックし、必要に応じて計画を修正できる体制を整えます。

経営改善計画の作り方:5つのステップ

ステップ① 現状の把握

まず、財務諸表や経営データをもとに現状を分析します。

・売上・利益の推移

・借入金残高と返済負担

・資金繰り状況

・主要顧客や商品の依存度

この段階で「なぜ赤字になったのか」「どの部門に問題があるのか」を明確にします。

ステップ② 問題点の抽出

現状分析から見えてきた課題をリスト化します。たとえば、

・売上減少 → 既存顧客への依存度が高い

・コスト増加 → 原価率が高く、在庫管理が甘い

・資金不足 → 売掛金回収が遅い
などです。問題を可視化することで、改善の優先順位をつけやすくなります。

ステップ③ 改善策の立案

課題に対して具体的なアクションプランを設計します。
売上を増やすための新サービス開発や、経費削減のためのIT化、在庫回転率の向上策など、実行可能性が高く、成果を数値で測れる施策を立てることが大切です。

ステップ④ 数値計画の作成

改善策を実行した場合の財務的効果をシミュレーションします。損益計画と資金繰り表を連動させ、キャッシュフローの安定性を確認します。金融機関に提示する際には、現実的かつ根拠のある数値でなければなりません。

ステップ⑤ 実行・検証・修正

計画は立てただけで終わりではありません。実行後の進捗を定期的にモニタリングし、想定と乖離がある場合は速やかに修正します。
第三者(専門家や顧問税理士など)によるチェックを受けると、客観性が高まります。

経営改善計画を成功に導くポイント

1. 現実的な数値目標を立てる

楽観的な計画は信頼を失います。金融機関や支援機関に納得してもらうためには、根拠に基づく数値設定が欠かせません。

2. 自社の強みを活かした改善策を選ぶ

単なるコスト削減ではなく、自社の得意分野を活かす戦略が必要です。地域密着のサービス、技術力、ブランド力などを再評価し、差別化につなげましょう。

3. 経営者自身の姿勢を示す

金融機関が最も注目するのは「経営者の本気度」です。明確なビジョンを持ち、改善に向けて行動する姿勢が信頼を生みます。

4. 専門家の支援を受ける

商工会議所、認定支援機関、中小企業診断士、公認会計士など、専門家のサポートを受けることで、計画の精度が格段に上がります。

まとめ

経営改善計画は、単なる再建のための書類ではなく、企業の未来を再構築するための戦略書です。
現状を正確に把握し、課題に対する具体的なアクションを設定することで、資金繰りの安定や収益構造の改善が実現します。
また、計画書を金融機関との対話のツールとして活用すれば、リスケジュールや追加融資などの支援を得られる可能性も高まります。

経営の危機を乗り越える第一歩は、「見直す勇気」と「行動する力」です。
継続的なモニタリングと柔軟な修正を重ねながら、企業再生の道を確実に進めていきましょう。