【メリット】事業資金の返済シミュレーションを利用しましょう!
2024年9月18日
いつもご愛読いただきありがとうございます。
今回は、事業資金調達の返済シミュレーションの利用について解説していきます。
返済シミュレーションと言えば、一般的にカードローンや住宅ローンの返済額をつかもうと、個人がネットなどで利用するものです。
しかし、この返済シミュレーションにはいくつもの種類があり、それらは銀行の事業資金融資でも活用されています。
事業資金調達を検討している人はぜひ参考にしてください。
融資返済シミュレーションとは
融資返済シミュレーションとは、文字通り融資の返済をシミュレーションするものです。
そもそもシミュレーションとは「状況や現象をコンピュータで観察、分析する手法」といった意味で、できごとやシステムの結果をあらかじめ数値やグラフで表現して、将来に起こるべき事態や問題の解決に役立てるものです。
融資返済シミュレーションの主な種類
融資返済シミュレーションの種類はいくつもあり、また同じシミュレーションでも細分化されているものもあり、主に次の通りです。
返済額と支払利息がわかる「返済シミュレーション」
融資返済シミュレーションの中では、これが一番オーソドックスなもので、毎回の返済額と内訳(元金と利息)、そして返済後の残高や支払利息の累計などがわかります。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 借入金額(〇〇万円)
● 借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
【解説】返済方法、返済方式について
融資返済シミュレーションでは「返済方法」を入力することになっているため、ここで基本事項を説明します。
返済方法は「返済方式」とも呼ばれ「元利均等(元金と利息を組み合わせて、毎回の返済を均等=同額にするもの)」「元金均等(毎回の元金は均等で、そこに利息を加え返済する)」が代表的な返済方法です。
その他にも元金や利息の計算方法でさまざまな派生型があり「元利定額」「リボルビング方式」「残高スライド」といった項目の組み合わせなど多岐にわたり、こちらは主に消費者金融などノンバンク系のカードローンで用いられるもので、以下の返済方法や複数を組み合わせたものなどがあります。
● リボルビング方式:毎月の支払額を一定にする方式のことで、その計算根拠が下記のものとなる
● 残高スライド方式:計算の基準となる日(月末日など)の残高に応じて、翌月からの返済額が決まる方式のこと
● 定額方式:毎月返済額を1万円だけなど、返済を定額に指定する方式
● 定率方式:毎月返済額を定率(前月残高の3%など)に指定する方式
事業資金融資の返済方法について
通常、事業資金融資では元金均等返済が基本形で、金融機関では毎回元金を千円単位にして、最終回に調整する「最終回調整方式」が主流になっています。(上記例では毎回返済元金833,000円・最終回返済元金873,000円など)
また元金均等返済では毎回の元金だけが均等なので、基本的に最初は返済(元金と利息の合計)が大きく、以後返済が進むほど返済が小さくなっていきます。
このように、毎回の元金と利息が明確化されるので経費処理などでスムーズに処理できるため、事業資金融資では元金均等返済が主流、元利均等返済は少数派になっています。
借入可能額シミュレーション
①年収から借入可能額がわかる
このシミュレーションは、いくらの年収ならいくらまで借入可能か?といったように、年収から返済比率を逆算するものです。
ちなみに「年収」が事業資金では定義がむずかしく、借入可能額シミュレーションは事業資金では用いられず、代わりに「償還力」【注2】という概念で計算をします。そこで、以下については主にローンの場合とイメージしてください。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 借入金額(〇〇万円)
● 借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
● 年収(前年の税引き前給料支給総額)
● その他の借入(カードローンやマイカーローンなど)
②毎回返済希望額から借入額を逆算する
こちらも住宅ローンで利用するのが主流ですが、事業資金の場合にも元利金の合計で毎月返済〇〇万くらいならいくらまで借入できるか?などで使えます。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 毎回返済可能額(〇〇万円)
● 借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
繰上返済シミュレーション
①繰り上げ返済で返済がどれだけ減るかわかるシミュレーション
現在の借入条件で繰り上げ返済した場合に、毎回返済額がどれだけ少なくなるか?がわかるシミュレーションです。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 初回借入金額(〇〇万円)
● 借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 初回からの経過期間(〇年〇ヵ月)
● 繰り上げ返済する金額(〇〇〇万円)
②繰り上げ返済で返済年数が何年短縮されるかわかるシミュレーション
こちらも繰り上げ返済ですが、現在の借入条件で繰り上げ返済した場合に、返済期間(回数)がどれだけ短くなるか?がわかるシミュレーションです。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 初回借入金額(〇〇万円)
● 借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 初回からの経過期間(〇年〇ヵ月)
● 繰り上げ返済する金額(〇〇〇万円)
このように、繰り上げ返済は「返済額軽減型」と「返済期間短縮型」の2種類ありますが、一般的には「返済期間短縮型」を選ぶ人の方が多いのが実態です。
これは、同じ繰り上げ返済金額でも返済額軽減型より返済期間短縮型のほうが、支払う利息が少なくなるのですが、これは同じ繰り上げでも、借金する期間が短いほど利息支払いは少なくて済むからです。
「借り換えシミュレーション」〜借り換えするとどうなるかわかる
現在の借入条件から、他の金融機関で借り換えをした場合に、返済額がどのくらい減るか?がわかるシミュレーションです。
こちらも主に住宅ローンで活用されるシミュレーションですが、事業資金融資でも借り換えを検討する際に用いられます。
<シミュレーションに必要なデータ>
● 初回借入金額(〇〇万円)
● 返済方法(元利均等返済/元金均等返済)
● 返済年数・返済回数(〇年/▲▲回)
● 初回からの経過期間(〇年〇ヵ月)
● 借り換えする金額(〇〇〇万円)
● 借り換え前の借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 借り換え後の借入金利(年〇〇.〇〇〇%)
● 借り換え前の返済額(元利合計〇〇円)
● 借り換え後の返済額(元利合計〇〇円)
融資の借り換えでは、必要な費用を考える必要があります。例えば事業資金融資でも、契約証書に貼る収入印紙や融資の手数料など、また担保が必要になれば登記費用も発生しますので、実際に借り換えをシミュレーションする場合には手数料も考慮して実質的に得になるか?を考える必要があります。
また借り換えシミュレーション、特に住宅ローンの場合などでは、借り換え後の金利が、借り換えしたときから最終回返済まで全く変わらなかったら?という前提に基づいた「支払利息総額の比較」という項目もあります。
しかしこちらは「年利1%で借りている借金を、年利0.5%の固定金利で借り換え、最後まで金利が変わらなかった場合」の比較であって、住宅ローンでも事業資金融資でも変動金利で借り換えた場合には全く意味がない、あくまで理論値としての数字だという点に注意が必要です。
したがって、この記事では支払利息総額は事例等に含んでいません。
しかし、借り換えを現実に取り扱う場合には、かならずエビデンス(証拠)として借入明細は提出することになっていますので、嘘をついていた場合には問題化して、今度は借り換え融資が審査落ちになる恐れすらあります。
大事な借入明細なので、切り札として銀行員との交渉に使う事もできますが、その使い方には注意が必要なのです。
融資返済シミュレーションをどうやって事業資金調達に活用するか?
では、ここまで説明してきた各種の返済シミュレーションを、事業資金調達でどのように活用するか?銀行員として考えられる活用方法を、いくつか紹介します。
返済シミュレーション
借入を考えている金額と返済年数で毎回返済額がいくらになるか?を自分で考えることができる。また借り入れしてから数年後に金利が上昇した場合に返済がどのくらい増えるか?逆に金利が下がれば返済がどのくらい減るか?といったようにネガティブなシナリオ、ポジティブなシナリオの双方を考えることも可能です。
また自分で返済シミュレーションをある程度は作れるようにしておけば、銀行員と事業資金融資の話をする際にも、金利や返済額など条件面での数値的根拠の知識が交渉で有利に働くことができるかもしれません。
繰り上げ返済シミュレーション
繰上返済シミュレーションの場合は、こちらもある程度の知識を備えれば、返済額軽減型が良いのか?それとも返済期間短縮型がいいか?など自社に適した方法をあらかじめ検討することができます。
たとえば決算が黒字の時に繰り上げ返済をする場合、返済額軽減型にしたほうが支払利息を多く経費計上できる(前述)ため、相対的にメリットとなる場合もあります。
また赤字の状況化では、返済期間短縮で支払利息を減らすか?あるいは毎回の支出を抑えるために返済額軽減型を選ぶか?など能動的・自発的に繰り上げ返済を考えることも可能になります。
融資の返済シミュレーションを行う際の考え方のポイント
①自社を検証し、借入から返済までの課程を事前に想定する。
事業資金などの融資を受ける際は、無理なく返済できるような返済計画を立てておくことがとても重要です。融資の申し込みをする前に、色々な角度から自社の事業を検証し、資金繰表等をみながらキャッシュフローを想定し、返済計画をたててみましょう。
その際に、うまくいった場合のみを想定するのではなく、業績が苦しくなった場合も視野にいれて想定し、返済計画を立てる様にしましょう。
様々な角度から自社を検討することで、経営上の課題などがみつかり、そのことによって
必要な資金の金額などが見えてきたりします。そういった具体的数字を積み上げて、返済までの流れを把握すれば、精度のよい返済計画がつくれます。
②無理のない資金計画を立てる
安定的に会社の経営をしていくためには、充分な事業資金を確保することが大切です。
新たに創業する場合でも、事業を拡大する場合でも、そのために事業資金がいくら必要になるのかを把握します。そして必要な事業資金のうち、どれくらいを自己資金でまかなえるかを計算します。
事業資金というものは、非常に重要で、あれあるあるだけ経営の資金繰りに余裕はできることになりますが、今手元にある事業資金がすべて融資によるものですと、いずれすべて返済しないといけなくなります。借入金の割合が多くなると、融資を行う日本政策金融公庫側としても、返済できないリスクがあると判断をして、融資してくれない可能性もあります。
借入と自己資本の割合を考えながら資金計画を立てる必要があります。
③融資を受ける額を考える
会社を経営していると、取引先への支払いや、人件費などの経費、税金の支払いなど手元から離れるお金が沢山あります。これらの支払いが滞ったりした場合は、会社の信用低下を招いて、売上が下がり、更に会社の経営状況は厳しくなってしまいます。
事業資金はあればあるだけ会社の資金繰りには余裕がうまれますが、借入金が多いと、利息の支払の負担も大きくなるので、自己資金や自社の今後の収入、例えば、売上の予測などを考慮しながら、いったいいくら融資を受ければよいのかを考える必要があります。
融資返済シミュレーション利用時の注意事項
ネットでカードローン会社のサイトや、住宅ローン返済額を知りたいと銀行公式HPなどで「シミュレーションはこちら」とある場合には、注意しなければいけないことがあります。
まずシミュレーションを利用しようとすると「個人情報の取り扱いに同意を」とか「住所や氏名」などの入力が必要になることがあります。
往々にして情報入力項目が多ければ多いほど、シミュレーションも精緻な結果が得られるようになっているのですが、逆にいえばこちらの情報を明かさないと利用できないシミュレーションもあるということになります。
安易に個人情報を明かすと、入力した相手にその情報を知られることになりますので、ここは慎重に考える必要があります。
また個人情報の入力などは不要でも「Cookie(クッキー)」への同意が必要になる場合もあります。
「Cookie(クッキー)」とはあなたがネットで検索する目的や嗜好(好き嫌い、趣味)などの情報であり、こちらも安易に取り扱いに同意してしまうと、次回からサイトで優先的にこういった「あなた好み」の情報が優先して表示される可能性もあります。
もちろん個人情報の取り扱いやCookieがすべて問題あるわけではなく、便利と感じられるなら問題はありませんが、自分の情報を守りたい人は慎重な対応が必要になります。
個人情報の取り扱いやCookieが煩わしいなら、政府や公的機関などのシミュレーションは比較的こういった傾向は少ないのでおすすめです。
ちなみに私もシミュレーションはこうした公的サイトのものを利用しています。
一方、記事執筆のために専門サイト、たとえばカードローン記事の為に金融会社のHPや「比較サイト」にアクセスすることもあり、そのあとはやたらとカードローンの宣伝がサイトに優先表示されるようになってきます。
まとめ
今回は、返済シミュレーションの活用について解説しました。
返済シミュレーションの種類によって、計算方法や、そこからわかる結果は異なるので、自分がシミュレーションを通して知りたい情報を整理して、利用すると良いでしょう。
また、インターネットを利用することで、情報の漏洩の可能性もないとはいえないので、使用するサイトには注意しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!