事業資金調達における担保ありと無担保融資の違いとメリット・デメリット
2024年7月25日
資金調達する場合に企業は、融資金額、返済条件に加えて担保付き融資か無担保融資かを考えます。この担保付き融資と無担保融資の知識を備えていると、いざというときでも慌てず資金繰りを考えることができます。ここでは、両者の違いについて説明します。
担保付き融資、無担保融資とは
金融機関から融資を受ける場合、その融資金額、返済条件などに加えて、担保付き融資か、無担保融資かを検討します。
担保付き融資とは
担保付き融資は万が一その債務の支払いが困難になった場合に備え、不動産などの担保を設定して金融機関から融資を受けるものです。
融資する側の金融機関の視点では「もしも返済できない場合」に備え、担保設定することで保証を求めるものです。
金融機関からすると、万が一、担保融資の返済が滞ってしまった場合、不動産などの物的担保を売却したり、連帯保証人に返済を求めたりすることができます。
無担保融資とは
無担保融資とは、担保を特に求めないタイプの融資です。無担保融資を行っている代表的な金融機関が信用保証協会や日本政策金融公庫です。
信用保証協会は、直接融資をしてくれる金融機関ではありませんが、保証人や担保を持たない企業が融資を受けるときに、保証料を支払えば保証人代わりになってくれるものです。信用保証協会の保証を受けることで、担保がなくても金融機関の融資を利用できるようになります。
また、日本政策金融公庫は政府系金融機関であり、無担保で利用できる融資があります。さらにカードローンなどでは、金額は少額で金利が高いタイプの無担保融資が多くなっています。
無担保融資は金融機関からすると、少額融資で高い金利で貸し付けるため、ある程度は返済滞納などがあってもダメージをおさえられができるというわけです。
担保付き融資における担保の種類 ~物的担保と人的担保~
担保付き融資の担保には物的担保と人的担保があり、そのどちらか、もしくは両方が必要なこともあります。
物的担保の代表例は、土地・建物です。それ以外にも、債券や株式といった有価証券や、企業が商品の販売代金を受け取る権利である売掛債権なども対象になります。
人的担保の代表例は、企業代表者などの連帯保証人です。
担保付き融資のメリット・デメリット
担保付き融資と無担保融資には、それぞれメリット・デメリットがあります。その特徴を捉えた上で、融資の申込みや資金繰りを考えると良いでしょう。
担保付き融資のメリット
・融資金額が無担保融資より大きくなる
・資金使途によっては、期間の長い融資を受けることが可能
担保付き融資のメリットは、資金使途や融資金額にもよりますが、金額の大きな融資にも対応してくれることや、返済期間を長く設定できるため資金繰りへの影響が少ないことです。
担保の評価方法、評価掛け目(その評価額の何%まで評価するか)については、例えば不動産担保であれはその評価額の70%、上場会社の株式を担保提供するのであれば80%など、それぞれの金融機関で設定しています。
その担保の評価額(返済が滞った場合に、金融機関が融資を回収できるであろう金額)まではその企業に融資できますので、評価額が大きければ、その分大きい金額を融資できる可能性があります。
担保付き融資のデメリット
・担保が必要(担保設定の手間やコストがかかる場合がある)
・保証人が必要
・不動産など評価が必要なものは融資までに時間がかかる
担保付き融資のデメリットは、担保や保証人が必要なことです。
特に不動産担保の場合は、金融機関に抵当権などの担保を提供するため、登記手続きが必要で登記費用も発生し手間もかかります。さらに、仮に経営者の自宅などを担保提供している場合、融資返済の延滞などがあると最悪の場合、処分(金融機関が担保で取得しいている不動産を裁判所に競売申し立てる)、換金され、融資返済に充てられてしまいます。すると、経営者が住むところがなくなってしまうことになりかねません。
無担保融資のメリット・デメリット
無担保融資のメリット
・担保が不要
・保証人が不要
無担保融資のメリットは文字通り、担保や保証人がないことです。仮に返済できないとしても、不動産の売却をされたり保証人に迷惑をかけたりすることはありません。
無担保融資のデメリット
・融資金額に上限がある
・適用・利用条件が厳しい
無担保融資のデメリットとして、金融機関は担保がないことからリスクを負うことになるため、担保付き融資に比べると、融資金額に上限があり融資希望額に届かない可能性があることが挙げられます。また、その適用・利用条件が厳しくて融資対象に該当しなかったり、仮に該当したとしても金利や返済期間が希望通りでなかったりする可能性もあります。
また、無担保融資の代表である信用保証協会や日本政策金融公庫は、中小企業向けですので、企業規模が一定規模になると利用できないことがあります。
融資金額の上限について、信用保証協会では保証協会の保証の付いた融資合計残高で融資可能額が決まります。例えば、その企業の与信金額が5,000万円の場合を考えます。このケースでは、A融資で3,000万円、B融資で2,000万円と合計5,000万円の融資を受けていると、それ以上、信用保証協会では融資を受けることはできません。
よって、金融機関に融資合計残高が今いくらかの確認をしておくと良いでしょう(もちろん、決算結果によって、その融資上限金額はその都度変わります)。