美容室が資金調達を受けるには!運転資金の考え方と資金調達の手段
2024年7月5日
美容室を経営するには、技術的なスキルだけでなく経営スキルも求められます。そのため、開業したものの資金繰りに困ってしまい、融資を検討する経営者が少なくないのが現状です。ここでは、美容室の運転資金や資金調達の考え方をはじめ、運転資金の融資を受けられる金融機関と審査のポイントまで解説します。
美容室の運転資金の考え方
運転資金とは、毎月の運営にかかる費用を支払うための資金のことです。まずは、美容室の運転資金の考え方について見ていきましょう。
運転資金はどれくらい必要か
美容室を運営するにあたってかかる費用には、次のようなものがあります。
●家賃・水道光熱費・通信費
●人件費
●材料費(シャンプー・薬剤など)
●広告宣伝費
家賃や人件費は、売上がゼロだったとしても支払わなくてはならない固定費です。材料費は売上と連動して変わることから、変動費といわれています。広告宣伝費は自店の戦略によってどの程度かけていくかが変わりますが、美容室の場合は毎月一定以上の新規客を集めないと売上が伸びていかないため、ある程度の予算を投じる必要があります。
美容室の利益率(売上に対する利益の割合)は7~10%程度が一般的なラインです。つまり、売上の9割以上が運転資金として必要になるということです。とくに美容室経営では、固定費となる家賃・人件費に占める割合が高く、売上の5~6割程度となっています。
ここで注意しなくてはならないのは、たとえ売上が減少したとしても、固定費はかかり続けるということです。そのため、万が一の場合に持ちこたえられるだけの運転資金が手元にある状態をつくらなくてはならないわけです。一般には、3カ月分ほどの運転資金が手元にあれば、余裕を持って美容室経営ができるとされています。
現在はキャッシュレス決済が進んでおり、入金までにタイムラグが発生するケースもあります。運転資金が底をつけば廃業に至ってしまうため、お金の流れ(キャッシュフロー)をしっかり管理することが重要です。
運転資金の借入を検討すべきケース
運転資金の調達を検討すべきケースは大きく2つあります。一つは、手元に運転資金が残っていない場合です。もし売上の1カ月分を切っている状態なら、早急に資金調達手段を検討しなくてはなりません。
二つ目は、スタッフを増やしたり広告宣伝を拡大したりして、売上拡大を狙いたい場合です。手持ち資金がある状態で拡大できるのが理想ですが、たとえば、人手が増えれば売上が伸びることがわかっているのに資金不足が心配で二の足を踏んでいるという状態なら、検討してみる価値があるといえるでしょう。ただし、売上予測や経費のシミュレーションをしっかり行い、計画的に進める必要があります。
美容室が運転資金の融資を受ける方法
ここからは、美容室経営者が運転資金を調達したい場合の方法について見ていきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は政府系金融機関で、小規模事業者への融資制度を多数用意しているため、美容室経営の資金調達手段として真っ先に検討したいところです。低金利、無担保・無保証での借入が可能というメリットもあります。
制度融資
制度融資とは、地方自治体と民間の金融機関、信用保証協会とが連携して行う融資のことです。信用保証協会は、中小企業や小規模事業者の資金調達をサポートする公的機関で、各都道府県に設置されています。
小規模事業者は事業基盤が不安定なケースが多く、民間の金融機関からの借入ハードルが高いのが現状です。そのため、信用保証協会の保証を付けることで、スムーズな借入を支援しています。保証料を支払う必要はありますが、自治体が保証料の一部を負担するなどして、事業者の負担を軽減してくれます。ただし、審査に時間を要する点に注意しましょう。
審査のポイント
運転資金の融資を受ける際の、審査のポイントを見ていきましょう。
金融機関によって審査基準は変わりますが、とくに次の2点は審査を通過するうえで重要なポイントとなります。
過去の支払い履歴
税金の納税に遅延や滞納がないかという点にくわえ、公共料金や家賃、住宅ローン、クレジットなどの支払い状況を確認されます。期日通りにしっかり支払わなくてはならないものに対して義務を怠っていることがわかると、融資をしてもきちんと返済してもらえない可能性が高いと判断され、審査に通りにくくなるため注意しましょう。
事業計画書をしっかり作る
事業計画書は、いわば経営の設計図となるものです。とくに赤字になっている場合は、どのように改善していく計画となっているのかを示せなければ、審査通過の可能性が下がってしまいます。以下の点を意識して、説得力のある事業計画書を作成しましょう。
●売上計画
売上計画を立てて、どのように売上を伸ばしていくのかを明確にします。
美容室の売上は「席数×回転数×客単価×営業日数」で決まります。回転数は、1日に何人の施術を行ったかを表す数字です。たとえば、5席ある美容室が1日10人の施術を行った場合、2回転していることになります。
この計算式からわかるように、売上を伸ばすには「単価を上げるか」「回転数を伸ばすか「営業日数を増やすか」いずれかの取り組みが必要となります。どのような工夫やアイデアで売上を伸ばしていくかという点だけでなく、数字のシミュレーションを入れて説得力を高めるようにするのがポイントです。
●損益計画
どのように利益を生み出していくのか、損益計画を明確にしましょう。利益を伸ばすには、売上を増やすか、経費を減らすかの2つがあります。具体的にどんな取り組みによって利益を出せるようになるのかを考え、事業計画書に盛り込むことが重要です。
事業計画書に不安がある場合は、税理士や中小企業診断士といった専門家に見てもらい、よりよい計画書を作成するのも一つの方法です。