銀行と保証協会の関係とは?仕組みと利用の流れをわかりやすく解説
2025年10月11日
中小企業や個人事業主が事業資金を調達しようとしたとき、銀行からの融資を受けることが一般的です。しかし、経営状況や決算内容によっては、銀行が「返済リスクが高い」と判断し、融資が難しくなるケースも少なくありません。
そこで登場するのが「信用保証協会(保証協会)」です。保証協会は、資金を必要とする企業の信用を“保証”することで、銀行融資を受けやすくしてくれる公的機関です。ここでは、銀行と保証協会の関係や、保証付き融資の仕組み、利用のメリット・注意点をわかりやすく解説します。
1. 信用保証協会とは何か
信用保証協会は、各都道府県に1つずつ設置されている「公的な保証機関」です。
目的は、中小企業者の資金調達を支援すること。つまり、民間金融機関(銀行や信用金庫など)からの融資を受けやすくするために、借入金の保証人となる役割を担っています。
企業が銀行に融資を申し込む際、保証協会が「もしこの企業が返済できなくなったら、代わりに保証協会が銀行に返済します」と保証することで、銀行は安心して融資を実行できるのです。
この仕組みを「信用保証制度」と呼びます。
2. 銀行と保証協会の役割の違い
保証付き融資では、銀行と保証協会がそれぞれ異なる役割を担います。
・銀行(融資実行者):実際に資金を貸し出す金融機関。返済の管理や利息の受け取りを行います。
・保証協会(保証人):借入に対して保証を提供する機関。借り手が返済できなくなった場合に、銀行へ立替払いを行います。
・借り手(中小企業・個人事業主):融資を受けて返済していく主体。保証料を支払い、保証を受ける立場です。
このように、保証協会は「銀行と企業の間をつなぐ存在」として、融資のリスクを分散させ、資金調達のハードルを下げています。
3. 保証付き融資の仕組み
保証付き融資の流れは次のようになります。
1.企業が銀行に融資を申し込む
2.銀行が企業の経営内容を確認し、保証協会に保証依頼を行う
3.保証協会が独自に審査を行う
4.保証が承認されれば、銀行が融資を実行
5.企業は融資金を受け取り、銀行へ返済
6.万が一返済不能になった場合、保証協会が銀行へ代位弁済(立替払い)
7.その後、保証協会は企業に対して立替分を求償(返済請求)
この流れによって、銀行は貸倒リスクを最小限に抑えつつ、中小企業は安心して融資を受けられるようになります。
4. 保証協会付き融資の種類
保証協会付き融資には、さまざまな制度があります。代表的なものをいくつか紹介します。
・一般保証
中小企業の通常の運転資金や設備資金に利用できる基本的な保証制度。保証限度額は原則2億円です。
・セーフティネット保証
経済環境の変化や災害など、外的要因によって業績が悪化した企業を支援するための特別保証制度です。たとえば、取引先の倒産や感染症の影響を受けた場合などに利用できます。
・創業関連保証
新たに事業を始める起業家向けの制度。実績がないため通常融資が難しい創業期でも、保証協会の支援によって資金調達が可能になります。
・危機関連保証
全国的な経済危機などが発生した際に適用される一時的な特別保証。新型コロナウイルスの影響時には多くの企業が利用しました。
これらの制度は、企業の状況や目的に応じて選択できるようになっています。
5. 保証料と金利の関係
保証協会を利用する場合、借り手は「保証料」を支払う必要があります。
保証料は融資額や保証期間、企業の信用力によって異なり、年0.4%〜2.0%程度が一般的です。保証料は一括で前払いするのが基本です。
銀行への金利に加え、保証料が発生するため、実質的な資金コストはやや高くなりますが、その分審査の通過率が高く、資金調達の安定性が増すのが大きなメリットです。
6. 保証付き融資を利用するメリット
1.銀行融資の審査に通りやすくなる
保証協会が保証してくれるため、銀行側のリスクが減り、融資実行のハードルが下がります。
2.無担保・無保証人で借りられる場合もある
保証協会が保証人となるため、代表者個人が保証人になる必要がないケースもあります(制度による)。
3.長期・低金利の資金調達が可能
公的制度の一種であるため、民間ローンよりも低金利で、返済期間を長めに設定できることが多いです。
4.経営支援や再生支援も受けられる
保証協会は融資の保証だけでなく、経営相談や資金繰り改善のアドバイスなど、サポート機能も持っています。
7. 利用時の注意点
保証付き融資にはメリットだけでなく、注意すべき点もあります。
・保証料が追加コストになる
金利以外に保証料がかかるため、実質的な負担が増えます。
・審査が二重になる
銀行と保証協会の両方で審査を受ける必要があり、融資まで時間がかかることがあります。
・代位弁済後は信用情報に影響が出る
返済不能で保証協会が立替払いを行った場合、その情報が信用情報機関に登録され、今後の融資が難しくなることもあります。
8. 銀行と保証協会の連携強化
近年では、銀行と保証協会がより密接に連携し、中小企業支援の体制を強化しています。
たとえば、各地の保証協会は銀行と協定を結び、迅速な審査・保証判断を行う「電子申請制度」や「ワンストップ融資」を導入。これにより、以前よりもスピーディーな資金調達が可能になっています。
また、信用保証協会が保証する案件を減らし、銀行自身がリスクを取る「保証付きからプロパー融資への移行」も進められています。これは、企業の信用力を育て、将来的に自立的な資金調達を目指すための流れです。
9. まとめ
銀行と保証協会は、中小企業の資金繰りを支える「二つの柱」と言えます。
保証協会の存在により、信用力が十分でない企業でも融資を受けやすくなり、経営の安定化や成長の機会を得られます。
ただし、保証料や審査の手間などもあるため、自社の資金状況や返済計画を踏まえた上で、最適な融資方法を選ぶことが大切です。
資金調達の第一歩として、まずは取引銀行や地域の信用保証協会に相談してみると良いでしょう。
