バーンレート&ランウェイとは?

2023年8月31日

スタートアップでよく使われる用語『バーンレート』。「資金がなくなるまでの猶予期間」を図る上で重要なキーワードであり、覚えておきたい用語の一つです。この記事ではバーンレートとランウェイとは何か。またその計算方法や注意点を解説します。

バーンレートとは?

バーンレートを把握することで、月次でいくらキャッシュフローがマイナスになるか、ひいては手持ちの資金(キャッシュポジション)から勘案して何ヶ月経営を維持することができ、どのタイミングで資金が底を尽くのかを把握することが重要です。

「資金燃焼率」または「現金燃焼率(キャッシュバーンレート)」と呼ばれ、会社経営において1ヶ月あたりに消費するコストのことを指します。

スタートアップでよくこの言葉が使われる背景として、運転資金が潤沢でないスタートアップが多いためバーンレートを把握することで自社の”生存期間=ランウェイ”をある程度測りながら、経営の舵取りを検討することができるためです。

バーンレートは2種類

ネットバーンレートとグロスバーンレートがあり、一般的には「ネットバーンレート」が使用される機会が多いです。グロスとネットという広告業界にいる方は馴染がありそうですが、端的に言うと、総額(グロス)か、実質(ネット)かです。
それぞれ説明します。

①ネットバーンレート
ネットバーンレートとは、実際にかかったコストの合計額から収入(売上)を差し引いた額を意味します。


計算式
総コスト ÷ 期間(月数)- 月次売上


この計算式によって、スタートアップ企業の資金余力がどの程度あるのか確認できます。

例えば、サービスAがあったとき、月次売上:300万円/月
6ヶ月間でかかった総コスト:3,000万円
この場合、3,000(万円)÷ 6(ヶ月)=500万円
月次コスト 500(万円) ‐ 月次売上 300(万円)=200万円
となり、ネットバーンレートは200万円となります。

 

この計算を基にすると、1年間に必要な資金は「200万円✕12ヶ月=2,400万円」となります。月あたりどの程度キャッシュが減少したか、またその減少するスピードと残りのランウェイなども測ることができますね。

②グロスバーンレート
グロスバーンレートとは、1ヶ月あたりのコストの合計額を意味します。


計算式
総コスト ÷ 期間


月次売上:300万円/月
6ヶ月間でかかった総コスト:3,000万円
この場合、
3,000(万円)÷ 6(ヶ月)=500万円
がグロスバーンレートになります。

バーンレート計算時のコストとは

基本的には継続して発生する支出のことであり、主に以下の分類が存在します。

固定費:オフィス賃貸費用、人件費(給与、賞与)、PCやコピー機器のリース代などの毎月固定で発生する費用
変動費:原材料や商品の仕入れ費、調査費、サーバ代など売上に連動して支出が増減する費用

固定費と変動費に切り分けたときに、固定費は売上があろうがなかろうが必ず発生します。一方で変動費は商品製造の個数や仕入、データ量やトランザクションの量に応じて課金されるものも含まれることから、売上が変動費を上回っており、適正な利益が確保されていれば問題ないとされています。

そのためスタートアップにおいてコスト削減を行う場合は、固定費を少なくすることが望ましいとされています。
ちなみに、固定費や変動費ではなくスポット(1回きり)の支出は、バーンレートを計算する際の支出費目に含まないのが一般的です。

ランウェイとは

ランウェイとは、会社に残された「生存期間」のことで、正確に把握することで、資金繰り改善の施策をうったり、資金調達時期の目安を知ることができます。
ランウェイはバーンレートを使って計算します。


計算式
ランウェイ(〜ヶ月) = 残資金 ÷ ネットバーンレート


例えば、残資金が1,000万円、バーンレートが100万円の会社のランウェイは、
1,000万円÷100万円=10ヶ月

 

となり、10ヶ月で資金が底をつく計算ができます。10ヶ月以内に新たな資金調達をするか、バーンレートを下げる、あるいは売上を上げ、利益を上げるなどして手元キャッシュを増やすなどの対応をしなければなりません。

ランウェイの期間中に、コスト削減、売上(出来れば粗利)の向上、新たな資金調達、など様々な対策を複合的に打つ必要があります。

最悪の場合、人員を整理しキャッシュアウトを絞ることになりますので、キャッシュポジションのマネジメントを非常に重要です。

ランウェイ確保が資金調達の交渉力を増す

スタートアップによる資金調達先(投資家)の選定や投資家との交渉能力に対して、バーンレート(Burn Rate:予測と実績)とランウェイ(資金不足までの残り期間)が大きく影響します。

その理由として、たとえば三ヵ月以内に手元資金が尽きてしまう場合、起業家の投資家に対する交渉能力が極端に弱くなり、バリュエーションなど投資条件の交渉も非常に不利になります。

資金調達に奔走しながら、固定費を削減してランウェイを伸ばしていく作業は精神的にも苦痛です。仕事のパフォーマンスが落ちるだけではなく、メンタル的にも追い込まれてバーンアウトするところまでいってしまうスタートアップ経営者もおります。

資金調達後は、適切なランウェイを確保し、少なくとも半年以上ランウェイを残した状態で投資家と次の資金調達の交渉を開始するようにしましょう。

固定費削減のヒント

スタートアップの場合、固定費でやはり大きいのは『家賃』ではないでしょうか。いまはリモートも主流になっており、広いオフィスを高い賃料で借りる必要性が低くなっています。

居ぬき物件や少し地方に行けば急激に家賃等のコストを削減できるケースもあり、備品なども中古販売会社やオフィスから退去する先輩起業家から貰えるものはもらった方がコスト削減に繋がります。無理に東京都港区や渋谷・六本木と言った一等地にオフィスを構える必要もないですね。

あとは『給与』です。特に高額な給与となる社長や役員クラスの給料は、バーンレートやランウェイに大きな影響を与えます。社長年収1,000万円、役員3名で各700万円などの場合、年間で3,100万円の固定費となります。自社役員の給料などは、定期同額給与のため、年に1度事業計画をもとにしっかりと見直す必要があります。

まとめ

バーンレートの把握は特にスタートアップ経営にとって非常に重要です。バーンレートを意識して資金調達やコスト削減、経営戦略を早急に組め立てることでスタートアップ企業としての生存確率が大きく変わってきますので、しっかりと自社のバーンレートとランウェイを把握しておきましょう。