預り金とは?わかりやすく解説
2023年9月1日
預り金とは、報酬、給与から差し引いた源泉所得税や営業上生じた短期の預かり保証金などを仕訳する時の勘定科目です。
預り金は、貸借対照表の負債の部のうち「流動負債」に表示されます。
この記事では、預り金の意味や該当するもの、預り金の仕訳例などについてご紹介します。
預り金とは
預り金(あずかりきん)とは、役員報酬や従業員給与、税理士・弁護士報酬などから天引きして一時的に預かるものなどを処理する時の勘定科目です。税務署等に納付するために給料から差し引く源泉所得税、住民税、社会保険料のほか、取引先との取引の際に預かる営業保証金、預かり保証金などを処理する時にも使います。
①預り金に該当するもの
預り金とは、役員、従業員、取引先から一時的に預かった金額で、本人に返還するかまたは本人に変わって第三者に支払うものを計上する時の勘定科目です。
税務署等に納付するために給料から差し引く源泉所得税、住民税、社会保険料のほか、取引先との取引に際して預かる営業保証金などを処理する時に使用します。
預り金に該当するもの
・住民税 |
②預り金は「補助科目」を設定する
預り金には、社会保険料、労働保険料、住民税などいろいろな種類があります。そこで、それぞれの残高を正しく管理できるように補助科目を設定します。
たとえば、「従業員から預かった住民税1万円を普通口座より納付した。」という場合には、以下のように「預り金(住民税)」として処理をします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金(住民税) | 10,000 | 普通預金 | 10,000 |
③預り金は「流動負債」に表示される勘定科目
預り金は、将来的には現金(資産)が減少するものなので、貸借対照表の「負債の部」に区分されます。
負債の部とは、将来支払う債務であり、返済期限が1年以内か1年を超えるかで「流動負債」と「固定負債」に区分されます。
流動負債とは、決算日から1年以内に支払わなければならない負債のことで、返済期限までに1年を超える余裕のある負債は、固定負債に区分されます。たとえば、短期借入金は流動負債、長期借入金は固定負債となります。
預り金は1年以内に支払が完了するものなので、通常は貸借対照表の流動負債に分類されます。
一方、預り金のなかでも不動産の賃貸契約の際に貸主に預ける敷金や保証金は、1年以内に返済されることはあまりありません。そこで、このような場合には「預り保証金」として、貸借対照表の固定負債に区分されます。
④預り金以外の「流動負債」の内訳を知っておこう
前述したとおり、預り金は、原則として流動負債に区分されます。
他に流動負債に区分される勘定科目については、以下のようなものがあります。
流動負債の勘定科目 | 内容 |
---|---|
支払手形 | 営業上の買掛債務の支払いのために振り出した約束手形や、引き受けた為替手形 |
買掛金 | 原材料や商品を購入することによって生じた仕入先に対する債務 |
前受金 | 商品、製品の販売代金の前受けした金額 |
短期借入金 | 銀行から借り入れた設備資金、運転資金や個人からの借入金、取引先からの借入金などのうち、1年以内に返済予定のもの |
未払金 | 主な営業取引から生じる債務である買掛金以外の固定資産の購入代金や、有価証券の購入代金の未払額 |
未払法人税等 | 法人税、道府県民税、事業税、市町村民税の未払額 |
仮受金 | 原因不明の入金や最終金額が確定していない入金 |
預り金 | 報酬、給与から差し引いた源泉所得税、住民税など 営業上生じた短期の預り保証金 |
未払費用 | 賃金、給料、利息、賃借料の支払期日到来前の未払額 |
前受収益 | 地代、家賃、利息などの前受金額 |
賞与引当金 | 次期になって支払う予定の賞与の当期負担の見積額 |
⑤預り金と「仮受金」の違いは
一時的な受け入れ額を計上する勘定科目としては、預り金以外に「仮受金」があります。
仮受金は、たとえば普通預金に取引先から入金があったものの、何に対しての入金なのかが不明な場合に、理由が分かるまでに処理をする時に使う勘定科目です。
つまり、仮受金は原則として返還の予定がないものを処理する時に使う勘定科目であるのに対して、預り金は返還の予定があるものを処理する時に使う勘定科目であるという点が異なりますので、注意しましょう。
預り金の仕訳
預り金は、源泉所得税、社会保険料、住民税などの補助科目を設定して処理をします。
そして、預かっていた源泉所得税、社会保険料、住民税を納付する時には、「預り金」を取り崩して支払います。
①社会保険料 役員や従業員が負担する健康保険料、厚生年金保険料を給与から天引きする時に使用します。天引きした後は、会社負担分の社会保険料とあわせて、納付する際に取り崩します。②労働保険料 労働保険料は、1年分を前払いします。 前払いする際に、従業員負担分を「立替金」で処理をします。そして、その後従業員の給与から天引きする際に「立替金」を取り崩していきます。この時、途中で「立替金」が足りなくなる時にがありますが、ゼロになった後に「預り金」で処理をします。③源泉所得税等 役員や従業員の給与、弁護士や税理士などに支払う報酬から天引きする時に使用します。 原則として、天引きした月の翌月10日までに税務署に納付します。④住民税 役員や従業員の給与から天引きし、原則として天引きした月の翌月10日までに市区町村に納付します。 |
預り金の仕訳①「給料を支払った時」
給料を支給する際に、従業員本人が負担する源泉所得税、住民税、社会保険料を差し引いて支給します。この時差し引いた金額を「預り金」として計上します。
当月分の社会保険料は翌月末までに、従業員の給料から天引きした社会保険料と会社負担分をあわせて納付します。この時、会社負担分は「法定福利費」で処理をします。
【給与を支払った時】
従業員の給与50万円について、源泉所得税4万5,000円、住民税4万円、社会保険料3万円を差し引いて普通預金から振り込んだ。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
給与 | 500,000 | 普通預金 | 385,000 |
預り金(源泉所得税等) | 45,000 | ||
預り金(住民税) | 40,000 | ||
預り金(社会保険料) | 30,000 |
【預り金を取り崩した時】
従業員から預かった社会保険料3万円と、会社負担分の社会保険料3万円と、会社負担分の社会保険料3万円を、現金で納付した。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預り金(社会保険料) | 30,000 | 現金 | 60,000 |
法定福利費 | 30,000 |
預り金の仕訳②「税理士報酬を支払った時」
個人事業主である税理士に報酬を支払う際には、源泉所得税を差し引いて支払いをします。この時源泉所得税を「預り金」で計上します。
個人事業主である税理士の報酬10万円を、源泉所得税1万210円を差し引いて普通預金から振り込んだ。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払手数料 | 100,000 | 普通預金 | 89,790 |
預り金(源泉所得税等) | 10,210 |
まとめ
預り金は、一時的な金銭を預かった時に使う勘定科目で、原則として貸借対照表の負債の部の「流動負債」に区分されます。
預り金は、仮受金と混同しがちですが、預り金は返還の予定がある時に使う勘定科目であるのに対し、仮受金は返還の予定がないものを処理する時に使う勘定科目である点が異なりますので、注意が必要です。