企業の借入目安金はいくら?融資を受けられる金融機関を紹介

2024年9月9日

「売上が計上されるのが再来月で、それまでの支払いが難しい」など、運転資金が不足していないでしょうか?

実際に運転資金を借り入れるにしても、どのくらいの金額を目安とすべきかわかりづらいでしょう。

本記事では、運転資金の借り入れの目安金額や融資を受けられる金融機関などを紹介します。

運転資金の借り入れ目安金額

『銀行から運転資金はいくらまで融資してもらえるか』と気にする経営者もいます。自社が借入できる目安の金額は次の3つから推測できます。

●正味運転資本(正味運転資金)
正味運転資本とは、企業を維持するうえで常に必要な運転資金のことです。
計算式は、売掛債権(売掛金+受取手形)+棚卸資産-買掛債務(支払手形+買掛金)となります。
(計算例)
売掛金    1,000万円
+ 受取手形    2,000万円
+ 棚卸資産 3,000万円
– 支払手形 1,500万円
– 買掛金 1,500万円

= 正味運転資本 3,000万円

●借入金月商倍率(月商の3か月分または6か月分)
借入金月商倍率とは、借入金残高がいくらまでであれば健全といえるか、という指標です。
借入金÷平均月商で計算するため、借入限度の目安を知るためには最も簡易な方法です。
(計算例)
借入金残高      8,000万円
平均月商       1,000万円

借入金平均月商倍率   8.0倍

健全さの目安は3倍以下(月商の3倍までの借入)といわれていますが、業種により大きく異なります。自社における借入の限度は月商3か月分までが健全、6か月分までが限度と考えることが一般的です。

●債務償還年数
債務償還年数は金融機関が最も重視する指標の1つです。現実的な借入の限度額であるといえます。
債務償還年数の計算式は、(借入金-運転資金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)です。
運転資金は(売掛金+受取手形+棚卸資産-支払手形-買掛金)で計算します。
(計算例)
 売掛金     1,000万円
+ 受取手形    2,000万円
+ 棚卸資産 3,000万円
– 支払手形 1,500万円
– 買掛金 1,500万円

=運転資金(正味運転資本) 3,000万円…①

経常利益    300万円
減価償却費   100万円
法人税等    120万円

経常利益+減価償却費-法人税等=280万円…②

借入金     8,000万円…③

債務償還年数17.9年=(③8,000万円-①3,000万円)÷②280万円

債務償還年数は短いほど健全といえ、その目安は次のとおりです。
7年以内:健全
10年以内:健全の上限
10年超:借入が多い(やや危険)
20年超:抜本的な改善が必要(現状では返済が難しい水準)

上記の計算例のように、借入金月商倍率では健全とみえても債務償還年数では危険となることがあります。この違いは利益(キャッシュフロー)です。
債務償還年数は企業の返済能力であるキャッシュフローによって借入の限度を判定するため、融資の審査などで重視されています。

債務償還年数が10年を超えるなどの場合は、金融機関から円滑に借入するために自社の見通しを具体的に伝える事業計画書の作成が必要です。
業績の推移と改善策、そして借り入れ後の具体的な損益の見通しを事業計画書に落とし込み、今後の返済に問題がないことを説明します。

融資を受けられる金融機関

政府系金融機関

政府系金融機関とは、経済の発展と安定を目的として設立された公的な金融機関です。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などがあります。

日本政策金融公庫は国の制度融資のみを取り扱う公的な金融機関です。主な特徴は次のとおりです。

・預金や手形割引などがない
・民間金融機関では審査のハードルが高い小規模事業者や創業予定の方、農業など1次産業の企業であっても対応可能
・融資制度によっては金利が低いことがある
商工組合中央金庫は公的な金融機関の性格をもっており、中小企業や個人事業主向けの融資などをおこなっています。商工組合中央金庫の主な特徴は次のとおりです。

・預金や手形割引など、銀行と同じサービスが提供されている
・融資を受けるためには、株主となっている中小企業団体の会員であることが必要