今さら聞けない!エンジェル投資家とは

2023年8月9日

資金調達方法について調べたことのある人は「エンジェル投資家」という存在をご存じだと思います。
しかしすべての経営者が正しい情報と知識を身に付けていらっしゃるとは限りません。
今回はエンジェル投資家とは何者か、出資を受けるために必要なことは何か、について詳しく解説していきます。

エンジェル投資家とは

エンジェル投資家とは、起業間もないベンチャー企業に投資し、投資した以上のリターンを得ることを目的とした個人投資家のことをいいます。そしてそのリターンを、次の「金の卵」に投資することを事業スタイルとしています。

ベンチャー企業は過去の実績がないことから、資金調達が必要な場面で銀行などから融資を受けることが難しいものです。しかしベンチャー・キャピタル(VC)やエンジェル投資家は、このような起業間もないベンチャー企業に対しても、積極的に出資してくれる可能性があります。

ちなみに、なぜ「エンジェル」と呼ばれる理由については、その投資家の投資が「困っている者を、天使のように救ってくれるからだ」ということに由来していると言われています。

エンジェル投資の意味

エンジェル投資家については「個人銀行」のようなイメージを持ち、お金の出し方もそれほど変わらないのではないかと考えている人がいますが、エンジェル投資家と銀行は、全く異なった考え方に基づく事業スタイルです。

まず、銀行が出すお金は「融資」で、エンジェル投資家が出すお金は「投資」です。
銀行から融資を受ければ、そのお金は返さなくてはなりませんが、エンジェル投資家から出資を受けたお金は、原則として返す必要がありません。

エンジェル投資家はなぜ投資をするのか

エンジェル投資家は、投資したお金を企業から直接回収せず、将来そのベンチャー企業が株式上場した際の出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としています。

たとえば、かつてのアップルやグーグル、マイクロソフトやフェイスブックも同様です。
これらの世界的な企業も、スタートアップ当時は、独自のプロダクトを開発していたものの、ごく少数のユーザーが使っているに過ぎない未上場企業で、当時は会社の評価も低かったのです。
しかし、この投資リスクの低い会社に投資をする賭けをするのが、エンジェル投資家です。

マイク・マークラというアメリカの投資家は、創業間もないアップルコンピュータへ投資し、アップル株式の3分の1を買い占め、二代目の社長を務めました。ドイツ出身のコンピュータ技術者であり実業家でもあるアンディ・ベクトルシャイムは、グーグルがまだ会社になる前から20万ドルを投資しました。
そして、これらの「賭け」が見事に成功をおさめたのは、周知の事実です。
ただ、エンジェル投資家のなかには、賭けという気持ちがなく、純粋に「起業家のビジネスに共感し、社会の課題を解決したいという思いをサポートしたい」という思いから投資をする人も多くいるのも事実です。

エンジェル投資と一般的な投資との違い

一般の投資家は、企業が安定して利益を生むように成長し、株式の配当という形で継続的に利益を売ることを期待しています。
しかし、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルなどは、このような形を望みません。その企業が他の企業に買収されるか自ら上場するかといった「エグジット」の時点で損益を確定したいと考えています。つまり、継続的かつ安定した利益についてはあまり期待していません。

エンジェル投資家は上場を目指さない経営者に興味はない

これまでもご紹介してきたとおり、エンジェル投資家は企業にお金を貸して金利を得ることを目的としているのではなく、上場や事業買収などによるキャピタルゲインを得ることを目的としています。
したがって、「上場など考えていない」という起業家には、エンジェル投資家が出資してくれることはありません。そのような場合には、クラウドファンディングの活用など、他の資金調達を検討した方が現実的でしょう。

起業直後で投資してもらうのは難しい

起業前の段階を「シード(種)ラウンド」と言いますが、この時点で出資してくれるエンジェル投資家はなかなかいません。アメリカでは、シードラウンドの段階で投資するインキュベーターも存在しますが、日本ではこのようなシステムはほとんどありません。
「自己資金はないけど、大きな夢と情熱とビジネスアイデアがある。だから出資してほしい」と訴えて資金を出してくれるのは、知人や親、兄弟といった関係者である場合がほとんどです。
まったく見ず知らずのエンジェル投資家と接触して面談し交渉を重ねても、投資してくれる可能性はほとんどないと覚悟しておきましょう。

エンジェル投資家から投資を受けるためには

エンジェル投資は、創業間もない企業にとって資金調達を実現できる数少ないチャンスです。では、エンジェル投資家から投資を受けるためにはどうすればよいのでしょうか。

まずはエンジェル投資家と出会うこと

あたり前のことですが、エンジェル投資家に投資をしてもらうためには、エンジェル投資家と出会うことが必要です。
エンジェル投資家とマッチングを行っているセミナーに参加するなどの方法もありますが、「この人に投資してほしい」という具体的な希望があるなら、直接SNSを活用してコンタクトを取ってみるのも有効です。
なかにはホームページを見て問い合わせをして交渉をした人もいますし、エンジェル投資家が主催するビジネスコンテストを活用して投資を受けることに成功した人もいます。

エンジェル投資家にはいつ会うべきか

先ほど、起業前のシードラウンドでエンジェル投資家と面談しても、投資を受けることは難しいとご紹介しました。
ただし、シードラウンドの次の段階「アーリーステージ」では、エンジェル投資家の投資を受けるチャンスがあります。
事業計画に粗さがあっても製品やサービスが魅力的であれば、エンジェル投資を受けることができるうえに、エンジェル投資家の人脈やノウハウの支援(ハンズオン)を受けて事業を成長させることができます。
実際にはこのアーリーステージで資金不足の状況になる企業が多いため、シードラウンドの段階でエンジェル投資家を探し始めることをおすすめします。

エンジェル投資家との面談前に必要な書類

エンジェル投資家と面談する前には、さまざまな書類の提出を求められます。
どのような書類を求められるかは、エンジェル投資家にもよりますが、一般的な例として知っておきましょう。

・会社謄本
・直近2カ月分の試算表
・直近の決算書2期分
・販売管理費明細表
・株主名簿
・定款
・役員名簿と個々の役員の経歴
・主要取引先リスト
・直近の銀行残高と借入残高
・ホームページのURL
・会社案内パンフレット(あれば)
・株価算定表
・事業計画書
・資本政策表
・発行株式の概要

エンジェル投資家の活用方法

エンジェル投資家は、「この会社は成功する確率が高い」と見込むからこそ、お金を出します。
起業間もない段階では、自社のビジネスに熱い思いを持ち業界の知識は豊富でも、経営経験は乏しく財務や法務に手が回っていないことも多いはずです。また、自社の製品やサービスに自信を持っていてもどこに営業をすればいいのかという戦略が足りない場合もあります。
そのような時、エンジェル投資家のノウハウや人脈を活用して事業を成功させることが期待できます。

また、追加の運転資金が必要な時にもサポートを受けられる可能性があります。
起業してから上場まで、何のトラブルもなく伸びていくケースはほとんどありません。
想定外の事態が生じて追加の運転資金が必要となることもあるでしょう。そのような時には、エンジェル投資家に追加出資を求めることもできます。エンジェル投資家としても、これまでの投資を無駄にしたくはないので、応じてくれるケースが多いです。

もちろん、エンジェル投資家の関与はなるべく避けたいという経営者もいるでしょう。その場合には、事前にエンジェル投資家と入念に交渉し契約を締結することが大切です。
ここでミスマッチがあると、後々大きなトラブルに発展してしまうこともあるからです。

エンジェル投資家が面談で重視するポイント

これまで何度もご紹介してきたように、エンジェル投資家は、出資金のキャピタルゲインを得ることを目的としていますから、将来性の高い企業に投資を行いたいと考えます。将来株式上場を目指さないような企業については、いかに事業の成長性・収益性に魅力を感じたとしても、投資を行う対象とはなりません。

エンジェル投資家が投資したいと思う起業家は、「成功させる強い意思」と「ビジネス事態の魅力」を投資家にきちんと示すことができる人間であることが何よりも重要ということになります。

まとめ

以上、エンジェル投資家から出資を受けるために必要なことについてご紹介しました。
起業家が、熱い想いから株式公開を目指そうとしても、起業したばかりで十分な事業資金を元に事業開始をできることは珍しいでしょう。
しかし、事業を拡大するためには事業資金が必要です。そして、その事業資金を確保するためのひとつの方法として、エンジェル投資家から出資を受ける方法ということです。

エンジェル投資家からの出資を成功させるためには、まずエンジェル投資家をうならせるほどの「成功させる強烈な意思」と「ビジネスの魅力」を伝えることが必要です。