エンジェル投資のデメリットとは?個人投資家が知っておくべきリスクと注意点
2025年10月17日
近年、日本でもスタートアップ支援の一環として「エンジェル投資」に注目が集まっています。
エンジェル投資とは、将来有望なベンチャー企業や起業家に対して、個人が自らの資金を投じる投資活動のことを指します。成功すれば数十倍以上のリターンを得る可能性がある一方で、当然ながら大きなリスクも伴います。
ここでは、エンジェル投資の「デメリット」や「リスク面」、そして投資を行う際に注意すべきポイントを詳しく解説します。夢のある投資だからこそ、冷静な判断が不可欠です。
1. エンジェル投資は「高リスク・高リターン」
まず押さえておきたいのは、エンジェル投資は極めてリスクの高い投資形態であるという点です。
投資対象となるのは創業初期のスタートアップが中心であり、まだ事業が軌道に乗っていないケースが大半です。統計的にも、創業5年以内に約半数の企業が廃業していると言われており、出資した企業が倒産すれば投資資金はほぼ回収不能になります。
株式投資のように上場市場で売買できるわけではないため、「途中で売却して損切りする」といった選択も基本的には不可能です。つまり、一度投資したら長期間資金が拘束されることを理解しておく必要があります。
2. 流動性が低く、現金化が困難
エンジェル投資の最も大きなデメリットの一つが「流動性の低さ」です。
上場株式や不動産投資信託(REIT)のように市場で売却できる仕組みが存在しないため、基本的には会社が上場する(IPO)か、他の企業に買収される(M&A)まで資金を回収できません。
そのため、投資した資金が5年、10年と拘束されることも珍しくなく、資金計画を誤ると生活資金や他の投資に悪影響を及ぼすこともあります。特に、短期的なリターンを期待して参入するのは非常に危険です。
3. 情報の非対称性が大きい
未上場企業への投資は、投資家が得られる情報が非常に限られています。
財務諸表が整っていない、業績の予測が不透明、経営者の力量が未知数など、「判断材料の少なさ」は大きなリスク要因です。
投資判断の多くが経営者への信頼や将来のビジョンに基づくため、感情的な判断に流されやすい側面もあります。
また、スタートアップは事業の方向転換(ピボット)を頻繁に行うため、初期のビジネスモデルがそのまま維持されることは稀です。投資時に想定していた収益構造が大きく変わることもあり、情報格差と柔軟な対応力の欠如が損失につながることもあります。
4. 投資先の経営リスク
エンジェル投資では、経営者や創業チームの能力に大きく依存します。
特に創業初期の企業は人材不足、資金不足、ノウハウ不足など課題が山積みであり、たとえ革新的なアイデアがあっても実現できないケースが多々あります。
さらに、創業者のモチベーション低下や経営方針の対立、株主間トラブルなどの人的要因によるリスクも無視できません。
たとえ優れたビジネスモデルであっても、経営体制の脆弱さによって倒産に至ることもあるのです。
5. 税務・会計処理の複雑さ
エンジェル投資によって得られる利益や損失は、通常の株式投資と異なる税務上の扱いを受けることがあります。
特に未上場株式の場合、評価額の算定や確定申告の処理が複雑になることも多く、専門家のサポートが必要になる場合があります。
また、企業が倒産した場合に損失を計上するタイミングや方法も明確でないケースがあり、税務処理の煩雑さは個人投資家にとって大きな負担となります。
節税目的でエンジェル投資を行う場合も、制度の詳細を理解していないと逆効果になる恐れがあります。
6. 投資判断が感情に左右されやすい
エンジェル投資は、単なる資金提供ではなく「人への投資」という性格を持ちます。
そのため、起業家の情熱やビジョンに共感しすぎて冷静な判断を欠いてしまうことが少なくありません。特に、友人や知人からの依頼で出資する場合、ビジネスとしての合理性よりも人間関係を重視してしまうリスクがあります。
結果として、ビジネスモデルの欠陥や収益性の低さを見逃し、資金を失うケースも多く見られます。エンジェル投資においては、「応援」と「投資」をしっかり分けて考えることが重要です。
7. 投資後のフォローが必要になる
エンジェル投資では、単に資金を出して終わりではありません。多くの場合、投資家はアドバイザーとして経営支援を求められることがあります。
事業計画の助言、人脈の紹介、追加出資の検討など、時間的・精神的なコミットメントが必要です。
もし投資家としての経験や知識が十分でない場合、起業家との関係がこじれたり、支援がうまく機能しなかったりするリスクもあります。
つまり、資金だけでなく「人的リソース」も消費する可能性があるという点を忘れてはいけません。
8. エンジェル投資のデメリットを抑えるための対策
とはいえ、リスクを完全に排除することはできませんが、次のような対策を取ることで損失の可能性を減らすことは可能です。
① 分散投資を行う
複数のスタートアップに少額ずつ投資することで、一社の失敗による損失を軽減できます。
海外の経験豊富なエンジェル投資家は、平均10社以上に分散投資していると言われます。
② 投資先の経営者と十分な対話を行う
ビジネスモデルよりも「誰が経営するか」を重視し、信頼できる起業家に投資することが重要です。
③ 契約内容を明確にする
出資比率や株主権の範囲、将来的な追加出資の有無などを契約書で明確化し、トラブルを防ぎます。
④ 専門家のサポートを受ける
弁護士・公認会計士・ベンチャーキャピタル出身者など、経験豊富な専門家に相談することでリスクを可視化できます。
⑤ 税制優遇制度を活用する
日本では「エンジェル税制」により、一定の条件を満たす投資に対して所得控除や譲渡益非課税の優遇が受けられます。制度を正しく理解しておくことが重要です。
9. まとめ:夢のある投資ほど、現実を直視することが大切
エンジェル投資は、単なる資産運用ではなく、未来の産業や起業家を育てる社会的意義の高い投資です。
しかし同時に、**資金の大部分を失う可能性がある「ハイリスク投資」**であることを忘れてはいけません。
「応援したい」という気持ちだけでなく、冷静な目で企業の成長可能性・経営者の資質・契約条件を見極める力が求められます。
情熱と慎重さ、その両方をバランス良く持つことこそが、エンジェル投資家として成功するための第一歩です。
