モアタイム銀行とは?即時振込を支える次世代送金システムの仕組みとメリットを解説

2025年10月7日

近年、キャッシュレス決済やネットバンキングの普及に伴い、「24時間いつでもお金を送れる」仕組みが当たり前になりつつあります。かつては「銀行の振込=平日昼間しかできない」というのが常識でしたが、現在では深夜でも休日でも、ほとんどの銀行間で即時に振込が完了します。
この“いつでも送金できる”便利な仕組みを実現しているのが、「モアタイムシステム(More Time System)」です。そして、このシステムに対応している金融機関は、一般的に「モアタイム対応銀行」と呼ばれます。

この記事では、「モアタイム銀行」とは何か、その仕組み、対応している銀行、利用するメリット・注意点などを、初心者にもわかりやすく詳しく解説していきます。

モアタイムシステムとは?

モアタイムシステムとは、全国銀行資金決済ネットワーク(通称:全銀ネット)が2018年12月に運用を開始した、24時間365日対応の即時振込決済システムのことです。
従来の銀行振込では、平日の午前8時半〜午後3時半までしか即時振込ができず、それ以外の時間帯は翌営業日扱いとなっていました。

たとえば、金曜日の夜に振込をした場合、実際に相手の口座に反映されるのは翌週の月曜日というケースが一般的だったのです。
しかしモアタイムシステムの導入により、夜間や休日でもリアルタイムに送金できるようになりました。

つまり、「モアタイム対応銀行」とは、このシステムを導入している銀行を指します。多くのメガバンクや地方銀行、ネット銀行がすでに対応しており、利用者にとっては非常に便利な環境が整いつつあります。

モアタイムの仕組み

モアタイムシステムは、全国の金融機関同士をオンラインで結ぶ「全銀システム」の拡張版です。
全銀システムとは、日本国内のほぼすべての銀行間で資金決済を可能にしている中核的なインフラであり、モアタイムはその機能を拡張して“営業時間外も稼働できるようにした”ものといえます。

振込データは、送金元の銀行から全銀ネットを経由して受取銀行に即時送信され、数秒以内に着金します。
つまり、モアタイムは「銀行間送金のリアルタイム化」を実現するためのデジタル通信基盤なのです。

モアタイム対応銀行の例

2025年時点では、多くの銀行がモアタイムに対応しています。たとえば以下のような金融機関です。

・三菱UFJ銀行

・三井住友銀行

・みずほ銀行

・りそな銀行・埼玉りそな銀行

・PayPay銀行

・楽天銀行

・auじぶん銀行

・イオン銀行

・地方銀行(横浜銀行、静岡銀行、福岡銀行など多数)

・信用金庫・労働金庫・信用組合の一部

このように、全国的に主要な銀行の多くがモアタイムに対応しており、個人・法人を問わず広く利用できる環境が整備されています。

モアタイム銀行のメリット

① 24時間365日いつでも即時振込が可能

モアタイム最大の特徴は、やはり時間に縛られないことです。
深夜の急な支払い、休日の送金、またはネットショッピングでの決済など、あらゆるシーンで即時に振込を完了させることができます。
これにより、ビジネスシーンでも資金の流れを止めることなくスムーズな取引が可能となりました。

② 法人取引のスピードが向上

企業間取引では、支払いが翌営業日にずれ込むことによって発生する「資金繰りのタイムラグ」が課題でした。
モアタイムにより、振込確認や入金確認のスピードが大幅に向上し、即日決済を前提としたビジネスモデルの構築が可能になりました。特に中小企業やフリーランスにとっては、資金回転の改善という大きなメリットがあります。

③ 緊急時にも安心

家族や友人への急な送金、トラブル時の支払いなど、従来なら「翌営業日まで待たなければならなかった」ケースでも、即座に振込が完了します。災害時や海外送金が難しい場合の代替手段としても役立ちます。

④ キャッシュレスとの親和性が高い

モアタイムシステムは、キャッシュレス社会の発展にも貢献しています。
スマホ決済アプリやオンラインバンキングと連携することで、リアルタイムの送金やチャージが可能になります。特に「PayPay銀行」「楽天銀行」などはモアタイム対応をいち早く進め、個人間送金の利便性を高めています。

モアタイムを利用する際の注意点

便利なモアタイムにも、いくつかの注意点があります。

① すべての銀行が完全対応しているわけではない

モアタイムシステム自体には全国多数の金融機関が参加していますが、一部の地方銀行や信用組合では夜間や休日に対応していない場合もあります。
そのため、「送金元がモアタイム対応でも、受取先が非対応だと即時反映されない」というケースがある点に注意が必要です。

② システムメンテナンス時間がある

理論上は「24時間365日対応」ですが、実際には各銀行が独自のシステムメンテナンス時間を設定しており、その間は振込が一時停止されることがあります。特に深夜の時間帯(午前2〜4時など)は停止するケースが多いです。

③ 振込手数料は変わらない場合が多い

モアタイム対応だからといって、振込手数料が安くなるわけではありません。多くの銀行では、通常の振込と同額の手数料が発生します。
ただし、ネット銀行同士の取引や特定の会員プランを利用している場合は、無料や割引になるケースもあります。

④ 海外送金には対応していない

モアタイムは国内銀行間の決済システムであるため、海外送金や外貨建ての取引には対応していません。海外への送金は引き続きSWIFTネットワークなど別の仕組みを利用する必要があります。

モアタイムの今後と日本の送金インフラの進化

モアタイムの導入により、日本の送金環境は大きく変化しました。かつての「銀行の営業時間内にしか送金できない」という常識は、もはや過去のものとなりつつあります。
さらに近年では、モアタイムとAPIを連携させた「即時入金確認システム」や「自動入金処理サービス」などが登場し、企業の経理処理も効率化が進んでいます。

特にフィンテック企業がモアタイムを活用するケースは増加しており、個人間送金アプリ(例:LINE Pay、PayPay、メルペイなど)の多くがモアタイムを基盤に動いています。
今後は、銀行だけでなく決済事業者・ECサイト・フリーランス向けサービスなど、多方面でリアルタイム送金が標準機能になると見られています。

海外との比較:日本の送金システムの強み

海外でもリアルタイム送金は広がっていますが、日本のモアタイムシステムはその中でも信頼性・安全性の高さが評価されています。
たとえば欧州では「SEPA Instant」、米国では「FedNow」などの即時決済システムが運用されていますが、いずれも国や地域によって運用ルールが異なり、完全な相互接続には課題が残っています。
一方、日本のモアタイムは全国の銀行が共通規格で接続しており、個人・法人を問わずスムーズに資金移動ができる点が強みといえるでしょう。

モアタイムがもたらす社会的意義

モアタイムは単なる技術革新ではなく、「時間の制約から人々を解放する仕組み」です。
特に中小企業や個人事業主にとって、取引先への即時支払いができることは信用力向上にもつながり、資金繰りの柔軟性を大きく高めます。

また、個人間でも「今すぐ助けたい」「すぐに感謝を伝えたい」といった想いを、時間に縛られずに実現できるようになりました。これは、デジタル社会における“信頼の可視化”にも通じる重要な変化です。

まとめ|モアタイム銀行で「時間に縛られないお金の動き」を実現

モアタイム銀行とは、24時間365日リアルタイムで振込ができる「モアタイムシステム」に対応した金融機関のことを指します。
平日・休日・深夜を問わず、即座に資金移動ができるようになったことで、私たちの生活やビジネスはよりスピーディーで柔軟になりました。

今後もフィンテックの発展に伴い、モアタイムを活用した新しい金融サービスが続々と登場することが予想されます。
「お金が動く時間の制約をなくす」というモアタイムの思想は、まさにこれからのデジタル時代の金融インフラの中心的存在といえるでしょう。