売掛債権担保融資とファクタリングの違いについて詳しく解説!

2025年1月9日

売掛債権担保融資とファクタリングの違いについて、疑問に思っている方もいるでしょう。

どちらも売掛債権を活用した資金調達方法ですが、ファクタリングとは異なる資金調達方法です。

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングとの一番大きな違いは、「売掛債権(売掛金)の扱い方」です。

ABLでは売掛債権を担保に入れてお金を借り入れる方法ですが、ファクタリングでは、売掛債権を譲渡して現金化(資金化)する方法となります。

売掛債権担保融資(ABL)とは?

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いを理解するためには、まずはABLとは何かを正しく理解しなくてはいけません。

そもそもABLとは、不動産(土地や建物)以外の財産を担保に入れて融資を受けられる融資制度のことです。

通常の融資と売掛債権担保融資(ABL)の仕組み
ABLとは、「アセットベースドレンディング」を略したもので、日本語にすると「動産担保融資」です。

通常の融資では、土地や建物などの不動産を担保に入れてお金を借ります。

しかし、ABLでは売掛債権や在庫などの動産(不動産以外の財産)を担保に入れてお金を借りることが可能です。

担保に入れられる不動産はないけれど融資を受けて資金調達したい、と考える会社にとって役立つ資金調達方法として注目されている金融商品です。

ABLを利用できるのは、銀行や信用金庫などの金融機関、ノンバンクなどの貸金業者です。

ABLの利用を検討している場合は、まずは自社と取引のある銀行や信用金庫に相談し、売掛債権を担保に入れて融資が受けられるかを確認してみましょう。

ファクタリングは売掛債権を譲渡して資金調達する手法

ファクタリングは売掛債権(売掛金)を活用した資金調達方法の一つで、ファクタリング会社に売掛債権を譲渡し、支払期日前の売掛金を現金化(資金化)します。

売掛債権を担保に融資を受けるABLと違い、ファクタリングは融資ではないため、ABLとは仕組みや審査基準などが異なる点に注意が必要です。

売掛債権を活用した資金調達を検討する際は、それぞれの仕組みをよく理解しておく必要があります。

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違い

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングは、異なる資金調達方法のため調達コストや審査、資金調達のスピードなどに違いがあります。

契約の内容

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの大きな違いは契約内容です。

ABLは、売掛債権や在庫などの動産(不動産以外の財産)を担保に入れてお金を借りる金銭消費貸借契約です。

銀行や信用金庫の中でABLを取り扱っている金融機関に申し込みを行い、融資を受けます。

融資ですので、会社の信用力(借りたお金を返済できる能力)に対する審査が必要です。

そのため、資金調達までにかかる時間も長く、赤字や税金の滞納があると利用できません。

それに対してファクタリングは、売掛債権を売却して、本来の入金時期よりも早く資金調達を行う売買契約となっています。

売掛債権を売却できるのはファクタリング会社です。

ファクタリングは売買契約ですから、売掛債権を売却して資金化した後、売却した売掛債権を回収すれば終了と短期で契約が完了します。

赤字や税金の滞納があっても利用できるのが特徴です。

ABL:契約内容が融資なので、自社の信用力に対する審査を受けなければならない
ファクタリング:契約内容が売買なので、自社の信用力に関係なく資金調達できる

資金調達に使える財産

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングは、資金調達に使える財産も異なります。

ABLでは売掛債権のような債権以外にも、

◎在庫商品
◎機械設備
◎社用車などの車両
◎農産物や畜産物

などの動産(不動産以外の財産)を担保として使うことができます。

それに対してファクタリングでは、売掛債権のみが対象です。

使える財産が多いというのがABLの特徴となります。

ABL:売掛債権以外の在庫、機械設備、社用車、農産物や畜産物も担保として使える  
ファクタリング:売掛債権しか使えない

資金調達できる額

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いの3つ目は、資金調達できる額の上限です。

ABLで資金調達できる額は、借入する金融機関の審査によって異なります。

担保にいれることができるのは、先ほど紹介したように売掛債権の他、在庫や社用車なども含まれます。

そのため売掛債権の額に加えて、在庫や材料など担保に入れられるものすべての総額の評価額によって借り入れできる額が変わるのです。

担保となる資産の評価額が高ければ、資金調達できる額の上限も上がります。

それに対してファクタリングは売掛債権を売却することで資金調達を行うことになります。

そのため、売却する売掛債権の額以下しか資金調達を行うことはできません。とはできません。

ABL:売掛債権の額以上の資金調達が可能
ファクタリング:売掛債権の額以下しか資金調達できない

審査

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いの4つ目は、審査の対象や審査の厳しさです。

ABLは売掛債権を担保に入れた融資ですから、担保の評価だけでなくABLを申し込んだ会社の信用情報や経営状態も審査対象です。

どれだけ売掛債権の評価が高くても、申し込みをした会社の信用情報が悪い場合は審査が通らないことがあります。

審査はファクタリングと比較すると厳しめと言えます。

ファクタリングは売掛債権を売却する契約ですから、審査の対象となるのは売掛先の信用情報です。

売掛先の信用情報や経営状態がよければ、申し込みをした会社の信用情報を問われることはありません。

信用情報が悪い、すでに借入がある場合でも利用できるのがファクタリングの特長となります。

売掛債権があれば審査は通りやすいため、ABLと比較すると審査がやさしいと言えるのです。審査がやさしいと言えるのです。

ABL:審査は厳しい(赤字や税金滞納があると通らない)
ファクタリング:審査はやさしい(赤字や税金滞納があっても利用できる)

資金調達までのスピード

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いの5つ目は、資金調達までのスピードです。

ABLでは申し込みをした会社の信用情報や担保の価値を審査するため、審査に2週間から3週間はかかります。

そのため申し込みをしてから実際に資金が手元に入るまでは最短で2週間はかかるのです。

それに対してファクタリングは、売却する売掛債権の価値や売掛先の信用情報を審査します。

審査は最短30分で行えるファクタリング会社もあり、申し込みから最短でその日のうちに資金を調達することが可能です。

ABL:資金調達まで最短で2週間はかかる
ファクタリング:最短即日で資金調達できる

利息や手数料の相場

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いの6つ目は、利息や手数料の相場です。

ABLは融資ですから、利息を支払う必要があります。

利息は借り入れを行った金融機関や会社の信用情報などによって変わりますが、年利2%~10%程度が相場です。

また、利息の上限は貸金業法で規制されており、最大で年利20%となっています。

それに対してファクタリングは融資ではないため、利息ではなく手数料を支払います。

また、手数料の上限に規制がなく、ファクタリング会社によって手数料は様々です。

手数料の相場は、

◎2者間ファクタリングで8%~18%程度
◎3者間ファクタリングで2%~9%程度

となります。

ABLの利息とファクタリングの手数料では、ファクタリングの手数料の方が高くなる傾向があります。

あらかじめ利息や手数料についても考えた上で、利用する資金調達法を選ぶと良いでしょう。

ABL:年利2%~10%が相場(最大で年利20%まで)
ファクタリング:◎2者間ファクタリングで8%~18%程度
        ◎3者間ファクタリングで2%~9%程度 が相場

売掛先が倒産した場合

売掛債権担保融資(ABL)とファクタリングの違いの7つ目は、売掛先が倒産した場合の対応です。

ABLでは売掛債権を担保に入れて融資を受けているため、売掛先が倒産して売掛金(売掛債権)が回収できなくなった場合は担保の価値がなくなり、金融機関に借りたお金を返済しなくてはならなくなってしまいます。

それに対してファクタリングでは、基本的にノンリコース契約(償還請求権がない契約)となるため売掛先が倒産した場合もファクタリング会社に売掛金を支払う必要はありません。

そのため売掛先が倒産しても、自社にはダメージがなく、連鎖倒産のリスクを防ぐことができます。

ファクタリングと比較した場合の売掛債権担保融資(ABL)のメリット

ファクタリングと比較して、売掛債権担保融資(ABL)にはコストの面でメリットがあります。

また、担保の対象となる範囲が広いことも特徴です。

ここでは、ファクタリングと比べた場合のABLのメリットを詳しく解説します。

ファクタリングの手数料より利息が安い

売掛債権担保融資(ABL)を利用するメリットは、ファクタリングを利用した時に支払う手数料よりも、ABL利用時に払う利息の方が安くなりやすいという点です。

ABLの利息は金融機関によっても異なりますが、年利2%~10%が相場となっています。

例えばABLを利用し、100万円を1年間借り入れした場合、年利2%であれば支払う利息の額は2万円です。

それに対して100万円の売掛債権を2者間ファクタリングで手数料10%で売却した場合、支払う手数料は10万円となります。

支払う額が安いというのはABLを利用する最大のメリットです。

売掛債権以外の財産を担保に利用できる

売掛債権担保融資(ABL)を利用するメリットの2つ目は、売掛債権以外にも、在庫や機械設備などの動産を担保として利用できるという点です。

ファクタリングは売掛債権がないと利用できませんが、ABLは在庫や機械設備なども活用できるため、利用できる企業の幅が広くなっています。

売掛債権の額は少なくても、在庫や機械設備などをたくさん持っている会社であればABLの方が資金調達しやすいというのはメリットです。

ファクタリングと比較した場合の売掛債権担保融資(ABL)のデメリット

売掛債権担保融資(ABL)には、ファクタリングと比べたときにデメリットもあります。

資金調達の目的によってはファクタリングを選んだほうが有利になるケースもあるでしょう。

ここでは、ファクタリングと比較した場合の、ABLのデメリットを詳しく解説します。

資金調達まで時間がかかる

売掛債権担保融資(ABL)を利用するデメリットは、資金調達ができるまでに時間がかかってしまうという点です。

ABLでは、

◎会社の信用情報
◎担保の価値

を審査するため、最短でも資金調達までに2週間はかかります。

ファクタリングは最短即日であることと比べると、資金調達までにかなり時間が必要となってしまい、緊急の資金調達に対応しきれないのはデメリットです。

売掛先の倒産による連鎖倒産のリスクがある

売掛債権担保融資(ABL)を利用するデメリットの2つ目は、売掛先が倒産した場合、担保の価値がなくなってしまい、金融機関から借りたお金を返済する必要があるため、連鎖倒産してしまうリスクがあるという点です。

ABLでは売掛債権は担保に入れただけで、回収するのは自社の役割です。

売掛債権を回収できない状態で売掛先が倒産してしまえば、回収は不可能になってしまいます。

さらに担保としての価値がなくなってしまうため、貸し倒れを防ぐため、ABLを借り入れた金融機関は返済を求めてきます。

この時、返済ができなければ連鎖倒産してしまうこともある、というのが大きなデメリットです。

会社の信用情報によっては審査に通らない可能性がある

売掛債権担保融資(ABL)は貸し付け(融資)に当たるため、審査では自社(利用会社)の信用力が重要視されます。

例えば、以下のような状況では審査に通らない可能性があるでしょう。

◎会社の経営状態が赤字である
◎税金を滞納している
◎すでに多額の借り入れをしている
◎創業したばかりで会社の実績がない

これは、売掛先の信用力が重要視されるファクタリングとの大きな違いです。

ファクタリングの場合は、自社(利用会社)の信用力がない状態でも売掛先の信用力があれば審査に通る可能性があります。

ABLで融資を受けられなかった売掛債権でも、ファクタリングなら資金調達できるケースもあるでしょう。

そのため、自社の経営状況によってはファクタリングを選んだほうが良い可能性があります。