売掛金を分割払いで回収する方法と弁護士に相談すべき理由
2025年8月24日
事業を営んでいると、取引先からの売掛金の回収に悩まされる場面は少なくありません。とくに資金繰りが苦しい取引先から「一括では払えないので、分割払いにしてほしい」と頼まれるケースは多く見られます。
売掛金は企業の資金繰りに直結するため、安易に分割払いを認めると、未回収リスクが増してしまいます。しかし、一方的に拒否すれば取引関係が悪化し、将来的なビジネスチャンスを失う可能性もあります。
そこで重要になるのが、法的に有効な形で分割払いの合意を取り付け、必要に応じて弁護士に相談することです。本記事では、売掛金を分割払いにする際の注意点と、弁護士に依頼するメリットを詳しく解説します。
売掛金を分割払いにできるのか?
売掛金の基本
売掛金とは、企業が商品やサービスを提供したものの、まだ代金を受け取っていない債権のことです。契約書や請求書で定められた期日までに一括で支払われるのが原則ですが、取引先の資金状況によっては一括払いが難しいこともあります。
分割払いが選択肢になるケース
・取引先が一時的な資金難に陥っている場合
・長期的な取引関係を維持したい場合
・裁判になっても回収できる見込みが薄い場合
こうしたケースでは「一括で払ってもらえないなら倒産してしまう」「少しずつでも回収したほうが良い」という判断から、分割払いを認めることがあります。
分割払いに応じる際のリスク
・未回収リスクの増加
分割払いは債務者に猶予を与える分、途中で支払いが途絶える可能性があります。その結果、売掛金を全額回収できずに取引先が倒産することもあります。
・合意の不履行
口頭での約束に頼ると「そんなことは言っていない」と反故にされるリスクがあります。必ず書面で合意を残す必要があります。
・時効の問題
売掛金の回収には消滅時効があります。通常は商取引の場合5年(2020年4月の民法改正以降は原則5年)で時効にかかります。分割払いの合意をきちんと記録しなければ、時効完成により回収不能となる恐れがあります。
分割払いにする際の対応方法
1. 和解書や合意書の作成
分割払いを認める場合は、必ず 「和解書」「合意書」 といった正式な書面を作成しましょう。そこには以下の内容を盛り込みます。
・支払総額
・分割の回数・金額・支払期日
・遅延損害金の有無
・担保や保証人の有無
・支払いが滞った場合の一括請求条項
これにより、万が一の不払い時に法的手段を取りやすくなります。
2. 公正証書にしておく
単なる合意書では強制執行力がありません。弁護士を通じて 「強制執行認諾文言付き公正証書」 を作成しておけば、取引先が約束を守らなかったときに裁判を経ずに差押えが可能です。
3. 遅延損害金の設定
分割払いは本来の支払い期日より遅れるため、遅延損害金を設定するのが一般的です。法的に認められる範囲内で利率を定め、債権者の不利益を最小限に抑えましょう。
弁護士に相談すべき理由
1. 法的に有効な合意書の作成
弁護士は法律の専門家として、裁判で通用する形式の合意書を作成できます。自分で雛形を作ると抜け漏れが生じ、いざというときに効力を発揮しない可能性があります。
2. 取引先との交渉を代行
分割払いをめぐる交渉はデリケートです。感情的になったり、取引先との関係が悪化することもあります。弁護士が代理人として交渉に入ることで、冷静かつ法的根拠のある条件設定が可能になります。
3. 公正証書の作成支援
弁護士は公証役場での手続きをスムーズに進めることができます。公正証書にしておけば、万一の不払い時にすぐに強制執行できます。
4. 強制執行や訴訟対応が可能
司法書士は140万円以下の請求額に限定されますが、弁護士は金額の制限なく訴訟や強制執行に対応できます。多額の売掛金回収では、弁護士に依頼するのが確実です。
実際に弁護士へ依頼する流れ
1.相談予約
取引内容や売掛金の金額、取引先の状況を伝えて初回相談を受けます。
2.方針の決定
・一括請求か分割払いか
・裁判を起こすか話し合いで解決するか
を弁護士と一緒に決めます。
3.交渉・合意書作成
弁護士が代理人として交渉し、合意書や公正証書を作成します。
4.履行確認・強制執行
支払いが滞った場合は、速やかに差押えなどの強制執行に移ります。
まとめ
売掛金の分割払いは、一見すると取引先を助ける温情策のように思えますが、未回収リスクが大きいため慎重な判断が必要です。必ず合意書を作成し、公正証書化するなど法的に強制力を持たせることが重要です。
特に多額の売掛金や長期的な分割払いになる場合は、弁護士に相談することでリスクを大幅に減らせます。
弁護士は合意書作成から交渉、裁判や強制執行まで一貫して対応できるため、安心して売掛金回収に取り組むことができます。
「取引先に分割払いを求められた」「売掛金が回収できるか不安」という場合は、早めに弁護士に相談し、最適な回収方法を検討することをおすすめします。