ファクタリングの勘定科目!受取手形との違いを解説!
2025年1月14日
ファクタリングの勘定項目(勘定科目。今回は「勘定項目」で揃えます)は慣れていない、という方もいらっしゃるかもしれません。適切な仕訳の際には、適切な勘定項目を使う必要があります。
ファクタリングと似た債権の期日前資金化手法として、受取手形の割引があります。手形取引、受取手形はファクタリングよりも昔、明治時代から使われてきた方法です。受取手形の仕訳において、ファクタリングで用いられる勘定項目と違いはあるのでしょうか?
今回は受取手形、ファクタリングの仕訳や勘定項目について解説していきます。それぞれ、事前の資金調達として有効な手法になりますので、ぜひ覚えておいてください。
受取手形とは何?
受取手形について簡単に押さえておきましょう。
受取手形とは企業手形取引を行う際に取引先から振り出される(発行される)「為替手形」や「約束手形」を指します。
A社がB社にモノを売って、その代金を受取手形として受け取ったと仮定します。
手形の受取人(A社)は、手形の期日になったら、B社からもらった手形を銀行に持っていくと、手形に印字されている金額を銀行口座に振り込んでもらえます。
満額受け取るためには、A社とB社で合意、契約した支払日まで待ち、A社が受取手形を持って銀行で行かなければなりません。ファクタリングのようにA社はB社に対して、「手形の支払日に額面のお金を受け取る権利」を持っています。
しかし、ファクタリングと同じように、受取手形の期日までにお金が必要になった場合、換金できます。
これを手形割引と言います。
銀行に所定の手数料を支払えば、支払期日よりも前に資金調達できます。
つまり、ファクタリングにおけるファクタリング会社が受取手形における銀行、ファクタリング手数料が手形割引料という対応関係になります。
また、受取手形を譲渡する際には、受取手形に「裏書」(名前を自書する)して、他社(仕入先や支払先)へ譲渡できます。そうなると、資金化できませんが「期日に受取手形の報酬をもらえる権利」が譲渡先に移ります。
受取手形については、長い歴史の中で手形法など各種法律によって、その扱いが細かく定められています。受取手形の手形割引、裏書手形などは手形法の規定に合致するよう進めなければなりません。当事者間の自由な意思表示で済むファクタリングとは大きく異なります。
受取手形と売掛金(請求書払い)の違い
受取手形もファクタリングする際に譲渡する請求書も同じようなものでは?と思われるかもしれませんが、確かにすでに掛売買が成立し、契約業務完了後、指定日に代金授受を約束したもので、両者いずれも確定債権です。
受取手形と売掛金(請求書払い)の大きな違いは、第三者として銀行が関係するかどうかです。
受取手形は、手形作成の際に、銀行が協力して「B社はA社に〇日に△万円を支払う。A社は△万円を受け取る」というものを作成します。
「銀行のお墨付き」を得たうえで、手形を発行できるので、その法的安定性は高くなります。
また、手形割引による早期現金化も手形法に書かれており、何かトラブルになったときの法的保護もあります。
売掛金(請求書払い)の場合、請求書のフォーマットや書き方に法的な縛りはなく、当事者間の自由な意思表示で完結します。それを売却するファクタリングについても、民法に一般条項の適用のみで、厳しいレギュレーションはありません。
・法的に厳しく規定され自由にできないが、銀行が介在するため信用力があり保護もしっかりしている受取手形と手形割引
・法的には自由度が高く柔軟な運用が可能だが、何かあっても法が守ってくれない自己責任の請求書払いとファクタリング
というコントラストになります。
両者は仕組みとして似ているようで異なります。では、受取手形の手形割引と請求書のファクタリングを実行した時の仕訳、会計処理はどのように異なるのでしょうか?その際の勘定項目は別なのか同じなのか考えましょう。
ファクタリングと受取手形の勘定項目の異同
ファクタリングの際の「ファクタリング手数料」、および受取手形を割り引く際の割引手数料、それぞれの勘定項目は以下になります。
ファクタリング手数料の勘定項目
ファクタリングで売却する請求書については、言うまでもなく「売掛金」が勘定項目になります。
それを譲渡した際のファクタリング手数料は以下のようなものが使われます。
・売上債権(売掛金)売却損
・支払手数料
・割引料
・雑損失
支払手数料や雑損失は日常的に使う勘定項目でもあります。これらにまとめてしまっても問題ありません。会計ソフトによっては「売上債権(売掛金)売却損」の勘定項目が登録されていないものあるようです。
受取手形の勘定項目
受取手形自体の勘定項目は「受取手形」ですが、手形割引した際の手数料は以下の勘定項目になります。
・手形売却損
・支払利息割引料
以前は、融資の返済時の利息と同じく「支払利息割引料」で問題なかったのですが、財務諸表様式に改定(平成18年)にともない、「手形売却損」の勘定項目を使うように通達が出されました。支払利息(借入の返済)とは分けて考えるようにという会計基準の見直しです。
今でも「支払利息割引料」を使っていると即アウトということではないようですが、「手形売却損」の勘定項目を使うことが望まれます。
受取手形の割引は手形法に記載されているものですので、公的な指針は守らなければなりません。
一方ファクタリングについては私人間の自由な意思表示に基づく民法上の契約なので、仕訳の際の勘定項目についてもある程度融通が利きます。
まとめ
受取手形、および受取手形を使った資金調達方法である手形割引が古くからあり、手形法や各種判例で法規制、法的保護が徹底しています。「不渡り2回で事実上倒産」というのもルールとして確立しています。
手形取引については、国の方で電子取引に移行したい方針があります。それなら、わざわざ、難しい法律に適合するようにしなければならない受取手形ではなく、請求書払いにしてファクタリング契約を結んだ方が遥かに簡単です。
ファクタリングは現在進行形で、オンライン手続き、オンライン契約ができ、即日資金化も可能な状態です。勘定項目についても、ファクタリング手数料はさまざまなものが使えるため、「手形売却損」の勘定項目に統一する方向にある受取手形の割引とは異なります。
経営上の「遊び」がファクタリングにはできるので、勘定項目を有効活用できます。当事者間の自由な意思表示によって契約されるので、さまざまな面で融通が利きます。手形取引は行うまでのハードルも(銀行の審査などで)高く、それよりは売上債権(売掛金)の請求書払いの方が簡単かつ迅速にできます。それを利用したファクタリングがおすすめです。