ABLとファクタリング、どっちがいい?資金調達手段を徹底比較
2025年4月22日
企業の資金調達方法として近年注目されているのが「ABL(動産・債権担保融資)」と「ファクタリング」です。どちらも売掛債権などの資産を活用した手段ですが、その仕組みやメリット・デメリットは大きく異なります。
資金繰りを円滑にしたいと考えている中小企業や個人事業主にとって、「自社に合った資金調達方法はどちらなのか?」という判断は非常に重要です。本記事では、ABLとファクタリングの違いをわかりやすく整理し、どちらがより適しているのかを解説します。
ABL(動産・債権担保融資)とは?
ABL(Asset Based Lending)は、企業が保有する売掛債権や在庫、機械設備などの「資産」を担保にして金融機関から融資を受ける仕組みです。もともとは欧米で盛んに利用されていた手法で、近年は日本でも徐々に普及してきています。
ABLの大きな特徴は、固定資産だけでなく、流動資産(売掛債権や棚卸資産)も融資の担保として評価される点です。従来の不動産担保融資ではカバーできなかった中小企業でも、資産を活かして資金調達できるメリットがあります。
ファクタリングとは?
ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社に売却して資金を得る方法です。売掛先からの入金を待たずに現金化できるため、急な資金ニーズに対応しやすいのが特徴です。
ファクタリングには主に「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2種類があります。前者は売掛先に通知せずに利用でき、後者は売掛先に債権譲渡の通知が行われます。売掛先との関係性や秘密保持の観点から、どちらを選ぶかが重要です。
仕組みの違い|融資と債権売却
ABLとファクタリングの最も基本的な違いは、資金調達の性質にあります。ABLはあくまでも融資、つまり「借金」です。企業は担保として設定した資産を保有したまま、返済義務のある融資を受けます。
一方、ファクタリングは「売掛債権の売却」であり、売掛金を譲渡することで資金を得ます。債権が譲渡されるため返済義務は発生せず、バランスシート上も借入金として計上されないケースが多いです。
この違いにより、財務諸表上の印象や信用情報への影響も異なってきます。
審査基準の違い
ABLでは、企業自身の信用力や経営状況に加え、担保となる資産の価値が重視されます。したがって、資産価値が明確であり、かつ自社の信用力が一定以上あれば、比較的高額な融資を受けることが可能です。
一方で、ファクタリングの審査では、債権の内容と売掛先の信用力が重要視されます。自社が赤字であったり、税金滞納中であっても、売掛先がしっかりしていれば審査に通ることがあります。よって、資金繰りが厳しい状況でも利用できる可能性が高いのがファクタリングの大きなメリットです。
スピードと柔軟性
資金調達のスピードという点では、ファクタリングに軍配が上がります。2社間ファクタリングであれば、申し込みから即日〜数日で資金化できるケースもあり、急な資金ニーズに対応できます。
ABLは、担保評価や契約手続きに一定の時間を要するため、一般的に実行までに1週間〜数週間かかることがあります。また、ABLは中長期的な資金調達に向いており、継続的な運転資金ニーズに対応できるよう設計されています。
手数料・コストの違い
コスト面では、ABLは一般的な銀行融資と同様、金利が設定されており、年利2〜5%程度で融資を受けられることが多いです。担保がしっかりしていれば低金利での調達も可能です。
一方、ファクタリングの手数料は5%〜20%と幅があります。売掛先の信用力や取引額によって変動しますが、ABLに比べると割高なケースが多いため、頻繁に利用すると資金効率が悪くなる場合もあります。
財務・信用への影響
ABLは借入であるため、バランスシートに「負債」として計上されます。そのため、銀行などの信用評価に影響する可能性があります。また、過度なABL利用は自己資本比率を下げることにもなりかねません。
ファクタリングは売掛金を売却するため、会計処理上は売上の前倒し計上となることがあり、貸借対照表上の負債には反映されないケースが多いです。これにより、表面上の財務指標を維持しやすいというメリットがありますが、会計処理の方法は事前に確認しておく必要があります。
売掛先への通知と関係性
ファクタリングでは、3社間契約の場合、売掛先に「この債権は譲渡されました」と通知が行きます。これにより、売掛先に「資金繰りが厳しいのでは」と不安を与えるリスクもあります。2社間ファクタリングであれば売掛先に知られずに資金化できますが、手数料が高めになる傾向があります。
ABLは担保設定が行われるものの、売掛先には通知されません。取引先との関係を維持しやすいという点では、ABLの方が有利な場合もあります。
どちらを選ぶべきか?
企業の状況やニーズによって、どちらが「いいか」は変わってきます。以下のようなケースで選ぶのが一般的です。
ABLが向いているケース
売掛債権以外に在庫や設備など担保資産がある
・一定の信用力があり、比較的低金利での借入が可能
・中長期的な資金計画を立てており、返済能力もある
・財務面での信用維持より、安定した資金確保を優先したい
ファクタリングが向いているケース
・売掛先の信用力が高いが、自社は赤字や税金滞納中
・急な資金需要がある(例:仕入れや人件費の支払い)
・借入として計上せずに資金調達をしたい
・売掛金回収までの時間を短縮してキャッシュフローを改善したい
まとめ|ABLとファクタリングの特徴を正しく理解しよう
ABLとファクタリングは、いずれも「資産を活かした資金調達手段」であり、従来の銀行融資に代わる新たな選択肢として注目されています。
それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらが「正解」かは企業の経営状況や資金調達の目的によって異なります。大切なのは、自社の財務状況やキャッシュフローを正確に把握したうえで、適切な手段を選ぶことです。
場合によっては、ABLとファクタリングを併用することで資金調達を多様化し、リスクを分散することも可能です。金融機関や専門業者と相談しながら、自社にとって最適な方法を選びましょう。