ファクタリングをM&Aで活用する方法と資金繰りのポイント

2026年10月16日

M&Aを進める企業にとって、買収資金だけでなく、交渉から成約後までの運転資金をどのように確保するかは重要な課題です。特に、M&Aによって事業規模が拡大すると、仕入れや人件費などの支出が増える一方、売上が入金されるまでの期間が長くなることで、一時的に資金繰りが厳しくなるケースがあります。

こうした場面で活用を検討できる資金調達方法の一つがファクタリングです。

ファクタリングは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社へ譲渡し、支払期日前に資金化する方法です。銀行融資とは仕組みが異なるため、M&A前後の資金繰り対策として利用されることがあります。

ただし、ファクタリングはM&Aの買収資金そのものに充てることだけを目的とするのではなく、M&Aに伴う運転資金や一時的な資金需要への対応として検討することが重要です。

本記事では、M&Aにおけるファクタリングの活用方法やメリット、注意点、M&A前後で利用する際のポイントについて詳しく解説します。

M&Aでファクタリングを活用するとは

M&Aでファクタリングを活用するとは、M&Aの前後に発生する資金需要に対して、保有している売掛債権を早期に現金化する方法です。

たとえば、企業を買収した後に事業規模が大きくなり、仕入れ代金や人件費などの支払いが増加したとします。

一方で、取引先からの売掛金は翌月末や翌々月末に入金される場合があります。

このような入金と支払いのタイミングのずれが発生すると、黒字であっても手元資金が不足する可能性があります。

そこで、保有している売掛金をファクタリングによって早期に資金化すれば、入金を待たずに運転資金を確保できます。

M&Aでファクタリングを活用できる主な場面

M&Aとファクタリングの組み合わせを考える場合、主にM&Aの前後に発生する運転資金の確保という目的で活用できます。

M&A成立後の運転資金を確保したい場合

M&Aが成立すると、買収した事業の運営に必要な資金が増えることがあります。

従業員が増えたり、仕入れ量が増えたり、新しい設備やサービスへの投資が必要になったりすることで、M&A前よりも多くの運転資金が必要になる可能性があります。

このとき、自社が保有する売掛債権をファクタリングによって資金化すれば、通常の入金日よりも早く現金を確保できます。

M&Aによって売上規模が拡大した場合

M&Aによって新しい取引先や事業を引き継ぐと、売上規模が急激に拡大することがあります。

売上が増えることは企業にとってプラスですが、売掛取引が中心の場合、売上がそのまま手元資金になるわけではありません。

たとえば、月間の売上が2,000万円増えたとしても、その売掛金の入金が2か月後であれば、その間に仕入れ代金や人件費などを支払う必要があります。

ファクタリングを活用することで、この資金ギャップを埋める方法があります。

M&A後のつなぎ資金が必要な場合

M&A後に銀行融資などの資金調達を検討しているものの、融資実行までに時間がかかる場合があります。

こうした場合、売掛債権を保有していれば、ファクタリングをつなぎ資金として検討することもできます。

ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、融資と比較した資金調達コストを確認することが重要です。

ファクタリングはM&Aの買収資金に使えるのか

ファクタリングで調達した資金をM&A関連の資金として使用できるかどうかは、契約内容やファクタリング会社の方針によって異なります。

そもそもファクタリングは、売掛債権を譲渡して資金化する取引です。

そのため、銀行融資のように「M&A専用ローン」として資金使途が設定されるものとは性質が異なります。

ただし、調達した資金を事業運営に必要な資金として利用する場合でも、契約上の資金使途について確認が必要になることがあります。

M&Aの買収対価として使用することを考えている場合は、契約前にファクタリング会社へ確認しておくことが重要です。

M&Aでファクタリングを活用するメリット

M&Aに関連してファクタリングを利用する場合、資金繰りの面でいくつかのメリットがあります。

売掛金を早期に資金化できる

ファクタリングの大きな特徴は、売掛金の支払期日を待たずに資金化できることです。

M&A後はさまざまな支払いが発生するため、入金までの期間を短縮できることは資金繰り上のメリットになります。

融資とは異なる資金調達方法として検討できる

ファクタリングは売掛債権の譲渡による資金化であり、一般的な借入とは仕組みが異なります。

そのため、銀行融資とは別の選択肢として検討できます。

特にM&A後で新たな借入を増やすことに慎重な企業にとっては、保有する売掛債権を活用した資金調達方法として検討する余地があります。

資金繰りのタイミングを調整しやすい

M&A後は、売上が増加する一方で支払いも増える可能性があります。

ファクタリングによって売掛金の入金を前倒しできれば、支払いと入金のタイミングを調整しやすくなります。

特に、季節変動が大きい事業や、売上規模が急激に拡大した企業では資金繰り対策として役立つ場合があります。

M&Aでファクタリングを利用する際の注意点

ファクタリングにはメリットがある一方、M&Aと組み合わせる場合には注意すべき点もあります。

ファクタリングの手数料が発生する

ファクタリングでは、売掛金を額面金額そのままで現金化できるわけではありません。

売掛債権の金額から手数料などが差し引かれるため、実際に受け取れる金額は売掛金の額面より少なくなります。

M&A後はさまざまなコストが発生するため、ファクタリングの手数料まで含めて資金繰りを計画する必要があります。

売掛債権の内容が審査される

ファクタリングでは、どのような売掛金でも必ず買い取ってもらえるわけではありません。

売掛先の信用力や売掛金の支払期日、取引内容などが確認されます。

M&Aによって引き継いだ売掛債権を利用する場合は、その債権が適切に引き継がれていることや、取引関係が明確であることなどを確認しておくことが重要です。

M&Aの情報管理に注意する

M&Aでは、買収前の情報管理が非常に重要です。

ファクタリングの契約方式によっては、売掛先への通知や承諾が必要になる場合があります。

M&Aの交渉中に取引先へ余計な情報が伝わることを避けたい場合は、契約方式について事前に確認しておくことが重要です。

M&A前にファクタリングを利用する場合の注意点

M&Aの実行前にファクタリングを利用する場合は、対象会社の財務状況や売掛債権の内容との関係に注意が必要です。

特に、M&Aの買収対象となっている会社が保有する売掛金をファクタリングする場合には、誰が債権を保有しているのか、M&A後の事業承継にどのような影響があるのかを確認する必要があります。

また、売掛債権をすでにファクタリング会社へ譲渡している場合、その債権をM&A後に改めて利用できるとは限りません。

M&Aのデューデリジェンスでは、売掛金の残高や回収状況だけでなく、債権譲渡の有無についても確認することが重要です。

M&A後にファクタリングを利用する場合のポイント

M&A後にファクタリングを利用する場合は、まずM&A後の資金繰りを整理しましょう。

M&Aによって売上が増えても、仕入れや人件費、外注費などの支払いが先行すれば、運転資金が不足する可能性があります。

そこで、今後の入金予定と支払予定を一覧化し、どのタイミングで資金不足が発生するのかを確認します。

そのうえで、必要な金額だけをファクタリングすることで、手数料を抑えながら資金繰りを調整しやすくなります。

M&Aとファクタリングを組み合わせるときの資金計画

M&Aでは、買収対価だけを考えて資金計画を立てると、成約後に資金不足が発生する可能性があります。

M&A後には、事業を安定させるための運転資金や設備投資、人材採用費などが必要になることがあります。

そのため、M&Aを実行する前に、買収資金と運転資金を分けて考えることが重要です。

ファクタリングは、そのうち売掛金を活用して運転資金を確保する方法として検討できます。

銀行融資、自己資金、投資家からの出資など、他の資金調達方法と組み合わせることで、M&A後の資金繰りを安定させられる可能性があります。

M&Aでファクタリングを利用するときは契約条件を確認する

M&Aに関連してファクタリングを利用する場合は、通常の資金調達以上に契約内容を慎重に確認する必要があります。

特に、売掛債権の買戻しに関する条項や償還請求権の有無、手数料、契約期間、債権譲渡に関する条件などを確認しましょう。

また、M&A後の事業計画と照らし合わせて、ファクタリングを利用した後の資金繰りに無理がないか確認することも重要です。

「資金がすぐに必要だから」という理由だけで契約するのではなく、M&A後のキャッシュフローまで考えて利用することが大切です。

ファクタリング以外のM&A資金調達方法

M&Aの資金調達では、ファクタリングだけが選択肢ではありません。

代表的な方法として、金融機関からの融資、自己資金、投資家からの出資、M&A向けの融資などがあります。

融資は返済義務がありますが、ファクタリングと比較して資金調達コストを抑えられる場合があります。

一方で、審査や手続きに時間がかかる可能性があります。

ファクタリングは売掛債権を資金化するため、利用できる金額が保有する売掛債権に左右されます。

そのため、M&Aの規模や資金需要に合わせて、複数の方法を比較することが重要です。

M&Aにおけるファクタリング活用の考え方

ファクタリングは、M&Aそのものを成立させるための万能な資金調達方法ではありません。

一方で、M&Aによって事業規模が拡大した後の運転資金や、入金と支払いのタイミングのずれを補う方法としては活用を検討できます。

特に、売掛金を多く保有している企業であれば、保有資産を活用して資金化できる点がメリットになります。

ただし、ファクタリングには手数料が発生するため、調達した資金によってどのような効果が得られるのかを事前に計算しておくことが重要です。

まとめ

M&Aでファクタリングを活用する場合、主な目的はM&A前後の資金繰りを安定させることです。

M&Aによって売上規模が拡大すると、仕入れや人件費などの支払いも増加する可能性があります。一方で、売掛金の入金は数週間から数か月先になることがあり、売上が増えているにもかかわらず手元資金が不足するケースがあります。

ファクタリングを利用すれば、保有する売掛債権を支払期日前に資金化し、こうした資金ギャップを埋められる可能性があります。

ただし、ファクタリングは買収資金を無条件に調達できる方法ではなく、利用できる金額は売掛債権の内容などに左右されます。また、手数料も発生するため、資金調達コストを含めた計画が必要です。

M&Aとファクタリングを組み合わせる場合は、買収資金とM&A後の運転資金を分けて考え、銀行融資や自己資金などの方法とも比較することが重要です。

M&A後の事業成長を安定させるためにも、ファクタリングを単なる緊急資金ではなく、キャッシュフローを調整する手段の一つとして検討するとよいでしょう。