設立1年未満の会社もビジネスローンは利用できるのか?決算書がない場合の対処法も解説

2023年7月2日

ビジネスローンは、設立1年未満の会社でも借りることが可能な場合があります。一般的には、設立1年未満の会社は審査に必要な決算書などの財務資料を提出することができないため、審査に通らないケースも考えられます。本記事では、ビジネスローンの審査において決算書で確認する項目、設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる際のポイントなどについて詳しく説明します。

設立1年未満の会社でもビジネスローンの利用は可能

設立1年未満の会社でも、ビジネスローンの融資を受けることは可能です。ビジネスローンを利用する際には、基本的に決算書の提出が求められます。ただ、設立1年未満の会社では決算書を用意できないケースも少なくないでしょう。

しかし、ビジネスローンの中には決算書の提出が不要なものもあります。決算書に代わる書類の提出により審査されるため、設立1年未満の会社だからといって、ビジネスローンの利用を簡単に諦めてしまう必要はありません。

設立1年未満の会社が事業資金の調達が必要な場合は、社歴が浅くとも(設立1年未満など)利用できるビジネスローンを探して融資を申込むようにしてください。

設立1年未満の会社は決算書を用意できない場合がある

設立1年未満の会社はまだ企業活動を1年間通して行っていないので、原則として決算書を作成することができません。決算書とは、一般的には、1年間という期間を区切って会社の損益の結果や資産の状態などを報告するための書類をいいます。

つまり、借入先から決算書の提出を要求されても対応できない場合があり得るのです。なお、「決算書」は正式(法律上、会計規則上)には、「財務諸表」「計算書類」といいます。

決算書で確認する項目は主に3つ

決算書で確認する主な項目は以下の3つです。

決算書で確認する3つの項目
● 返済能力
● 借入状況
● 資産状況

1.返済能力

決算書を確認することで、申込人の返済能力をチェックすることができます。どのくらいの収益を得ていて、どのくらいの資産を持っているのかが判明します。

返済できるだけの収益力や保有資産を有しているかどうかは、審査において重要な判断項目です。もし、希望する借入に見合う収益力や保有資産がなければ、審査を通過できない可能性が高いでしょう。

2.借入状況

決算書では借入状況を確認することもできます。貸借対照表(バランスシート)上には負債の項目に借入金や社債を記載する必要があります。借入金や社債の金額だけでなく、借入先名や支払利子額などの詳しい情報を知りたい場合には、勘定科目内訳明細書を確認すれば詳細な情報を入手することができます。

自己資本に対して銀行借入など他人資本の割合が大きいと返済の安定性が低下するため、審査を通過しないケースも考えられます。負債比率が100%以下であれば、返済の安定性が高いとされています。

3.資産状況

決算書では会社が保有している預貯金、有価証券(株や債券)、不動産(土地や建物)などの資産の状況も確認することが可能です。資産は、貸借対照表の流動資産や固定資産などの勘定科目に計上されています。

会社が資産を保有していれば、ビジネスローンを返済するだけの資金が手元になくても資産を売却して資金化することによって返済が可能になるため、融資の審査判断における重要なポイントになるのです。

個人事業主は青色申告決算書などの提出が必要なケースも

ビジネスローンを利用する際に、法人の場合は決算書の提出が必要になることがありますが、個人事業主で青色申告をしている場合には、青色申告決算書の提出を求められる場合があります。

個人事業主は所得税や住民税の申告をするために、(青色申告を申請する場合には)青色申告決算書の提出が必要です。法人の決算書と同様に、個人事業主の返済能力、借入状況、資産状況を確認することが可能です。

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる際のポイント

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる際のポイントは、以下の通りです。

● 会社や経営者個人の信用状況
● 事業計画や利益計画の策定・提出
● 業績の状況

1.会社や経営者個人の信用状況

会社や経営者個人の信用状況は、設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる場合の審査における重要なポイントとなります。

設立1年未満の会社であっても、会社や経営者個人の信用状況に問題がなければ次の審査ステップに進むことが可能です。反対に、会社や経営者個人において過去の延滞など信用上の問題がある場合には、その時点で審査に通らない可能性があります。

2.事業計画や利益計画の策定・提出

決算書を提出することができない場合には、決算書の代わりに事業計画や利益計画の提出を求められることが多いです。融資をする場合には、申込人の返済能力を確認する必要があるので、合理的で実現可能性が高い事業計画や利益計画に基づいて、事業を推進していくことが必要です。

このように、計画の策定内容を確認し、申込人の返済が可能かを判断します。したがって、実現可能性の高い合理的な計画を策定することが必要なのです。

3.業績の状況

決算書を提出できない場合でも、会社の業績の状況については資料を提出することが可能です。例えば、銀行口座の入出金状況や取引先との契約書(のコピー)などを提出すれば、売上などの企業業績の内容について理解してもらうことが可能です。

業績に問題がなく、今後の成長が見込めるような状態であれば、返済に懸念がないと判断され、融資審査を通過する可能性が高いと考えられます。当然ですが、業績の良し悪しのみならず、会社や経営者の信用状況、事業計画・資金計画の内容、なども合わせて、総合的に融資の可否は判断されることになります。

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用するメリット

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用するメリットは以下の2つです。

● 赤字経営を明らかにする必要がない
● 審査にかかる手間や時間が少ない

1.赤字経営を明らかにする必要がない

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用する場合には、赤字経営であることを明らかにする必要がない点が考えられます。設立1年未満の会社がビジネスローンを申込む際には、基本的に決算書類の提出が不要であるため、赤字経営であることが分からない可能性があります。

ビジネスローンの中には、赤字であっても成長性や収益性の高い事業を営んでいるような会社であれば利用できる場合もあるため、特に設立1年未満の会社については現時点で赤字であるからという理由のみで融資を断られてしまうわけではありません。

もちろん、赤字よりは黒字のほうが審査上は高く評価されますが、今現在の赤字よりも将来の成長性・収益性を高く評価するケースがあることも覚えておく必要があります。

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用するデメリット

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用するデメリットは以下の3つです。

● 金利が高い場合がある
● 決算書以外の書類を求められるケースが多い
● 借入金額が想定より少ない場合がある

1.金利が高い場合がある

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用する場合には、適用される金利が高い可能性があります。決算書を用意することができず、返済可能性も詳細に確認することができない場合には、企業の将来性の判断は難しくなるため、金利も高くなる傾向にあります。

2.決算書以外の書類を求められるケースが多い

設立1年未満の会社は決算書を用意することができないので、決算書の代わりとなる書類の提出を求められることがあります。具体的には事業計画書や資金計画書をあげることができます。

ただし、単にそれらの計画書があるだけでは審査を通過することはできません。銀行からの融資を受ける場合にも要求される(銀行の様式に沿った)合理性のある実現可能性の高い計画書を策定・提出する必要があります。

これらの計画書を策定する場合には、必要に応じて顧問税税理士や銀行の担当者などのサポートが必要になることもあるため、一定の手間や時間がかかります。こうした点はデメリットといえます。

3.借入金額が想定より少ない場合がある

設立1年未満の会社がビジネスローンを利用する場合には、実際の借入金額が希望額よりも少ない可能性があります。

こうした場合には必要な金額が不足してしまうので、別の資金調達方法を検討する必要がでてきます。さらなる手間や時間がかかるおそれがある点はデメリットです。

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる際の注意点

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる場合の主な5つの注意点は以下の通りです。

● 設立1年未満の会社の借入事例があるか確認する
● 必要な提出書類について事前に確認する
● 申込みから融資までの時間もチェックする
● 金利や返済期間などの融資条件を必ず確認する
● 他のビジネスローン会社にも相談する

1.設立1年未満の会社の借入事例があるか確認する

設立1年未満の会社がビジネスローンを申込む場合には、その借入先において設立1年未満の会社がビジネスローンを取り扱った実例があるかどうかを確認することが必要です。

これまでに設立1年未満の会社がビジネスローンを借入した実例がない場合には、融資してもらえる可能性が低いと考えらえます。一方、実例がある場合には、融資の審査ポイントはどのような点なのか確認することも必要です。

審査基準に関することは公表されていないため、知るのは難しいですが、ビジネスローンの審査に通過するために役に立つ情報を教えてもらえれば有益なものとなります。

2.必要な提出書類について事前に確認する

決算書を用意できない設立1年未満の会社が、ビジネスローンを申込む場合に必要な提出書類をあらかじめ確認しておくことも注意すべきポイントです。提出書類の中には、事業計画書のように策定に手間や時間が必要なものもあります。

事前に必要な提出書類を確認しておいて、余裕を持って準備しておくようにしましょう。慌てて提出書類を作成すると、説得力のない計画書になってしまうおそれがあります。

3.申込みから融資までの時間もチェックする

ビジネスローンの申込みから融資が実行されるまでの時間も確認しておく必要があります。審査は通過したけれど融資の実行が、資金が必要なタイミングに間に合わなければ意味がありません。したがって、事業資金が必要なタイミングに間に合うように融資が実行できるのかどうかを、きちんとチェックしておきましょう。

4.金利や返済期間などの融資条件を必ず確認する

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる場合には、金利や返済期間などの融資条件を必ず確認することが重要です。設立後何年経過していようと、資金を調達する際には条件を確認することは基本ではあります。

しかし、社歴の浅い会社の場合は、まだ資金調達の機会が少ないと考えられるので、早いタイミングで融資条件の確認を行うようにしましょう。

5.他のビジネスローン会社にも相談する

設立1年未満の会社がビジネスローンを借りる場合には、他のビジネスローン会社にも相談し、比較検討することがとても大切です。ビジネスローン会社によって、金利や融資上限額などの融資条件だけでなく、必要な提出書類なども異なっているケースは多いです。

自社に向いているビジネスローンを選択して利用することが重要です。

まとめ

設立後1年以内の会社でもビジネスローンを利用することは可能です。ただし、設立後1年以内の会社は決算書を用意することができないので、決算書に代わる事業計画書などの書類を求められる場合があります。

設立後1年以内の会社でもビジネスローンを利用する場合には、必要な提出書類や融資条件などをしっかりと確認して自社のニーズにマッチしたビジネスローンを選択することが必要不可欠です。