コロナ融資は返済免除可能?負担軽減のための保証制度について解説
2023年7月2日
コロナ融資は2020年3月にスタートし、多くの事業者の資金繰りを支援した制度となった反面、事業回復に至っていない中で返済が始まり返済免除を希望する声も少なくない現状です。
確かにコロナ融資ができたことで、企業の倒産件数は十分に抑えられたといえますが、返済できないことを理由に今後は倒産する会社が増えてしまうことも危惧されています。
そこで、コロナ融資は返済免除が可能なのか、返済負担を軽減するために活用できる保証制度について解説していきます。
コロナ融資とは
「コロナ融資」とは、新型コロナウイルス感染拡大で売上減少に陥った事業者を支援するためにできた融資制度です。
通常、融資を受ければ金融機関に対し利子を払うことが必要ですが、コロナ融資では公的機関が3年間利子を負担します。
さらに返済できなくなったときには、信用保証協会が肩代わりする実質無利子・無担保の融資制度です。
利子も担保も「ゼロ」であったため、「ゼロゼロ融資」とも呼ばれました。
コロナ融資の返済状況
コロナ禍が落ち着き、これから経済回復が期待される中で、コロナ融資を含む借金返済に悩む経営者は増えています。
経済の流れが大きく変化し、長引く行動制限などで事業継続に向けた新たな資金の借入れで資金調達した事業者は少なくありません。
その1つがコロナ融資といえますが、利用した事業者の多くは、利子のみ支払えばよい期間である「据置期間」を設け融資を受けていました。
据置機関は最大で「5年」で設定することができたものの、多くの事業者は3年程度で設定することが多かったようです。
そのためコロナ融資で資金調達した事業者の7割は、すでに返済が開始されていますが、残りの3割は据置期間終了となる2023年春から夏にかけて本格的に返済が始まります。
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コロナ融資の返済免除の可能性
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、売上が激減するなどを理由として資金繰り困難に陥ってしまった事業者にとって、コロナ融資はまさに救いの手になったといえる制度です。
しかしコロナ禍が落ち着いたものの、まだコロナ前ほど事業が回復していないという事業者も少なくありません。
また、そもそもコロナ前にすでに資金繰りが悪化していた事業者は、コロナ融資を受けることで延命された状態であったため、もともと返済資金を捻出できる体力もなく事業継続が危ぶまれています。
このような状況下にある事業者の多くは、コロナ融資を返済免除してもらえないかと考えることは仕方のないことといえますが、返せない場合には免除ではなく据置期間を延長するなどの対応が求められます。
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特例貸付の返済免除
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、生活に困窮した世帯に対し無利子・無保証でお金を貸した「特例貸し付け」は返済免除される場合があります。
特例貸し付けは、主に「緊急小口資金」と「総合支援資金」ですが、返済免除の判定は資金の種類ごとに一括して行う仕組みになっています。
その他の世帯員の課税状況は問われず、借受人と世帯主が住民税非課税の場合は、返済免除の対象となります。
返済免除は申請が必要とされており、自動的に免除されるわけではないことに注意が必要です。
コロナ融資が返済できない場合の対処法
2020年3月から始まった日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」は、コロナ融資と呼ばれ多くの事業者の資金繰りを支援したといえます。
当初は利子のみ返済すればよい据置期間を設定していたおかげで、コロナ融資の返済負担に苦しむことはなかったでしょう。
しかし2021年3月以降は、据置期間も終了し、ついに元金返済が始まったという事業者も少なくありません。
返済がスタートしたものの、支払うことが難しい場合には免除してほしいと考えるものですが、実際には返済義務を免れることはできません。
予定通り返済できなければ、現状よりもさらに資金繰りは悪化し、コロナ融資で資金調達したことが無意味になってしまう可能性もあります。
長引くコロナ禍で業績が回復せず、今後の見通しも立たたない状態で返済に苦しむ事業は今後も増えることが予想されますが、返済困難な場合の対処法として考えられるのは次の3つです。
● 据置期間を延長する
● 返済条件を見直す
● 廃業する
それぞれの対処法について説明していきます。
コロナ融資を返せない時の対処法について解説
据置期間を延長する
コロナ融資が返済できない場合の対処法として、据置期間を延長することが挙げられます。
利子だけを支払っていた据置期間の間、コロナ融資の返済に苦しむことはなかったという場合、今後も利子分のみ支払う期間を延長すれば資金繰りは悪化しにくくなるでしょう。
そこで、元本と利子を合わせて返済することが難しいのであれば、日本政策金融公庫に据置期間を延長してもらえないか申し出、交渉することが必要です。
実際、コロナ融資を利用した事業者が返済できない状況にある場合、経済産業省から日本政策金融公庫などに事業者の実情に応じた丁寧な対応と条件変更など柔軟な対応を要請しています。
さらに内閣総理大臣・関係大臣からも、政府系金融機関以外に民間金融機関などにも、同じ趣旨で中小企業・小規模事業者等の実情に応じた最大限柔軟な対応を要請しているため、交渉に応じてもらえる可能性は低くないと考えられます。
返済条件を見直す
コロナ融資が返済できない場合の対処法として、返済条件を見直すことが挙げられます。
据置期間を延長してもらうこと以外にも、そもそもコロナ融資の返済計画を見直すリスケジュールを交渉することで、返済負担は軽減されるはずです。
コロナ融資に関しては、経済産業省の「新型コロナ特例リスケジュール」制度を活用することが考えられますが、中小企業再生支援協議会による以下のような支援を受けることができます。
● 中小企業に代わり元金返済猶予を要請
● 資金繰り計画立案と債権者との交渉(新規融資を含めた金融機関との調整や債権者との合意形成など)
● 資金繰りに関する継続的なサポート
制度を活用した場合、弁護士などのサポートを受けながら資金繰り計画を立て、金融機関との調整しつつ支援を受けることができる制度です。
ただし公的機関「中小企業再生支援協議会」を通すことが必要となるため、必要書類作成・提出なども必要となるなど、手続は簡単ではないことは理解しておきましょう。
廃業する
コロナ融資が返済できない場合の対処法として、廃業することが挙げられます。
据置期間の延長やリスケジュールなどで問題解決に至らない場合、廃業という選択も方法の1つとして検討が必要です。
債務超過による法人廃業は裁判所を通して手続することになり、次の2つを選択することになります。
1.法人破産
2.特別清算
それぞれどのような手続か説明していきます。
法人破産
法人破産とは、支払いができない状態(支払不能)になった企業や、資産をすべて売ってお金に換えても負債を返済できない状態(債務超過)になった会社に対し、裁判所が選任した破産管財人により法人財産を処分して債権者に配当するです。
会社の所有する財産はすべて換価し債権者に平等に配当され、法人格は消滅することになります。
個人が自己破産した場合、免責決定により借金返済は免除されますが、法人の破産では免責という概念はありません。
最終的に法人格が消滅することにより、借金も消えることになります。
法人破産するとコロナ融資の返済も含め、他の借金返済に追われることもなく、楽になれると考えがちです。
しかし、経営者個人が法人の借金の保証債務を行っている場合は、法人破産するか慎重な判断が求められます。
法人破産で廃業すれば、法人の借金返済義務は消滅しますが、経営者個人が連帯保証人になっている借金は経営者に返済義務が移ります。
そのため法人破産と同時に、経営者個人も自己破産しなければならなくなるでしょう。
経営者個人が連帯保証していない場合は、法人に代わって弁済する義務は発生しません。
ただ、法人破産については、多数の債権者がいるため、債権者の平等を貫徹したほうが混乱は少ないという場合に選んだほうがよい手続です。
債権者が多数の場合、督促や請求が錯綜するため、回収を巡り大きな混乱が発生します。
そのため、裁判所の監督や破産管財人の管理のもとで、債権者の平等が確保できる状態を作るためにも、法人破産を検討することが必要になるといえるでしょう。
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特別清算
特別清算とは、債務超過に陥った会社を清算するための法的手続で、破産と同じく裁判所を通して会社法を根拠に行います。
会社法を根拠とするため、特別清算の対象となる法人は株式会社に限定される点には注意してください。
破産手続より厳格な手続は求められないため、比較的、簡易的・迅速に手続できることはメリットといえます。
また、特別清算は債権者の同意が必要になります。
債権者の3分の2以上の同意を得て協定を結ぶことで行う協定型の特別清算と、債権者の3分の2以上の同意があり、かつ債権者との個別に和解する和解型の特別清算に分けられます。
特別清算の場合、手続自体は法人破産よりも簡易的であるのに、債権者の同意が必要になるため想定していたよりもハードルが高く感じるケースも少なくないようです。
まとめ
コロナ融資で資金調達した事業者の多くは、まだコロナ前ほど事業が回復していない状況で、どのように返済資金を捻出しようと悩んでいることも少なくありません。
もし返済免除を希望する場合でも、免除ではなく据置期間を延長してもらうなどの対処が必要となるでしょう。
手元の資金が枯渇すれば、会社は倒産してしまいます。
資金ショートする前に、たとえば手元の売掛金を現金化し最短即日資金調達に活用できるファクタリングなどを利用するなど、倒産させない資金調達も検討することをおすすめします。