デットファイナンスとは?資金調達の基本とメリット・デメリットを徹底解説

2025年8月7日

資金調達と一口に言っても、企業や個人事業主にはさまざまな方法があります。特に事業拡大、設備投資、人材確保、新規開業といったタイミングで避けて通れないのが「お金の問題」です。

その中で代表的な手段の一つが「デットファイナンス(Debt Finance)」です。これは、株式のように経営権を手放すことなく、返済義務のある方法で資金を調達する手法を意味します。銀行融資や社債、ビジネスローンなど、私たちの身近にもある仕組みです。

この記事では、デットファイナンスとは何か、どんな方法があるのか、メリット・デメリットは何か、どのような企業やシチュエーションに向いているのかをわかりやすく解説していきます。

デットファイナンスとは何か?

デットファイナンスとは、企業や事業主が「借金」という形でお金を調達する方法のことです。借入なので、原則として元本と利息を返済する義務があります。

例えば、銀行から融資を受ける、ノンバンクのビジネスローンを利用する、社債を発行する、政府系金融機関から資金を得るといった手段は、すべてデットファイナンスに該当します。

対義語は「エクイティファイナンス(Equity Finance)」です。これは株式を発行して出資を受ける手法であり、経営権の一部を投資家に渡すことになります。

一方、デットファイナンスは返済義務を伴う代わりに、経営権を保持したまま資金調達ができるという大きなメリットがあります。

デットファイナンスの主な手段

デットファイナンスにはいくつかの代表的な方法があります。それぞれに特徴があり、事業フェーズや資金ニーズによって使い分けることが重要です。

銀行融資

最もオーソドックスな方法です。メガバンクや地方銀行、信用金庫などからの借入は、安定した資金調達が可能で、金利も比較的低めです。ただし、審査は厳しく、財務内容や信用情報が重視されます。

ノンバンク系ビジネスローン

消費者金融やファイナンス会社などが提供する事業者向けローンです。銀行に比べて審査が柔軟で、スピード感もあるのが特徴です。急な資金ニーズに対して即日融資が可能なケースもあります。

社債の発行

社債は、企業が投資家に対して「債券」という形で資金を借りる手法です。信用力の高い大企業向けですが、一定の条件を満たせば中堅企業でも活用可能です。

政府系金融機関からの融資

日本政策金融公庫や商工中金などの公的金融機関は、創業者や中小企業向けに低金利・長期返済のローンを提供しています。創業支援や災害対策、経営安定資金など、目的別の制度も充実しています。

デットファイナンスのメリット

デットファイナンスには、多くの企業にとって魅力的な特徴があります。特に、資金調達と経営権のバランスを保ちたい経営者にとって、有力な選択肢となります。

経営権を維持できる

株式を使わないため、出資者に経営の口出しをされる心配がありません。これは中小企業や家族経営の企業にとって、非常に重要なポイントです。

利息が経費として処理できる

支払利息は損金扱いになるため、法人税などの節税効果があります。これはエクイティファイナンスにはない特典です。

計画的な返済が可能

返済スケジュールが事前に決まっているため、資金繰りの管理がしやすく、長期的な視点での資金運用が可能になります。

一時的な資金ニーズに対応できる

売上のタイムラグや、予期せぬ出費が発生した場合でも、短期的な資金繰りに対応できるのが大きな強みです。

デットファイナンスのデメリットとリスク

一方で、デットファイナンスには注意点も存在します。無計画に借入を重ねると、事業の安定性を脅かすリスクがあります。

返済義務がある

最大の特徴でもあり、最大のリスクでもあるのが返済義務です。たとえ事業が不調でも、返済は続けなければなりません。これが重荷になるケースも少なくありません。

利息負担がかかる

借りたお金には金利がつきます。金利が高いローンを利用すると、返済総額が大きくなり、結果的に利益を圧迫する原因になります。

財務体質が悪化する可能性がある

借入が増えるとバランスシート上で負債が増えます。これにより、自己資本比率が下がり、他の金融機関からの信用評価が下がることもあります。

審査に時間がかかる場合もある

特に銀行融資は、必要書類が多く、審査期間も長い傾向にあります。急ぎで資金が必要な場合には不向きなケースもあります。

デットファイナンスが適している事業者

デットファイナンスは、すべての企業に適しているわけではありません。以下のような事業者に特におすすめです。

・経営権を他人に渡したくない企業

・安定した収入があり、返済計画を立てられる事業者

・創業初期でエクイティ投資を受ける準備が整っていない個人事業主

・売上が入金されるまでの間を埋める短期的な資金が必要な企業

・設備投資や新店舗開業など、明確な資金用途がある企業

デットファイナンス活用の具体例

実際に多くの中小企業やフリーランスが、以下のような場面でデットファイナンスを活用しています。

・新店舗の開業資金として300万円のビジネスローンを借入

・繁忙期の仕入資金として銀行から運転資金を調達

・売掛金の入金遅れに備えて短期融資を利用

・老朽化した機械設備の更新費用に、政策金融公庫の制度融資を活用

いずれも、資金の使い道が明確であり、返済計画が立てやすいという特徴があります。

デットファイナンスを成功させるためのポイント

無理なく、そして賢くデットファイナンスを利用するには、以下のようなポイントを押さえることが大切です。

・借入金額は「返せる額」に抑える

・金利と返済期間を慎重に比較検討する

・必要に応じて専門家(税理士や経営コンサル)に相談する

・利用する金融機関と良好な関係を築く

・同時にキャッシュフロー改善にも取り組む

まとめ|デットファイナンスは「責任ある資金調達」

デットファイナンスは、企業や個人事業主が成長のチャンスを掴むための重要な資金調達手段です。借金である以上、慎重な利用が求められますが、計画的に活用すれば、経営権を維持しながら柔軟に資金を得ることができます。

重要なのは、借りること自体ではなく、「返せる計画の中で、目的に応じた最適な手段を選ぶ」ことです。

あなたの事業に合った資金調達方法を選び、より強い経営基盤を築いていきましょう。