ファクタリング利用は政策金融公庫の審査に影響する?資金調達前に知っておくべきポイント

2025年4月19日

中小企業や個人事業主が資金繰りに困ったとき、頼りにする代表的な選択肢が「ファクタリング」と「政策金融公庫からの融資」です。どちらも民間銀行では対応が難しい事業者にとって重要な存在ですが、ファクタリングを利用していることで、**日本政策金融公庫(以下、公庫)の融資審査に影響が出るのでは?**と懸念する声も少なくありません。

本記事では、「ファクタリングを利用すると政策金融公庫の審査に通りにくくなるのか?」「影響を最小限にするためのポイントは何か?」といった疑問に対し、詳しく解説します。

ファクタリングとは?

ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権(請求書)を第三者に売却し、早期に資金化するサービスです。借入とは異なり、返済義務がないため、財務上の負担が比較的軽く、信用情報機関にも履歴が残りません。

資金調達のスピードが早く、赤字や税金滞納などがあっても利用可能なことから、資金繰りに悩む中小企業にとって強力な選択肢となっています。

政策金融公庫の融資審査の特徴

日本政策金融公庫は、政府が100%出資する金融機関であり、中小企業支援のために低金利・長期返済の融資を行っています。特に創業融資や新型コロナ対策融資などは、民間金融機関に比べて条件が緩和されていることも特徴です。

しかし、審査においては次のような要素が重視されます。

・事業の安定性・継続性

・売上・利益の見通し

・財務状況(債務超過・資金繰り)

・他の借入状況

・経営者の信用・行動履歴

そのため、資金繰りに追われているような状況や、他の資金調達手段に依存していることがわかると、審査にマイナス影響を与える可能性があります。

ファクタリングは審査にどう影響する?

1. 信用情報には記録されないが「資金繰りの苦しさ」は伝わる

ファクタリングは借入ではないため、CICやJICCといった信用情報機関には記録されません。
一見すると公庫の審査にも影響がないように思えますが、実際には以下のような形で影響が出る可能性があります。

・貸借対照表の債権残高が不自然に少ない

・資金繰り表や通帳履歴にファクタリング入金が複数ある

・売掛金の譲渡契約が経理上に現れている

これにより、公庫の担当者が「ファクタリングを繰り返している=資金繰りが厳しい」と判断する可能性は十分にあります。

2. 売掛債権を担保とした融資の可否に影響

公庫では原則、売掛債権を直接的な担保とするケースは少ないですが、債権がすでに他者に譲渡されている場合には資産価値が低く見積もられます。
このため、財務内容を確認する中で、「この会社は主要な売掛金をすでに資金化してしまっている=流動性に乏しい」と判断されるおそれがあります。

3. 公庫は「安定した経営」を評価する

政策金融公庫の審査方針の根底には、「税金を財源とした公的融資は、持続可能な経営体制を支援するために使うべきである」という考えがあります。

つまり、継続的にファクタリングに頼らざるを得ない経営状況は“健全ではない”と見なされる可能性が高いのです。

影響を最小限にするための3つのポイント

ファクタリングを利用していても、公庫の審査に必ずしも落ちるわけではありません。以下のような工夫をすることで、審査への影響を最小限に抑えることが可能です。

1. ファクタリングの利用理由を明確に伝える

「税金滞納があり他の手段がなかった」「一時的な資金ショートのため」といった背景がある場合、正直に説明しましょう。

加えて、「現在は資金繰りが改善しており、ファクタリングの利用は一時的なもの」と説明できれば、評価が変わる可能性があります。

2. 複数回にわたる利用は避ける

同じ取引先の請求書を何度もファクタリングしていると、資金繰りに恒常的な問題があると判断されやすくなります。
できる限り1回きりの利用に留め、以後は自己資金や他の融資で対応することが望ましいです。

3. 会計処理を適切に行う

売掛債権の譲渡が会計帳簿に正しく記載されていない場合、不自然な財務内容と見なされ、審査にマイナスとなることがあります。

ファクタリングを利用した場合は、「債権譲渡益」や「売掛債権の消滅」などを正確に記録し、第三者が見ても明確な説明がつくようにしておくことが重要です。

ファクタリングを使っても審査に通るケース

以下のようなケースでは、ファクタリングを利用していても公庫の審査に通ることがあります。

・一時的なキャッシュフロー改善のために使ったが、現在は黒字化している

・ファクタリング利用が過去1回のみで、通帳に記載されているだけ

・利用時の説明がしっかりでき、書面上も会計処理が明確

・他の財務指標(利益率、自己資本比率など)が良好である

つまり、公庫の審査で問われるのは「ファクタリングを利用したか否か」ではなく、「なぜ使ったのか」「現在の経営状況はどうか」といった総合的な健全性です。

まとめ|ファクタリングと政策金融公庫の両立は可能だが慎重に

ファクタリングを利用したからといって、必ずしも政策金融公庫の融資審査に落ちるとは限りません。ただし、以下の点に注意が必要です。

・頻繁な利用は「資金繰りの悪化」と受け取られる

・売掛債権の譲渡は財務上の信頼性に影響する

・利用理由や改善策の説明がないと審査で不利になる

そのため、どうしてもファクタリングが必要な場合は、「一時的」「計画的」な活用にとどめ、同時に経営改善の努力も示すことが重要です。

将来的に公庫からの融資を受けたいと考えている場合、専門家(税理士・中小企業診断士など)に相談しながら、資金調達戦略を立てることを強くおすすめします。