通帳偽装によるファクタリングの不正利用、逮捕実例を解説

2024年8月18日

「ファクタリングの詐欺事例を知りたい」
「うっかり詐欺に加担しないか心配」
「売掛先が怪しい会社かもしれない」

この記事ではこんな悩みを解決できます。

債権の架空譲渡や二重譲渡をすると利用者のあなたも詐欺罪に問われるでしょう。

この記事を最後まで読めば、具体的な詐欺の事例と詐欺に加担しない方法がわかりますよ。

今回は銀行での融資業務の経験がある筆者が、以下の内容で解説します。

ファクタリング会社は大きなリスクを負っている

ファクタリングは売掛債権を買い取ることで資金調達ができるサービスです。

実はファクタリング会社は利用者側の詐欺によって、架空の債権を買い取ってしまうリスクを常に抱えているのです。

架空の債権を買い取ると、ファクタリング会社は売掛債権を回収できなくなるので、大きな損失を被ります。

ファクタリングには償還請求権がないので、買い取った後に利用者に対して資金を弁済するように求めることもできません。
※償還請求権・・・時期を遡って金銭の返還を求めることができる権利

ファクタリング会社は審査をすることで厳格な買取判断が行っているのですが、それでも詐欺が起こってしまうのが現実です。

【逮捕】ファクタリング利用者が詐欺罪に問われた事例

ここではファクタリングの利用者が罪に問われた事例を3つ紹介します。

ファクタリング利用者が罪に問われた事例
3600万円超を騙し取り懲役2年
融資とファクタリングの同時不正利用
架空債権3億円で逮捕

3600万円超を騙し取り懲役2年

20代の会社役員の男はファクタリング会社から約3,652万円を騙し取ったとして、那覇地裁から詐欺罪で懲役2年の実刑判決を受けました。

被告は医療用のマスクの発注を装って虚偽の売掛債権の買取りをファクタリング会社に依頼し、資金を騙し取ったとされています。

この事例では以下3つの点で悪質だと認められます。

・架空の売掛債権で資金を騙し取った
・請求書を偽造した
・資金を私用に使った
架空の売掛債権で資金を騙し取る行為は詐欺罪に問われます。それに伴って請求書を偽造した場合も私文書偽造罪になるので注意しましょう。

融資とファクタリングの同時不正利用

鉄道会社の元専務は経営していた広告会社で融資金2,250万円のほか、ファクタリング会社からも約600万円を騙し取ったとして、詐欺罪などの罪で懲役3年6ヶ月の実刑判決を言い渡されました。

被告は資金繰りに困っていた広告会社を潰さないために、ファクタリング会社に対して架空の債権を買い取らせることで資金を得ていました。

この事例では以下の3点で悪質だと認められます。

架空の売掛債権で資金を騙し取った
契約書や見積書を偽造した
「会社を守りたいから」という身勝手な犯行である
この事例も架空の債権を装って契約書や見積書を偽造しているので、詐欺罪や私文書偽造罪に問われる可能性があります。

どんな理由であっても、相手を欺いて資金を騙し取る行為は犯罪ですので辞めましょう。

架空債権3億円で逮捕

イベント企画会社の社長がファクタリング会社に架空債権3億円を買い取らせた詐欺の疑いで逮捕されました。

イベント企画会社は100社以上の偽装した債権の売却を繰り返し約45億円を騙し取ったといいます。

騙されたファクタリング会社は業歴が浅いことから、詐欺の標的になってしまったようです。

この事例では以下の3点で悪質だと認められます。

架空の売掛債権で資金を騙し取った
ポンジ・スキームと似た手法で大口の資金を騙し取った
新規開業した金融機関を狙った
この事例でも架空の債権を使って多額の資金を騙し取っています。

「ポンジ・スキーム」は相手を信じ込ませるために最初だけ約束通りの返済を行い、相手が信用したところで多額の資金を騙し取る詐欺の手法です。

ファクタリング会社は実績欲しさの焦りと「困っている企業を助けたい」という思いが先行し、被害に遭ってしまいました。

金融のプロでも騙されるほど巧妙な手口がいくつもあります。
共犯にされないよう気をつけたいです。

ファクタリング利用者が詐欺罪になるケースとは?

ファクタリングの利用者でも以下の3つのケースで詐欺罪に問われることがあります。

・架空債権(書類偽装)
・債権の二重譲渡
・不良債権

架空債権(書類偽装)

ファクタリングの詐欺で最も悪質なのが、架空債権を買い取らせる手口です。

ファクタリング会社は架空債権を買い取ることで売掛金を回収できなくなるので、金額によっては経営破綻に追い込まれることもあります。

詐欺師はファクタリング会社に本物の債権だと信じ込ませるために、ねつ造した請求書や粉飾した決算書を使って資金を騙し取ります。

さらに悪質なケースだと利用者と売掛先が共謀して資金を騙し取ることも。

ファクタリング会社は売掛債権の信ぴょう性について調査はしていますが、詐欺を完璧に防げるわけではありません。

架空債権を買い取らせる行為は犯罪ですので、絶対に辞めましょう。

債権の二重譲渡

1つの債権を複数のファクタリング会社へ譲渡する行為を二重譲渡と言います。

売掛債権は手形のように目に見えないので、複数のファクタリング会社に譲渡することは難しくありません。

二重譲渡は利用者とファクタリング会社のみで契約をする「2社間ファクタリング」で行われやすいです。
2社間は売掛先に知られることなく二重譲渡が可能だからです。

ただし、ファクタリングの審査では債権が譲渡済みかどうかを調べるので、二重譲渡はすぐにバレてしまいます。

ファクタリングは債権金額以上の金額は調達できません。
1つの債権につき買取依頼ができるのは1社までです。

不良債権

ファクタリング会社を騙して不良債権を買い取らせる行為も詐欺罪に当たります。

不良債権とは支払期日が過ぎていたり、倒産した会社への回収できなくなった債権のことです。

審査では売掛債権の信用状態を調査するので、不良債権はすぐにバレるでしょう。

しかし、利用者と売掛先が共謀して計画倒産をした場合には、不良債権でも気づかれないことがあります。

ファクタリングでは売掛金の支払いが確実な確定債権や将来債権でないと利用できないと覚えておきましょう。

ファクタリング詐欺で問われる罪
ファクタリング詐欺では以下の罪に問われる可能性があります。

・詐欺罪
・窃盗罪
・偽造罪

詐欺罪

詐欺罪は刑法第246条で以下のように定められており、極めて悪質な犯罪です。

「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。」

ファクタリングでの詐欺罪は架空の債権を譲渡したり、債権を二重譲渡をする行為が該当します。

資金を騙し取っていなくても、騙そうとした段階で詐欺未遂罪になります。

騙されたファクタリング会社は資金が回収できなくなるので、金額によっては経営が行き詰まることもあるでしょう。

それほど詐欺罪は重い罪なのです。

窃盗罪

窃盗罪は刑法第235条で以下のように定められている犯罪です。

「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」

他人の占有物を意図的に盗む行為が窃盗罪です。
例えば、ファクタリング会社の事務所に置いてある金品などを盗む行為が窃盗罪に当たります。

似た罪状に「横領罪」がありますが、「ファクタリング会社に返済すべき資金を私的に流用した」場合は窃盗罪ではなく横領罪に該当します。

偽造罪

偽造罪には「私文書偽造罪」と「公文書偽造罪」があります。

権利・義務関係に関する文書を偽造した場合は私文書偽造罪、公務員が作成すべき文書を偽造した場合は公文書偽造罪に問われるでしょう。

一般的に公文書偽造罪のほうが公共性が高く、多くの人に悪影響を及ぼすことから量刑が重いとされています。

ファクタリングで問われる罪は私文書偽造罪です。
売掛先への請求書や契約書を偽造する行為が該当します。

偽造した請求書を使ってファクタリング会社を騙した場合は、詐欺罪と私文書偽造罪の両方が課せられる可能性が高いです。

詐欺に問われない!トラブル回避の対策

ファクタリングで詐欺に問われないためにも以下3つの対策が必須です。

売掛債権の確認
提出書類の確認
利用規約や契約書の確認

売掛債権の確認

不正な売掛債権を譲渡すると詐欺罪などの罪に問われますので、売掛債権の内容はよく確認しましょう。

売掛債権のチェック項目
支払期日が過ぎていないか
倒産の疑いがある企業の債権ではないか
架空の債権ではないか
二重譲渡していないか
例えば利用者が売掛先の倒産を知っていた場合、ファクタリング会社を欺いて金銭を騙し取ることになるので、詐欺罪になります。

ファクタリング会社へ譲渡できる売掛債権は確定債権や将来債権のみです。

ご自身に騙すつもりがなくても、ファクタリング会社から不正を仕向けてくることもあります。
不正を提案してくる業者は確実に悪徳業者ですので、取引はしないようにしましょう。

提出書類の確認

ファクタリング会社に提出する書類は偽造されたものが使われていないかよく確認しましょう。

請求書や契約書などの書類を偽造した場合、私文書偽造罪に問われます。
ファクタリング会社に提出する書類については以下の3点をチェックしましょう。

提出書類のチェック項目
必要書類は全て揃っているか
売掛債権を客観的に証明できるか
偽造された書類が混ざっていないか
ファクタリングの審査では必要書類を正確に用意することが大切です。
追加で提出書類を求められた時も同様ですよ。

必要書類を出し渋ると不正を疑われ、審査に悪影響を与えます。

また、売掛債権のエビデンスとして売掛先との入出金明細や電子メールの提出を求められることもあります。

エビデンスを偽造する行為も私文書偽造罪にあたりますので、用意できない場合は審査担当者に正直に相談しましょう。

ファクタリングの必要書類について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

あわせて読みたい

ファクタリング利用時の必要書類とは?書類一覧と利用手順、おすすめ業者を解説

利用規約や契約書の確認

ファクタリングの契約を締結する前に利用規約や契約書の確認は必須です。

悪質なファクタリング会社は利用規約や契約書に重要なことを書かず、後で法外な手数料を要求してくることがあります。

契約時には以下の内容をよく確認しましょう

ファクタリング契約時のチェック項目
譲渡する債権の金額は正しいか
不当な責任を負わされていないか
手数料は妥当か
期日までの期間は妥当か
償還請求権の有無
契約解除の条件
悪徳業者に多いのが、売掛先が返済不能になった時に利用者に代金を弁済させようとする手口です。
ファクタリングは売掛先が支払不能になったとしても、利用者に弁済義務はありません。

悪徳業者から騙されないためには利用規約や契約書をよく確認すると共に、ファクタリングについての知識を身につけておく必要があります。

ファクタリングで困った時の主な相談先

ファクタリングのことで何か困ったことがあった場合、以下の機関で相談してみましょう。

ファクタリングに強い弁護士

金融庁の金融サービス利用者相談室
多重債務相談窓口連絡先
消費生活センターの消費生活相談窓口
警察

ファクタリングに強い弁護士

ファクタリングに強い弁護士に相談することで、法的な観点からトラブルを解決してくれます。
弁護士に相談するのはハードルが高いと思いますが、意外にも些細なことでも話を聞いてくれるところが多いです。

弁護士に相談するメリットは以下の3つです。

代わりに交渉や手続きをしてくれる
依頼者の味方になってくれる
相手と揉めずにトラブル解消に導いてくれる
当事者同士で解決しようとすると、感情的になりやすいですが、弁護士に任せれば的確な情報をもとに解決へ導いてくれます。

常に依頼者ファーストで動いてくれる点も心強いです。

弁護士費用がかかってしまう点がネックですが、いち早く解決できれば本来の業務に集中できます。

【まとめ】ファクタリングの不正利用は詐欺になる

この記事ではファクタリングの不正利用が詐欺になることを事例を交えて解説しました。

ファクタリングの利用者としては以下の債権を譲渡してしまうと詐欺罪で起訴される恐れがあります。

架空債権(書類偽装)
債権の二重譲渡
不良債権
また、ファクタリング会社からも不正を持ちかけられることもあります。
ファクタリングについての知識を深めることでご自身の身を守りましょう。