ファクタリングと債権流動化は何が違う?メリットなどを解説
2024年6月2日
中小企業などの資金調達の方法として、第一に思い浮かぶのは銀行融資を受けることでしょう。しかし注目されている債権流動化やファクタリングとの違いが知りたいという方もいることでしょう。
企業経営において、資金調達は継続しなければならないことといえますが、融資を受けることと債権流動化の違いやファクタリングのメリットなどわかっていなければ利用しにくいといえます。
そこで、債権流動化とファクタリングの違いを知るために、そのメリットや種類について解説していきます。
債権流動化とは
「債権流動化」とは、保有する売掛債権や手形債権などを専門業者などに売却し、決済期日到来前に現金化することです。
「流動化」とは、停滞させず流れ動かすことですが、売掛金や受取手形などの売掛債権の入金を待たずに前倒しで受け取ることといえます。
第三者に債権を譲渡する以外に、債権を担保にお金を借りることも債権流動化の方法に含まれます。
債権流動化のメリット
資金繰りに何も問題を抱えているわけでないのなら、わざわざ保有する売掛債権などを決済日よりも前に現金化する必要はないでしょう。
しかしすぐにお金が必要という場合にたとえば銀行から融資を受けようとすれば、申し込むまでに様々な書類を揃え、実際に申し込んだ後にも審査の結果を待たなければなりません。
それではすぐに資金調達できませんが、一定期間待てば入金される予定の売掛債権などを流動化し、お金に換えることで資金不足は解消されます。
債権流動化は資金繰り問題を解消できる方法といえますが、主に次の4つのメリットがあるといえます。
・資産のオフバランス化できる
・決済日を待たなくても資金を調達できる
・審査の難易度が低い
・国が推奨した資金調達方法
それぞれのメリットについて説明していきます。
資産のオフバランス化できる
債権流動化は、保有する売掛債権などが現金に変わるだけなので、貸借対照表上で資産や負債などの取引が記載されない「オフバランス化」が可能です。
資産を多く保有していることは悪いことではありませんが、売掛金が多すぎると保有する資産に対し効率的な事業ができているといえなくなります。
しかし債権流動化で売掛金を減少させれば、効率的な経営で利益を得ることができている会社と認められやすくなるため、オフバランス化により企業価値を高めることができるといえるでしょう。
決済日を待たなくても資金を調達できる
債権流動化の最大のメリットとして挙げられるのが、決済期日を待たなくても手元のお金を増やすことができることです。
決済日まで待てば入金されるとわかっていても、それまでに資金不足に陥ることは少なくありません。
そのような場合でも、債権流動化により早期に資金調達できるのは大きなメリットです。
審査の難易度が低い
銀行から融資を受けるときの審査は一般的にハードルが高く、中小企業の場合は担保や保証人を用意できれば通りにくくなります。
しかし債権流動化の場合、大幅に難易度が低めであるため、銀行融資を受けることが難しい場合でも資金調達できる可能性は上がるといえるでしょう。
国が推奨した資金調達方法
経済産業省は、「売掛金」や「未収金」を活用した資金調達を活性化させることを課題として取り上げています。
まさに国が債権流動化を推奨しているといえますが、その理由は中小企業が融資を受けるときの9割は不動産を担保とする契約になっているからです。
先にも述べたとおり、不動産価値は年々低下の一途を辿っており、時間の経過と共に価値が下がってしまいます。
不動産を保有していない中小企業の場合、不動産担保融資は当然ながら利用できません。
このような場合でも、不動産以外の資産である売掛債権を流動化する方法があれば、資金調達方法の悩みが解消されるといえるでしょう。
経済産業省中小企業庁は、売掛債権を担保とした融資に対し、90%保証を約束する「売掛債権担保融資保証制度」も導入しています。
これは、国が債権流動化を推奨することによる環境整備の第一歩とも考えられます。
債権流動化のデメリット
中小企業にとって、債権流動化による資金調達はいろいろなメリットがあるといえますが、次の2つのデメリットも理解した上で利用を検討してください。
・手数料や利息などコストが発生する
・種類によっては未回収リスクを負う
それぞれのデメリットについて説明していきます。
手数料や利息などコストが発生する
たとえば銀行から融資を受けたときにも利息が発生しますが、債権流動化で資金調達したときにもコストは発生します。
債権流動化の方法が融資であれば利息、売却であれば手数料が発生することとなり、かかった費用を差し引いた残りを現金として受け取ることができます。
種類によっては未回収リスクを負う
もしも資金調達に活用した売掛債権が不良債権だったとき、債権流動化の方法によっては調達した資金を返さなければならなくなることもあります。
これは、選んだ債権流動化の方法が、買戻しの権利や償還請求権がある契約を結ぶものだった場合です。
弁済義務については必ず確認しておくべきですが、ファクタリングであればこれらの未回収リスクはファクタリング会社が負うため、売掛金が回収できなくても利用者が責任を負うことはありません。
債権流動化の種類
債権流動化のうち、売掛債権を活用した資金調達の方法として挙げられるのは主に次の4つです。
・ファクタリング
・手形割引
・売掛債権担保融資(ABL)
・売掛債権証券化
それぞれ特徴など異なるため、どの方法が最も適しているか見極めた上で選択しましょう。
ファクタリング
「ファクタリング」とは、中小企業などが保有している「売掛金」をファクタリング会社に対して売却し、現金化するサービスです。
売掛債権のうち売掛金を使うことになるため、手形による取引などなくても、売掛先に対する請求書があれば利用できます。
手法としては手形割引に近いイメージですが、利用者に弁済義務はない契約となるため、仮に売掛先が支払い不能状態に陥ってもその責任を利用者が負うことはなく、安心して資金調達できることが特徴です。
手形割引
「手形割引」とは、決済期日前の「受取手形」を、銀行や手形割引業者で現金化するサービスです。
売掛債権の中でも「受取手形」を使う方法ですが、ファクタリングとの大きな違いは、手形が決済されず不渡りになったとき、利用者には弁済義務が発生することといえます。
また、ファクタリングは売掛債権を譲渡(売却)する契約であるのに対し、手形割引は融資として扱われることも違いといえるでしょう。
万一割り引いた手形が不渡りになったときには、手形額面額に発生した利息を加えて返還することが必要になります。
売掛債権担保融資(ABL)
「売掛債権担保融資(ABL)」とは、売掛債権を担保に金融機関から融資を受ける方法です。
お金を借りる方法のため、調達した資金は「負債」として扱うことになります。
審査も通常の融資と同じように行われるため、ファクタリングのような素早い資金調達は期待できません。
売掛債権証券化
「特別目的会社(SPV)」に債権を譲渡することで、投資家からの資金を投入してもらう資金調達方法が「売掛債権証券化」です。
少額債権では利用が難しいことや、手続が複雑であることを理由に、あまり利用されていない債権流動化の方法といえます。
まとめ
中小企業などの資金調達の方法として、主に活用されているのは銀行からの借入れでしょう。
特に不動産など固定資産を担保にした融資に依存しがちな企業は多いといえますが、不動産価値は低下する可能性もあることや、そもそも不動産を所有していない会社はお金を借りることができないといえます。
しかし、保有する売掛金などを流動化することにより、不動産担保融資などに頼らなくても資金を調達することが可能です。
資産のうち、不動産ではなく売掛債権を使った資金調達の方法を知っておくだけでも、資金繰りに関して余裕を持つことができるでしょう。
特にファクタリングは、中小企業が活用しやすい債権流動化の方法といえるため、もしも資金不足などの悩みがあるときには検討してみてください。