ファクタリング事件が急増中している⁉危険になり得る理由を教えます。

2024年3月5日

ファクタリングは貸金取引という法律により強い規制がかかっていないことから、売掛債権さえあれば迅速に資金調達ができます。
規制が緩いことの負の側面として残念ながらトラブルが生じやすいことも事実です。
本章では架空債権を用いたファクタリング事件が増えていることをお伝えし、注意喚起をさせていただきますので、ぜひご覧ください。

ファクタリング事件とは?

事件といってもほとんどが詐欺事件になります。
ファクタリング取引は売掛債権の譲渡取引であり、債権譲渡企業の売掛先からの入金によってファクタリング業者は利益を得る仕組みになっています。
ファクタリング詐欺と聞くとファクタリング業者側が何らかの悪さをするようなイメージを持たれがちですが、ファクタリング取引においては資金の回収リスクを背負うのは債権譲渡企業ではなくファクタリング業者側です。
取引対象となる売掛債権についてはその存在を証明するために取引契約書などの資料の提出を求められますが、その気になればそうした資料は偽造できるので、本来は存在しない売掛債権の存在を作出できてしまいます。
つまり架空の債権を作り上げて、これを譲渡することができてしまうということで、これを架空債権取引、あるいは架空債権ファクタリングと呼んだりします。
利用者側が架空債権取引をして逮捕される例が増えているのですが、実際の作出には2つのパターンがあります。
これを次の項で見ていきます。

架空債権取引のパターン

架空債権取引には主に2つのパターンがあります。

①架空債権の作出
本来は存在しない取引があったように見せかけるために、売買取引の契約書や納品書などを偽造するパターンです。
二社間ファクタリングでは売掛先の会社に知られないように進めるため、書類が偽造された場合にファクタリング業者側で気づくことが難しいこともあります。
中には売掛先の会社の社印を偽造するなど手の込んだことをするケースもあり、悪質性が高いそのようなケースでは気づくことがさらに難しくなります。

②債権の二重譲渡
当初は本当に売掛債権が存在していたとしても、これを二重譲渡して架空債権取引に用いる例もあります。
例えば本当に存在する売掛債権をファクタリング業者Aに譲渡したとします。
すると当該債権の所有権はAに移転するので、その売掛金の権利もAが取得し、債権譲渡企業は権利を失います。
しかし権利を失った売掛債権をファクタリング業者Bに続けて売ろうとすることも、やろうと思えばできてしまいます。
このように、すでに権利を失った債権を譲渡しようとする行為も架空債権取引の一種になります。

なぜ架空債権で取引しようとするのか?

架空債権取引をしても、ファクタリング業者で予定していた入金がされなければ結局バレてしまいます。
それでもなぜそのような取り引きをしようとするのでしょうか。
一つはバレるのを承知で最初から相手を騙そうとして行うこともあるでしょう。
つまり確信犯で、単純に金が欲しいということですね。
それとは違い、今どうしても現金が足りずにこまっているけれど、近い将来(売掛金の入金よりも前)に収入が入る当てがあるので、とりあえず架空債権を使って現金を手に入れておき、後でその収入で充当しようと考えることもあるでしょう。
前者は問題外の行為であり、後者もその当てが外れてファクタリング業者に資金を移転できなければ結局は責任を問われることになります。

ファクタリング業者にバレるとどうなる?

確信犯であってもなくても、相手を騙す行為に違いはないので結果的に責任を取らされるのは同じです。
どちらにしても、売掛金が契約通りに支払われなければファクタリング業者は厳しい取り立てを行います。
売掛先に事実を確認するなどして架空取引が発覚すれば、民事で責任を追及すると同時に刑事責任を追及することもあります。
警察に相談すれば刑法犯として捜査の対象になりますから、下で見るように刑事責任を問える事案と判断すれば架空の債権を譲渡したとして逮捕されることになります。
当然世間にもその事実を広く知られますから、会社のイメージが落ちてビジネスを続けるのは難しくなるでしょう。
逮捕された経営者の人生にも大きな傷がつき、家族が路頭に迷うことになります。
もし悪質なファクタリング業者を利用していた場合、相手も何か良からぬことをしているのだから表ざたにはしないだろうとタカをくくる人もいるかもしれませんが、闇金から流れてきたような素性の良くない業者を相手に詐欺行為などをすれば、それ相応の報復がまっています。
警察に逮捕される方がよっぽどマシで、自分自身や家族の人生が完全に破壊されてしまいます。
架空取引をした当事者の自業自得ですが、闇金相手に取引してしまった場合は逆に自分から警察に相談した方が賢明です。

実際の逮捕事例を紹介

ではここで実際にあった逮捕事例をいくつかご紹介します。
一つはある製造会社が架空の売掛債権を作出するために売掛先企業の印鑑を偽造して契約書等の書類を作成し、ファクタリング業者を騙して取引に持ち込んだ事例です。
この件では売掛先に大手電力会社の名前が使われ、ファクタリング業者がこれを信用してしまったことで起きました。
この件では数千万円の被害額が出たことで警視庁の捜査二課が動き、大きな摘発事件となりました。
また別の事案では学習塾の経営者が架空の売掛債権をでっちあげて売却し、200万円を受け取る事例も確認されています。
刑事事件になれば警察に逮捕された後は検察の判断で裁判にかけられることになりますが、刑法に照らしてどのような罪に問われることになるのか次の項で見ていきます。

どのような罪になるのか?

架空債権取引における刑法上の責任としてはまず詐欺罪の成立が考えられます。
相手を騙して金員を交付させ騙しとる行為であり、「後で返すつもりだった」などの言い訳は通用しません。
ただし詐欺罪の場合、相手が架空取引であると認識している場合は成立しません。
我々のような真っ当な事業者は絶対にしませんが、悪質なファクタリング業者の中には自ら架空債権取引を持ちかける例もあるようです。
つまり、「ウチは結果的に後で返してもらえさえすればいいから、形だけファクタリングに見せかけるために書類を偽造しなよ」と持ち掛けるわけです。
この場合は相手が騙されていないので詐欺罪は成立しませんが、これに応じてしまい万が一資金を返せなくなれば、相手は悪質業者ですから法律を無視した脅迫や嫌がらせなどをされることになるでしょう。
また詐欺罪が成立しなくとも別の罪に問われる可能性が有ります。
売掛先の印鑑を偽造して使用したような場合は有印私文書偽造、そして債権譲渡により本来は権利を持たない売掛金を横領したとして横領罪などの罪に問われる可能性が有ります。
刑法犯となって実刑が付けば刑務所行きですし、前科が付くことになり出所後も社会生活上で様々な不利益をうけることになるでしょう。
目先の金欲しさに架空債権取引に手を出すことは割に合いませんから、絶対にやめましょう。

まとめ

本章では架空取引によるファクタリング詐欺について、その危険性や責任の重さなどについてお伝えしてきました。
ファクタリングに必要な書類自体はその気になれば偽造もできてしまうのが実情ですが、これをやってしまうと人生を大きく狂わせることになるので絶対にやめてください。
仮に悪質なファクタリング業者から架空債権取引を持ち掛けられたとしても、結局割を食うのはこれに応じた側です。
資金調達は時間が無くて焦ってしまうこともあるでしょうけれど、違法な取り引きをしてしまうと割に合わないペナルティが待っていることを知っておきましょう。