ファクタリングは違法?ヤクザやヤミ金との関りはあるの?
2024年2月4日
昨今中小企業の資金調達の手段として、ファクタリングの人気が高まってきています。ファクタリング市場は拡大を続けていますが、最近ファクタリング業者の逮捕例も出始めています。
そのため「ファクタリングは違法じゃないの?」「ファクタリング業者に依頼したら、ヤクザとかヤミ金が出てくるのでは?」と、利用をためらう人もいるかと思います 。そこで今回は、ファクタリングの違法性やヤクザ・ヤミ金との関係について、詳しく見ていきます。
ファクタリングは、やっぱり違法なの?
ファクタリングとは?
「ファクタリング」とは、企業が保有する売掛債権(=売掛金)をファクタリング業者に買い取ってもらい、早期に資金化するサービスのことです。ファクタリング業者に手数料を支払った上で、売掛金を買い取ってもらうため、受け取る金額は本来よりも少なくなります。
それでも前倒しで資金が得られるので、手元資金に不安な会社には便利です。ファクタリングは大きく言って、「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つに分けることが出来ます。
2社間ファクタリングでは、ファクタリングを利用する会社とファクタリング業者の2社間で、取引を行います。利用会社は2社間ファクタリングにおいて、売掛金を売却した後に取引先から売掛金を回収し、その売掛金をファクタリング業者に支払うところまで行う必要があります。
ただ取引先にファクタリングの事実が知られるリスクは低いので、取引先からの信用を失わずに手続きできる可能性が高いです。
一方で3社間ファクタリングでは、契約の際に利用会社とファクタリング業者に加えて、取引先も手続きに加わります。2社間ファクタリングでは、売掛金の回収をファクタリング利用会社が行いましたが、3社間ファクタリングの場合、取引先が売掛金をファクタリング業者に直接支払います。
このように2社間ファクタリングと3社間ファクタリングは、取引先がファクタリング契約に直接加わるかの違いがあります。さらに2社間ファクタリングと3社間ファクタリングの違いは、法的根拠にもあります。この点については、後ほど詳しく見ていきます。
ファクタリング自体は違法ではない
ファクタリングを利用していると、手数料が高いと感じる人もいます。たとえば2社間ファクタリングの手数料は、取引金額の10~30%が相場です。
これを金利に直すと年率100~300%以上になるので、確かにカードローンなどと比べると圧倒的に高いです。そのため高額な手数料に対して、「違法じゃないの?」という声が多く上がります。
ですが結論から言えば、(一部例外を除いて)ファクタリング手数料がどれだけ高くても、違法ではありません。というのも、ファクタリングを規制する法律が現時点では存在しないからです。
後で見る通り、ファクタリングは売掛金(売掛債権)の売買契約であり、融資契約ではありません。融資契約の場合、融資に関する法律である貸金業法や利息制限法・出資法が適用されるので、手数料(利息)が高ければ違法となります。
ですが売買契約であるファクタリングは適用対象外なので、手数料が高くても違法にならないのです。また後ほど説明しますが、ファクタリングには法的根拠も十分あります。
なおファクタリングの高額手数料が違法となるケースについては、「ファクタリング取引が違法なケースってどういう時?」で紹介します。
ファクタリング業者を装ったヤミ金は存在する
ファクタリング自体は違法でないのに、なぜファクタリング業者が逮捕されたのでしょうか? 後ほど逮捕例をいくつか取り上げますが、実は逮捕されているのはファクタリング業者を装ったヤミ金業者です。
ヤミ金は法外な高金利で融資を行うので、本来なら利息制限法や出資法違反として罰則を受けます。そこで法律をかいくぐるために、利息制限法や出資法が適用されない(加えて、市場が拡大している)ファクタリング市場に参入しているのです。
ファクタリングという名目ですが、実際に行っているのは高金利での貸金業です。
またファクタリングの取引に見せかけた、別の取引を持ちかける悪徳業者もいます。こうした取引を正規の会社が行う事は絶対になく、その実態はヤミ金業者です。
さらにヤミ金業者のバックにヤクザがいることもあり、(よく知らずに)こうした会社と取引をすると、ヤミ金やヤクザから搾取されることになりかねません。ファクタリングに怪しいイメージがつきまとうのは、このようにファクタリングを隠れ蓑にしているヤミ金やヤクザが暗躍してることも一因になってます。
ですが(繰り返しになりますが)、ファクタリング自体には違法性はありません。きちんとしたファクタリング業者を選べば、ヤミ金やヤクザに関わることはありません。
ファクタリングの法的な位置づけは?
2社間・3社間ファクタリングには法的根拠がある
2社間ファクタリングは、ファクタリング業者に債権(=売掛金)を売却し、その代わりに金銭を得る取引であり、法律においては売買契約に該当します。売買契約は民法で、以下のように規定されています。
民法第555条
売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。
このように2社間ファクタリングは、売買契約を根拠に成り立っています。もう一方の3社間ファクタリングは、「売買契約」に加えて、債権をファクタリング会社に譲渡しているので、「債権譲渡」にも該当します。
債権譲渡は以下のように、民法第466条で規定されています。
民法第466条
2. 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する意思表示(中略)をしたときであっても、債権の譲渡はその効力を妨げられない。(中略)
譲渡人(利用会社)と譲受人(業者)が合意すれば、債権譲渡が認められます。3社間ファクタリングでは基本的に、譲渡人(利用会社)が債務者(=取引先)に通知をした上で取引を行うので、民法第467条も満たしています。
このように3社間ファクタリングも、法外な裏付けのある契約だと言えます。
民法改正によって2社間ファクタリングの有効性が高まった
2017年5月に行われた民法改正が、2020年4月1日から施行されました。この改正によって、「債権譲渡禁止特約」の契約が無効となりました。
債権譲渡禁止特約とは、言葉の通り債権(=売掛金)の譲渡を禁止するものです。一般的な商取引では、債権譲渡禁止特約が契約書に明記されているケースが多くあります。
禁止特約が付いている債権を、取引先の同意なしにファクタリング会社に売却してしまうと、(2020年3月までの)法律では最悪の場合「譲渡無効」とみなされる可能性がありました。しかし民法改正により、債権譲渡禁止特約は無効であると明記されました。
そのため取引先の同意なしに、禁止特約が付いている債権を売却しても、譲渡は有効となります。以前は債権譲渡禁止特約が一般的なため、取引先に通知をしない2社間ファクタリングは法的にグレーな位置づけでしたが、民法改正によって明確に合法とされました。
給与ファクタリングは貸金業にあたる
「給与ファクタリング」とは、将来得られる給料を裏付けにして、ファクタリング業者から現金を受け取るサービスです。通常のファクタリングが企業向けなのに対して、給与ファクタリングは個人向けと言えます。
2020年3月に金融庁が、給与ファクタリングが貸金業にあたるという見解を示しました。労働力基準法24条において、利用者(労働者)が給与債権を譲渡した場合でも、使用者(勤務先)は利用者に対して給与を支払うことが義務付けられているので、ファクタリング業者は支払いを利用者に請求する必要があります。
サービスの構造上、業者と利用者が直接取引することが確定しているので、給与ファクタリングは貸金業法的第2条の「金銭の貸付け」に該当すると見なされたのです。
このため給与ファクタリングを行う業者は、貸金業登録が必須になります。無登録で営業をしている業者は、貸金業法違反と見なされます。
また年率換算した手数料が、利息制限法・出資法の上限金利を超えていた場合も、違法と見なされます。
ファクタリング取引が違法なケースってどういう時?
ファクタリング契約に違法性はありませんが、以下のようなケースに該当する取引では違法とみなされます。
債権請求権の付いたファクタリング契約を、無登録の業者と結ぶ
ファクタリング契約は債権売買の取引なので、取引先が倒産しても利用企業に返済義務は一切ありません。ところが一部の(悪徳な)ファクタリング業者は、ファクタリング契約に「償還請求権」を付けるケースがあります。
償還請求権があるということは、取引先が倒産した場合、ファクタリング業者に売却した売掛金の返済義務が利用企業に発生することになります。ですがファクタリング契約の本質は、債権請求ではなく債権の売却です。
このため償還請求権の付いた契約は、ファクタリングではなく融資契約(正確には金銭消費貸借契約)と見なされます。この時、ファクタリング業者が貸金業に登録していれば問題ありませんが、未登録の場合は貸金業法に違反します。
また融資契約となるため、利息制限法・出資法(年率20%)を超える手数料は違法となります。ただ本来ファクタリングは融資取引ではないので、貸金業の登録をせずに営業している業者が多いのが実情です。
償還請求権の付いたファクタリング契約を持ちかける業者とは、取引しないで下さい。
契約の不履行時のペナルティーが厳しい
ファクタリング取引で償還請求権を付けるのは悪質ですが、さらに悪質なのは契約の不履行時(=利用企業売掛金を回収できない時)にペナルティーを課す業者です。違約金の額は業者によって異なりますが、たとえば債権額の2倍の額の支払いを求めてくる業者もあります。
たとえば、あなたの会社が売掛金100万円を、(悪質な)ファクタリング業者に80万円で買い取ってもらったとします。あなたの会社が売掛金100万円を回収できず、ファクタリング業者に支払が出来ない場合、業者は100万円の2倍にあたる200万円を請求することになります。
先ほど説明した通り、償還請求権のある契約は、(たとえ外見上、ファクタリング契約を装っても)融資契約と見なされます。債権額の2倍といった違約金は、利息制限法や出資法を大幅に上回る金利のため、出資法にも完全に違反しています。
こうして見ると、債権額の2倍という違約金は法外な手数料だと言えます。
債権請求権の付いた契約で、高額な手数料が発生する
先ほど説明した通り、償還請求権ありの2社間ファクタリング契約は融資契約に該当し、利息制限法・出資法の適用対象です。高額な手数料(=1回の取引で20~30%)を要求された場合、年率換算で利息制限法・出資法を上回る金利となるため、出資法に違反します。
取引手数料20%を金利(年率)に直すと240%となり、手数料が30%の場合は年率360%となります。出資法の上限金利が年率20%なので、大幅に上回っていることが分かります。
また過去の判例では、償還請求権の付いたファクタリング契約に関して、利息制限法を超える手数料を無効とし、ファクタリング業者に過払い分の返還を命じたケースもあります。このように「償還請求権の付いたファクタリング契約は融資契約である」と裁判でも認められているので、法外な手数料を請求された場合は、すぐに応じるのではなく一度弁護士に相談してみて下さい。
債権請求権そのものは違法ではない
ここまでファクタリング契約が違法となるケースについて見てきましたが、どの事例においても償還請求権が関わっていました。ただ償還請求権の付いたファクタリング契約自体が、違法という訳ではありません。
先ほども説明した通り、こうした契約はファクタリング契約ではなく、金銭消費貸借契約に該当します。その企業が貸金業に登録していて、利息制限法・出資法の範囲内の金利を設定しているのなら、法的に問題ありません。
償還請求権のあるファクタリング契約を提案する業者は、危険な可能性が高いですし、その業者はヤミ金に関係してるかもしれません。
ですが、その契約だけでは違法ではない点は覚えておきましょう。
ファクタリングを装ったヤミ金会社が、逮捕されたケースとは?
以下では実際のファクタリング取引で、ヤミ金業者が逮捕された事例を紹介します。
東洋商事とMINORI
ファクタリングを装い、ヤミ金を営んだとして全国で初めて逮捕されたのは、「東洋商事」と「MINORI」です(2017年1月)。出資法違反と、無登録営業による貸金業法違反の疑いで摘発されました。
出資法違反とされた理由は、ファクタリングを装いながら、売掛金を担保に高金利で融資を行ったと判断されたためです。ファクタリングを装っているヤミ金業者は、売掛金を「分割」で「利子」をつけて受け取ろうとするケースがあります。
しかしファクタリングは債権の売買取引であり、分割での返済や利息は発生しません。ちなみに東洋商事とMINORIは、約250社の中小企業に3億円以上を貸し付け、1億円以上の利益を得ていました。
かなりの高金利で、融資をしていたことが分かります。また利子をつけて返済を求めている場合は、貸金業に該当します。
貸金業登録をせずに、貸し付けを行っているのは違法な業者です。このため東洋商事とMINORIは、出資法と貸金業法違反で逮捕されました。
違法のファクタリング業者の見分け方は?
債権請求権の付いた契約を提案する会社
上でも説明したように、貸金業の登録をしているなら、償還請求権の付いた契約を結んでも違法ではありません。また法律の範囲内でなら、手数料を付けることも可能です。
一方で貸金業登録なしで、償還請求権ありの契約を提案する業者は違法です。貸金業登録しているかどうかは、以下の金融庁のサイトで確認できます。
ただし仮に貸金業の登録がある業者でも、償還請求権の付いた契約をファクタリングとして提案してくる会社がいたら、警戒すべきです。本来なら融資契約として提案すべきところを、ファクタリングと称している時点で怪しい会社と考えるべきです。
償還請求権の付いた契約を提案してきた時点で、その会社との取引は見送った方が安全です。
契約書に「債権売買」「売買契約」の文言がない会社
業者が捺印を求める契約書は、よくチェックして下さい。特に、契約書に「債権売買」「売買契約」といった文言があるかどうか、入念に注意して下さい。
契約書にそうした文言がないと、仮に売掛金が回収できなかった場合、ファクタリング業者に返金を要求されることになります。売掛金(債権)を売却するのがファクタリング取引のはずなのに、取引後もリスクを背負わされることになるのです。
全く割に合わないし、これがヤミ金の手口でもあります。ファクタリング契約という名目だけれども、「債権売買」「売買契約」という文言がない契約書は、「金銭消費貸借契約書」として扱われます。
これは売掛金を担保にお金を借りるという、「債権担保融資(ABL)」(つまり融資契約)の体裁です。こうした取引には貸金業者の免許が必要なため、無登録の業者の場合は違法行為となります。
その他、契約書に「償還請求権」が明記されていると、業者側が返金を請求できてしまうので要注意です。もちろん、契約書を用意できない業者は論外です。
また業者が提出してきた契約書を、よく読みもせずに捺印するのも絶対にNGです。
高額な取引手数料を要求する会社
高額な取引手数料や、不履行時の違約金を要求する会社には要注意です。特に、償還請求権付きの取引で不履行時に倍額のペナルティーを課す会社とは、絶対に取引すべきではありません。
法外な金利となり、明らかに出資法に違反している会社です。万が一、取引先から売掛金を回収できない場合、返済に苦しむ事態に追い込まれる可能性が高いです。
たとえ償還請求権のないファクタリング契約だとしても、1回の取引で30%以上の手数料を課す会社との取引は避けましょう。取引そのものは違法ではありませんが、高すぎる手数料は資金繰りの悪化に繋がります。
会社概要の情報が少ない業者
ホームページに記載されている、会社概要の情報が極端に少ない業者は注意しましょう。会社概要には一般的に、以下の情報が載っています。
会社概要に記載されている情報
・企業名称
・代表者名
・所在地
・電話番号
・設立年月日
・資本金
・役員名
・従業員数
・業務内容
企業名と電話番号しか記載がないなど情報が少ない場合は、違法なファクタリング業者である可能性が高いです。また連絡先が固定電話ではなく携帯番号だったり、オフィスの住所が記載されていない場合も注意が必要です。
対面での契約を拒んだりするのも、違法な業者の特徴の一つです。ファクタリング業者とやり取りをしていて、違和感を抱いたら、業者について改めて調べ直してみましょう。
調べても良く分からない会社なら、取引を見送ることをオススメします。もしかしたら、ヤミ金やヤクザに関係した会社かもしれませんので。
貸金業の登録をしていない給与ファクタリング業者
上でも見たように、貸金業の登録をしていない給与ファクタリング業者は違法会社です。法外な手数料を取られるだけでなく、脅されたり契約を無視されたりする危険性もあります。
すぐにお金が必要なのであれば、カードローンなどを利用した方が、より良い条件で安全にお金を受け取れる可能性が高いです。借りるまでに時間がかかりますが、国からお金を借りられる制度もあるので、お金が必要な際は様々な選択肢を検討してみて下さい。
ここまでファクタリングの違法性や、ヤミ金・ヤクザとの関係について見てきました。ファクタリング自体は違法ではありませんが、業者の中には高金利での貸付を行うヤミ金が紛れています。
今回紹介した違法業者の見分け方を参考にして、正規の会社と安全な取引をするようにしましょう。
この記事のまとめ
・ファクタリング自体は違法ではなく法的根拠も十分にある
・ただしファクタリングを装って高金利の貸付を行っている違法業者が存在する
・債権請求権のあるファクタリングは融資契約の扱いになり、貸金業登録がないと違法になる
・ファクタリング手数料に規制はないが、30%を超えるなど高すぎる場合は避けるべき
・ホームページの会社情報が不十分な業者はヤミ金の危険性あり